会社に勤めている人の中には、年末調整が終わり、12月分の給与支払いの際に払いすぎた税金が戻ってきた人もいるのではないでしょうか。

逆に、年末調整で手続きをしなかったために、気づかぬうちに税金を払いすぎているということがありえます。特に産休や育休を取ったり、夫婦のどちらか一方がパートで働いていたりする家庭は要注意!

年末調整で「配偶者控除」や「配偶者特別控除」の手続きをすることで、節税できる可能性があるのですが、きちんと行いましたか? まずは、制度を理解し、手続き漏れがあれば確定申告で取り戻しましょう。

そもそも「配偶者控除」・「配偶者特別控除」って何? 2018年末に会社で行った年末調整。これまでより書類が増えた気がしませんでしたか? 実は、「配偶者控除等申告書」という書類が新たに加わっていたのです。

2017年までは保険料控除と同じ書類に「配偶者特別控除」の申告分を記入していましたが、2018年から配偶者控除のしくみが変わり、記入すべき項目が増えたため、2枚に分けることになりました。さらに、配偶者だけでなく給与所得者自身も所得額の詳細を記入するようになりました。

しくみの変更点を具体的に確認しましょう。そもそも、配偶者控除や配偶者特別控除とは、一般にパートなどで働く配偶者(今回は妻とします)の収入が少ない場合、一定金額に達するまでは世帯主(今回は夫とします)が納める税金を軽くします、という制度です。

2017年までは、「103万円の壁」と呼ばれていたように、夫が配偶者控除で満額38万円の控除を受けるには、妻は給与収入を【103万円】までにおさえなくてはなりませんでした。また、配偶者特別控除を受けるには、妻の給与収入を【141万円】より少なくしなくてはなりませんでした。

これが、2018年からは女性の就労を促す目的のため、上限が改正されたのです。配偶者控除においては、妻の給与収入の上限【103万円以下】の変更はありませんが、妻の給与収入が150万円までは満額の38万円の控除を夫は受けられるようになりました。さらに、配偶者特別控除での上限は【201万円以下】までが対象となり、対象者が拡大されました。

夫の年収が1220万円を超えると控除は「0円」に! 一方で納税者である夫について、これまでなかった所得制限が加わったことも大きなポイントとなっています。

年収が1120万円を超えると控除の額が段階的に下がっていき、1220万円を超えると控除が受けられなくなりました。これまでは所得制限がなかったので、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられていた人も、この改正で受けられなくなってしまうケースも出てくるでしょう。

産休・育休明けや時短勤務の人は、共働きでも節税のチャンス! 自身の家庭が、配偶者控除や配偶者特別控除の対象となるのかをチェックするとき、妻の収入合計の計算で迷ってしまうことがあるかもしれません。

とくに「妻が育休中のため育児休業給付金を受け取っている」といったケースの場合、その金額は収入に含めるのか? といった疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。結論としては、下記の手当は収入に含めなくてよいことになっています。

・出産育児一時金
・出産手当金
・育児休業給付金
・失業手当

例えば、妻が年の途中から産休・育休に入ったために、年収は200万円のみ、各種手当金を受け取り、夫の年収が500万円の場合、3万円の控除が受けられます。

  • 配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額

ほかにも、育休復帰後に短時間勤務で働くなどで妻の収入が従来より少なく、条件内に収まっていれば、控除の対象となるかもしれません。「うちは共働きだから関係ない」と思わず、早速妻の給与明細をチェックし、年収を計算してみましょう。

とくに産休・育休や時短などで収入が減ってしまった人にとって、配偶者控除や配偶者特別控除を活用しない手はありません。「共働きだから関係ない」と思って年末調整の際に計算をしなかった人も、計算をしたら条件内に収まっていることもあるかもしれません。是非チェックしてみましょう。

もし、手続きが漏れてしまった場合でも、確定申告をすれば間に合います。控除額によっては住民税が下がり、そこから算出される保育料が安くなる場合も考えられますので、忘れずに手続きをして、納めすぎた税金を取り戻しましょう。

回遊舎

回遊舎

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」「J-REIT金メダル投資術」、「NISA120%活用術」、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」、「子育てで破産しないためのお金の本」など。