LGエレクトロニクス・ジャパン(以下LG)は、1月30日にノートPC「LG gram」シリーズの2019年モデルを発表しました。今回登場する新製品では、従来の13.3型、14型、15.6型に加えて新たに17型ディスプレイを搭載したラインアップを追加しています。

  • 17型ディスプレイを搭載しながらも重さ1.34kgにおさめた「17Z990」シリーズ

  • 17Z990シリーズの他にも、13.3型、14型、15.6型とこれまでと同じディスプレイを搭載するラインアップで「13Z990」「14Z990」「15Z990」の新モデルが登場する

それぞれのモデルの詳細スペックはニュース記事で紹介していますが、この記事では17型ディスプレイ搭載モデルのコンセプトと特徴を中心に解説します。

LGは2016年から日本市場でノートPCを販売していますが、韓国ではすでに30年間の実績を持つといいます。そのLGが投入する「LG gram」において、次に挙げる3つの項目を重要な要目としています。

  • 軽さ
  • 長時間駆動
  • 頑丈であること

「充電を気にせず使い続けられる。これが真のノートPC」と同社マーケティングチームの部長を務めるキム・ドンゴン氏は述べます。「小型化が当たり前の現在でもバッテリー駆動時間はあきらめない」(キム氏)とこだわります。

  • LGエレクトロニクス・ジャパン マーケティングチーム 部長のキム・ドンゴン氏

LG gramの2019年モデルでは、15.6型ディスプレイ搭載の「15Z990」シリーズで重さ1.109kg、バッテリー駆動時間(JEITA2.0)が約20~24時間、13.3型ディスプレイ搭載モデル「13Z990」シリーズで重さ965g、バッテリー駆動時間約28時間を実現しています。

耐久性についても、従来モデルで米国防省調達基準(MIL-STD 810G)が定める条件の内7項目について試験条件(衝撃・運送時落下、低圧、高温、低温、砂塵、振動、塩水噴霧)をクリアしていますが、新モデルでもこれらは変わりません。(なお、MIL-STD 810Gにおける試験項目の1つ「本体のみの動作時の落下試験」について「試験を実施していない」とのこと)。

  • LGのノートPCが重視してきた3つの要素。2019年モデルではそこに新たな要素を加える

ただし、「軽さ」「長時間駆動」「頑丈」をクリアしても、LGは「(モバイルに適した)ノートPCには足りない点がある」といいます。それはディスプレイが小さいこと。大きなサイズの外付けディスプレイに接続するケースも多く、ノートPCの画面だけでの作業は“つらい”と主張します。

そこでLGは「軽さ」「長時間駆動」「頑丈」に続く新しいポイントとして「大画面ディスプレイ」を掲げます。「現代のノートPCは軽量と大画面の二極化が進んでいるが、LGは軽量と大画面を融合する」(LGエレクトロニクス・ジャパン マーケティングチーム 次長の森斗志也氏)。

  • これまで二極化が進んでいた軽量と大画面をLGは17Z990シリーズで融合するという

前述したとおり、2019年に投入する新製品ラインアップでは、大型の17型ディスプレイ搭載モデル「17Z990-VA76J」「17Z990-VA56J」を加えました(以下、17Z990シリーズ)。

キム氏は「これまでにない新しい製品」と訴求します。単に17型ディスプレイを搭載したノートPCはごく普通に存在します。しかし、LGの17Z990シリーズは本体の重さを約1.34kgとすることで「持ち出せるデスクトップPC」としての新しい市場を生む出すとアピールします。

17Z990シリーズのディスプレイは、解像度2560×1600ドット、画面横縦比16:10と表示できる情報量の多さが特徴です。また、ディスプレイのベゼルを細くすることで、軽さに加えて、幅380.6㎜、奥行き265.7㎜と一般的な15.6型ディスプレイ搭載ノートPCとほぼ同じフットプリントを実現します。

