カシオ計算機から、趣味でピアノを楽しむ20代~40代に向けたスリムでスタイリッシュな電子ピアノ、「Privia(プリヴィア)PX-S1000 / S3000」が発表されました。奥行きは、わずか232mmしかありません。ハンマーアクション付きの88鍵盤でスピーカーも内蔵しているモデルとしては、業界最短の奥行きとのこと(2019年1月25日時点、カシオ調べ)。

発売時期は2月15日から順次、市場想定価格(以下すべて税別)は「PX-S1000」が57,800円前後、「PX-S3000」が79,800円前後です。製品発表会では、プロによるデモ演奏も行われました。

  • PX-S1000

    新しいPriviaは、現行モデルの奥行きより-61mmもスリム化。写真の通り、奥行きは白鍵の半分ほどしかありません

常識を覆すスリムボディ

これまで、電子ピアノは「音の良さ、弾きやすさ」と「製品の大きさ」が、ある意味トレードオフでした。それを覆すのが今回のPriviaシリーズ。まずは「大きさ」ですが、PX-S1000、PX-S3000ともに1,322(W)×232(D)×102(H)mm、重さはPX-S1000が11.2kg、PX-S3000が11.4kgとなっています。

  • PX-S1000 / S3000

    Privia PX-S1000のブラックモデル(写真上)は2月15日発売、ホワイトモデル(写真下)は4月発売の予定。写真では画角の関係で少し曲がって見えますが、実物は直線でシャープな印象です

  • タッチ操作に対応したフラットな操作パネルを搭載

これくらいの大きさなら、住宅環境によらず、誰でも気軽にピアノ演奏が楽しめるでしょう。もちろん、外出時にも嬉しいサイズ感。AC電源だけでなく、乾電池でも動きます(単3形アルカリ乾電池×6本で駆動)。状況にもよりますが、ストリートでも活躍しそうです。また、持ち運びやすい専用のソフトケース「SC-800P」も用意されています。

  • 専用ソフトケースはショルダー、手提げ、リュック使いが可能な3-WAYタイプ。価格は13,500円

ところで、見た目も似ている兄弟機のPX-S1000とPX-S3000ですが、音色数(S1000は18音、S3000は700音)、ディスプレイの有無、録音・再生機能の有無などに違いがあります。

  • PX-S3000(4月発売予定)では、操作パネルの並びに配置されたディスプレイでモードを確認できる仕様です

音は良い? 弾きやすい?

では、肝心の「音の良さ、弾きやすさ」はどうなんでしょう。まずは製品発表会で披露されたデモ演奏の模様を紹介します。2人のアーティストが、PX-S1000を使っていくつかの名曲を奏でました。特に、打鍵の強弱に応じた音量、音色の変化や、連打したときの鍵盤の追従性にご注目ください。

【動画】カシオの電子ピアノ「Privia PX-S1000」デモ演奏
※音声が流れます。ご注意ください。

カシオの本多陽子氏は、カシオ独自の技術「マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR音源」により、アコースティックの楽器が奏でる音の響きの時間的な変化を忠実に再現したと話します。ピアノでは、わずかなタッチの違いで音色に差が出ます。新しいPriviaは高度なデジタル制御によって、そうした繊細な表現も可能にしているのです。

  • カシオ計算機 国内営業統括部の本多陽子氏

さらに驚くのは、共鳴音やノイズ音も同時に鳴らすことで、豊かなグランドピアノの音と響きに迫っている点。グランドピアノでは、鍵盤を弾くとハンマーが叩いた弦の振動によって、倍音関係にある他の弦が共鳴します。ダンパーペダルを踏むと、共鳴音に違いが生まれます。このほか、「音色」とはいえないピアノ独自のノイズもあります。これらをデジタル音で再現する「アコースティックシミュレーター」を採用しているのです。

