オペレーターの作業時間を従来比60%削減
そこで、同社はスタティック測位と同等精度のGPS測量機能を内蔵したAEROBOマーカーを開発し、クラウド上で空撮画像中のマーカーを自動検出することで、マーカー検知による全自動測量を可能とした。
マーカーの検出処理は、空撮画像からオープンソースのコンピュータービジョンライブラリであるOpenCVで候補を抽出した上で、機械学習用のオープンソースライブラリであるTensorFlowで識別している。
菱沼氏は、マーカー検知の全自動測量の開発に関して「機械学習を活用することで、これまで手動で行っていた作業の支援を行い、全自動ドローン測量を実現したことに加え、われわれとしても検知技術のベースとしてAI開発のノウハウを獲得できた」と、振り返る。
そして、2016年5月からはドローン点検運用開始と並行してシート損傷カ所の学習データ集めを開始し、自動検知学習の教師データ取得を目的に目視検出結果を蓄積。
2017年8月にはデータも蓄積されてきたため損傷カ所検出処理の開発を開始した。基本的にはシート全体のオルソ画像を作成し、ディープラーニングで損傷カ所を検出する流れだが、全体を検出した場合に草地など必要のない部分も検出してしまうため、シートから高さ3m地点をマスク画像とすることで、効率的に検出できるようにした。
その後、2017年11月にシート点検機能の提供を開始し、シートの損傷カ所の候補をAEROBOクラウドからダウンロードでき、一括表示によりオペレーターの確認作業を補助することを可能とした。
菱沼氏は「AEROBOマーカーの検知技術をベースにAI開発のノウハウを活用したことでデータの蓄積が可能となり、損傷検知サーバを短期間で開発することができた。また、オペレーターの作業時間を従来比で60%削減できた」と、語気を強めていた。
AEROBOマーカーを利用した基準点測量にも注力
ただ、ユーザーからは「ドローン測量の過程で測量されるマーカー測量の精度が知りたい」「3Dモデルの座標が合わないため現場図面の基準点座標に合わせてほしい」「AEROBOマーカーで基準点測量はできないか?」などの要望があったという。
このような状況を踏まえ、同社では観測網作成、基線解析、閉合差の点検、網平均計算をはじめドローン測量・マーカー測量の精度管理機能の強化や、現場に設置している複数の基準点を利用可能とする座標に合わせたドローン測量・3Dモデルの提供、帳票出力などAEROBOマーカーによる基準点測量のサポートを行うことを目指し、これらの技術の開発を決定。
これにより、クラウドの処理を増強したことに加え、計測地点にマーカーをおいてログをクラウドにアップロードするだけで観測機関の抽出、電子基準点の検索、多角網の生成、基線解析、三次元網平均計算、帳票出力、現場基準点を利用した基準点測量と複数セッションによる三次元網計算も可能としている。
嶋田氏は「クラウドが単にヴァーチャルな世界だけでなく、リアルな物体を持つハードウェアとセットになることでクラウドが活かされる」と話しており、菱沼氏は「将来的にはドローンとマーカー、クラウドを活用して、多様な産業用のソリューションの自動化を目指す」と今後の展望を述べていた。