  • 17Z990シリーズのフットプリントは、同社の海外展開15.6型ディスプレイ搭載モデルと比べて、ほぼ同じサイズとアピールする

17Z990シリーズの想定ユーザーとして、LGは「メディアプロシューマー」を挙げます。あまり聞き慣れない「メディアプロシューマー」ですが、例えばYouTuberなどが該当するそうです。

これまで屋外で撮影した動画をオフィスのデスクトップPCで編集していましたが、17Z990シリーズを使えば、撮影したら屋外ですぐに編集作業に取り掛かれ、そのまま配信することも可能です。

ほかにも大画面ディスプレイを家族全員で一斉に見ることができるので、「ホームPCをこれまでのデスクトップPCから持ち運べるノートPCに」という提案や多くのスプレッドシートを展開するオフィスでの導入をLGでは勧めていく考えです。

また、他のモデルと同様に17Z990シリーズでも耐久性をアピールします。MIL-STD 810Gで定めた規格から他のモデルと同じ7項目の試験にクリアしています。説明会ではバイクで踏んでも動作するデモで耐久性をアピールしていました。

バッテリー駆動時間でも、ほかのLG gramと同様に17Z990シリーズでも導電助剤にカーボンナノチューブを導入して高容量化を実現したバッテリーを採用しました。

  • JEITA 2.0の条件で測定したバッテリー駆動時間において、LG gram 2019年モデルと競合他社の同サイズディスプレイ搭載モデルで売り上げトップ100に入るモデルの平均値を比較した。LG gramでは20分充電時と1時間充電時における測定値も示している

  • 導電助剤にカーボンナノチューブを導入したバッテリーを採用した

LGの説明によると2016年に発売したノートPCで搭載していたほぼ同サイズのバッテリー容量が34.6Whなのに対して、17Z990シリーズに搭載するバッテリーの容量は72Whに達しています。

また、容量だけでなく負荷が高く、バッテリーの劣化につながる高速充電においても、伝導効率が高いおかげで負荷を抑えられ、高速充電を繰り返してもバッテリーの劣化(充電を繰り返すことで容量が減少する)は通常充電とほぼ同じなことも検証データとともに示しています。

本体搭載のインタフェースでは、USB 3.0(Type-A)を3基とHDMI出力、ヘッドホン出力、microSDスロット、そして、Thunderbolt 3を兼ねるUSB 3.1 Gen 2 Type-Cを備えています。なお有線LANについては、Type-CとRJ45の外付け変換アダプタが標準で付属します。

Thunderbolt 3はUSB 3.0の8倍となる40Gbpsの高速な転送レートが特徴です。デイジーチェーン接続による外部ディスプレイ接続が可能なほか、外付けGPUボックスを使えば、デスクトップPC向けのグラフィックスカードの処理能力を活用でき、3Dゲームなどもプレイ可能だといいます。

  • 右側面には電源コネクタとUSB 3.0、HDMI、Thunderbolt 3.0兼用USB 3.1 Type-Cを備える

  • 左側面にはmicroSDスロットにヘッドホン端子、2基のUSB 3.0を搭載する

また、従来のLG gramと同様に、17Z990シリーズでもシステムメモリスロットをSSD用のM.2スロット(接続はSerial ATA 3.0)をシステムボードにそれぞれ1基ずつ備えており、購入後にLGのカスタマーセンターで増設できるようにしています(LGのカスタマーセンターとユーザー間の送料は無料だが増設作業は有償)。

  • ディスプレイは最大に開いて140度(実測)

  • 17Z990で用意するカラーはダークシルバーのみ

  • 天板素材のアルミマグネシウム合金(高強度で耐食性に優れるAZ91Dクラス)底面部分はマグネシウム合金(一般的なグレード)、キーボード面にはナノカーボンマグネシウム複合合金を使用する

  • キーボードにはテンキーも用意して15Z990シリーズとほぼ同じレイアウト

なお、2019 International CESに合わせてその存在を明らかにした14型ディスプレイ搭載の2-in-1 PCの日本市場向けの販売について「検討はしているもののまだ未定」と答えています。