NECパーソナルコンピュータ(NECPC)が2019年春モデルのPC新製品を発表した。スマホの普及により個人向けPCは売れないといわれる中、進学や新生活のシーズンである春は商戦期となっており、学生のレポート作成用途などに向けて各社が新製品を投入する。
その中でNECPCがこだわりポイントとして挙げているのが、「高速起動」と「サポート」だ。背景には、PCの進化によって起動速度が劇的に速くなった一方で、多くのユーザーが依然として「シャットダウン」を使っているとの実態があるようだ。
PCへの不満は「起動速度」と「使い方」がトップ
2019年はNEC初のパーソナルコンピューター「PC-8001」が登場してから40周年を迎える。その節目の年に向けて、NECPCは2018年に「PCとは、愛だ。」というブランドスローガンを掲げ、ユーザーが実際に直面している不満に寄り添うという開発方針を採っている。
果たしてPCユーザーは、何を不満に感じているのか。NECPCによる2017年の調査では、「起動が遅い」と「使い方がよく分からない」が、上位2つを占めているという。
PCの起動速度に影響する大きな要因が、ストレージだ。フラッシュメモリを用いたSSDなら起動は速いが、容量が大きいものは高価になる。HDDなら安価に大容量を得られるが、起動には時間がかかる。このHDD搭載機のユーザーから不満の声が多いという。
そこでインテルが開発したのが、HDDを高速化する「Optaneメモリー」だ。NECPCはこのOptane採用機を増やすことで、HDDで大容量を確保しつつ、起動の高速化を実現している。
使い方がよく分からないという不満についても、無償の使い方相談サービスを提供。それに加えて、2019年春からは有償サポートも追加し、落下にも対応した「安心保証」や「オンライン自動バックアップ機能」を月額700円のサブスクリプションで提供する。
最近の学生はPC操作が苦手といわれるが、実際に購入すればすぐに使いこなせるようになるとの声も多い。だが、落下の保証やバックアップは長期的な需要がある。そこで有償サポートにより、大学生活の4年間をしっかり保証するのが狙いというわけだ。
だが、起動速度の不満については疑問を持つ人も多いのではないだろうか。なぜなら、PCをスリープ状態にすれば、すぐに復帰させることができるからだ。これに対して、NECPCによれば実に7割もの人が「シャットダウン」を日常的に使っているという。
7割の人がシャットダウンを常用
PCを使い終えるとき、シャットダウンとスリープにはどのような違いがあるのだろうか。シャットダウンは完全に電源を落とすことができるが、再び起動するにはシステムの立ち上げに時間がかかってしまう。
これに対してスリープは、メモリーの状態を保持することで、わずかな電力を消費するものの、素早く復帰できるというメリットがある。ノートPCの画面を閉じればスリープになる機種がほとんどのため、多くの人は無意識のうちに使っているかもしれない。スマホやタブレットでは、画面をオフにするスリープが当たり前のように使われている。
だが、NECPCによれば7割のユーザーがシャットダウンを使っているという。その背景には、長年の習慣があると同社は見ている。スリープ機能が登場するからPCに慣れ親しんできたユーザーの中には、いまでも忠実にシャットダウンを実行している人が少なくないというわけだ。
NECPCとして、より便利なスリープを使ってもらうよう、ユーザーを啓発していくという方向性もあるだろう。それと並行して、ユーザーがいま直面している不満を解消すべく、シャットダウン状態からでも高速起動する技術の採用を進めている。
他にも27型のディスプレイ一体型モデルには、新たに「ボイス起動」機能を搭載した。シャットダウンで電源を落とした状態でも、声で呼びかけるだけでPCを起動できる機能で、NECPCによれば世界初だという。
PCは家電に比べてはるかに複雑な製品であり、備わっている機能を正しく使えるユーザーばかりとは限らない。そうしたユーザーの不満を技術で解決していく姿勢こそ、NECPCが積み上げた40年の歴史から得られたものなのかもしれない。
(山口健太)