2月~3月は進学や就職などで引っ越す人が増える時期です。すると、今まで住んでいた部屋の「退去時の費用」が気になるという人も多いことでしょう。「退去時にいくら請求されるのだろう」「敷金は戻ってくるのかな」とやきもきすることも。
また、SNSなどでも「1Kなのに、高額なクリーニング費用を請求された」「原状回復費用を請求されたが、どこまで払う必要があるの?」といったつぶやきが散見されます。今回は損しないための「退去時の知識」について解説しましょう。
きちんと知識を身に着けて、敷金を取り戻そう
賃貸住宅の退去時に発生する費用負担についてのトラブルは、毎年「国民生活センター」が注意喚起をしているなど以前からなくならないものです。こうしたトラブルの原因となっているのは、転居時の借りる側の忙しさや知識不足につけこんで修繕費用を請求することがあるほか、「原状回復費用」の中身があいまいで、一括で請求する業者がいるためです。
そもそも、基本的な知識として覚えておきたいのは、「敷金は戻ってくる」ということです。筆者は8年居住した賃貸住宅を退去したとき、ほぼ2カ月分の敷金が戻ってきました(ペット可物件で、契約時に敷金3カ月分を充当していたため)。
ただ、この話をすると多くの人が「ほんとに?」という反応をします。敷金は戻ってこないのが当たり前だと思っている人が多いようですが、一般的な生活を送っていて発生する損傷であれば、借り主の負担とはならず、クリーニング代などをのぞいた分の敷金は戻ってきます。
精算後の費用 = 敷金 - クリーニング費用など(借り主側が負担すべき損傷分)
ただ、相手の言いなりになっているだけでは敷金を取り戻すことはできません。必要なのは、「正しい知識」を持ち交渉することです。交渉に際してはけんか腰である必要はありませんが、毅然とした態度でのぞみましょう。
国交省のガイドラインや東京都の賃貸住宅紛争防止条例が役立つ
まず、たよりになるのが、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」や、東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」です。大量にあるため、全編にわたって目を通す必要はありませんが、さわりの部分だけでも読んでおくと参考になります。
とくに東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」はどこまでが借主負担で、どこまでが貸主負担かが、イラストをまじえてわかりやすくまとめられています。
たとえば、床は以下のように例示されています。
・日照等による変色(通常損耗)=貸主負担
・引越作業等で生じたすり傷 (善管注意義務違反・過失)=借主負担
また、国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」内にある「入退去時の物件状況及び現状回復確認リスト」を準備しておくことをおすすめします。あらかじめ出力しておき、退去時の立会時に持参、「私は、ガイドラインを知ってます」という姿勢を見せるのも良いかもしれません。ちなみに文字を読むのが面倒という人は、同じく国交省の動画も参考になります。
ただ、行政が示す負担はあくまでも一般的な例のため、実際とは異なると主張されることもあります。立ち会った担当者によっては「それを参考にされると仕事にならない」と言い張る人もいることでしょう。ただ、繰り返しになりますが、暮らしているとき、日常にできたキズであれば借り主が負担する必要はないというのが基本のルールです。相手の言い分を一方的にうのみにする必要はありません。
退去時は家主側、借り手側が立会い、納得してサインを
また、国民生活センターでは、退去時のトラブル防止のポイントとして、以下の4つをあげています。
(1)退去時は家主・管理会社・仲介業者などの立ち会いのもと、現状を確認
→立ち会いのもと、このキズは家主負担、借主負担.......などと決めていきましょう。
(2)立会時に示された原状回復費用の内訳について、家主側に説明を求める
→内容が「一式」などで明示していない場合、詳しくヒアリングしましょう。
(3)複数の業者から見積りを提示してもらうよう、家主側に要求する
→クリーニング費用は1㎡1000~2000円が相場。部屋の広さが25㎡ならおよそ2万5000円~5万円程度です。極端に高額な費用を請求された場合、複数業者から見積もりをとってもらいましょう。
(4)話し合いがこじれた場合、民事調停や少額訴訟等の手続きも可能
→これらの手続きをとることも含めて、各地の消費生活センターへ相談しましょう。
何より大切なのは、退去時にどこまで費用負担をするのか、納得してサインすることです。疑問があれば質問し、時にはスマホの録音や録画機能なども上手に使いながら、賢く退去時の費用精算を終えるとよいでしょう。