  • 後からでも追加できる3本ペダルユニット「SP-34」。価格は6,500円

新開発の「スマートスケーリングハンマーアクション鍵盤」により、グランドピアノのようなハンマーの自重による弾き心地も感じられる仕様。ちなみに、1鍵ごとにタッチの感触を変えているというから驚きです。このほか白鍵、黒鍵の表面にシボ加工を施すことで、象牙調、黒檀調の風合いに仕上げているのもポイントとなっていました。

  • 白鍵、黒鍵とも表面に加工。ひと昔前の電子ピアノにありがちだったプラスチック感はなく、上質な手触りでした

PX-S1000、PX-S3000とも、背面には16cm×8cmの大型スピーカーを2つ搭載。スマートフォンとBluetoothで連携すれば、このスピーカーからスマホのお気に入りの楽曲を流すことも可能です。音の大きさは8W×8W。ちなみにカシオでは、スマホの音楽を再生中にPriviaで演奏することでセッションを楽しむという、一歩進んだ使い方も提案しています。

  • スリムなボディながら、背面の大型スピーカーからは迫力のある音が出力できます

デモ機の展示会場で、開発者に話を聞きました。カシオ計算機では、質感も音質も弾き心地も追求したハイエンドモデル「CELVIANO Grand Hybrid」シリーズも展開していますが、その何名かの開発者が、今回のPriviaに携わっているとのこと。CELVIANO Grand Hybridの開発で培ったエッセンスやノウハウ、具体的には「弦の共鳴音」や「機構音」などの再現技術は、今回の新しいPriviaにも生かされています。

  • スマートフォン / タブレット端末と接続することで、コントローラーとして操作したり、楽譜を表示したり、といった使い方ができます

ボディをスリムにする上で最も苦労した点について聞くと「鍵盤を小型化しても弾き心地は損ねないこと。また、スピーカーのために割ける体積が減っても音量を保持させる構造づくりが大変でした。小型化して弾き心地や機能が落ちては本末転倒。従来以上のものをどうやって実現するか、新しい技術を開発するための試行錯誤が続きました」(先の開発者)。

  • 2003年に1号機が発売されてから、15周年を迎えたPriviaシリーズ。会場には、往年の名機も展示されていました

カシオでは今後も、電子ピアノ市場にCELVIANOとPriviaの両シリーズを展開していく考えです。先の関係者は「グランドピアノの質感に近づけたCELVIANO Grand Hybridだけでなく、音楽人口の裾野を広げるためにも、手軽ながら質の高い演奏が楽しめるPriviaの存在が欠かせません」と強調していました。

音楽人口を増やしていきたい

「カシオでは、世の中にまだ発見されていない“必要”を発明し、新しい価値をもって商品を創造することで、人々に喜びを感じてもらうことを開発ポリシーにしています」と話すのは、カシオ計算機 執行役員の植原正幸氏。「カシオが展開する教育、文化、生活、仕事という4つのフィールドのうち、文化は最もクリエイティブな部門。電子楽器は、その中心的な存在です。1980年に、楽器業界に参入してから間もなく40周年を迎えますが、音楽の楽しさ、弾くことの喜びを広く伝えることで、これからも音楽人口を増やしていければ」とします。

  • カシオ計算機 執行役員の植原正幸氏(左)と、カシオ計算機 楽器BU 営業戦略部の松田貴生氏(右)

また、カシオ計算機 楽器BU 営業戦略部の松田貴生氏は「鍵盤楽器を弾いてみたいけれど、高価で購入できない」「大きくて置き場所がない」「もっと気軽に弾けたら」といったニーズに応えてきたのが、歴代のPriviaシリーズであるとします。新製品のPrivia PX-S1000 / S3000が狙うのは、20代~40代の高感度なユーザー層。スマートデバイスとともに過ごす現代のライフスタイルにもマッチした新しいPriviaを、趣味のピアノを始めるきっかけにしてもらえたら、と話していました。