花王が、衣料用濃縮液体洗剤の新商品「アタック ZERO(ゼロ)」を4月1日より販売することを発表した。衣類がよみがえる「ゼロ洗浄」を目指して独自に研究開発した洗浄基剤「バイオ IOS(アイオーエス)」を主成分とし、30年以上にわたるアタックの歴史の中で最高の洗浄力を実現しているという。
10年以上かけて開発された花王史上最高の洗浄基剤
「驚きのある洗剤を数々提案してまいりました過去から、不可能を可能にする究極の洗浄イノベーションをご提案いたします。ポイントは、10年以上の歳月をかけて開発いたしました、花王史上最高の洗浄基剤『バイオ IOS』でございます」
花王の澤田社長の自信に満ち溢れた挨拶から、発表会は始まった。バイオ IOSは、昨年11月に花王が発表した5つの技術イノベーションの1つであり、花王が総力を挙げ開発した洗浄基剤だ。その第1弾として、衣料用洗剤「アタック」ブランドから実用化を開始。「落ちにくい汚れゼロへ、生乾き臭ゼロへ、洗剤残りゼロへ、の『ゼロ洗浄』へ」というキャッチフレーズのもと、新年号が始まる4月1日より販売を開始する。
バイオ IOSの特徴は3つ。1つ目は汚れだけを選択的に吸着することで汚れだけをはぎ取り、再付着を防ぐこと。これによって汚れゼロの実現が見えてきたという。2つ目は、汚れをゼロにすることによって臭いもゼロにすること。抗菌材を使わなくても抗菌材以上の効果を実現する。3つ目は、汚れを除去した後に水に素早く溶け、衣類への洗剤残りを限りなくゼロに近づけたこと。すすぎ回数を減らせるほか、水量が節約できるため、災害時などでも満足できる洗濯が行えるだろう。
ラインアップは「アタック ZERO」と「アタック ZERO ドラム式専用」の2製品。それぞれボトル、つめかえ用、ワンハンドプッシュの3種類が用意される。価格はオープンプライスとなり、2製品とも店頭予想価格は本体ボトルが350円前後、ワンハンドプッシュが500円前後。容量は「アタック ZERO ドラム式専用」が20~40gほど少ない。なお「アタック ZERO」の販売をもって、「アタック NEO」は3月で販売終了となる。
繊維に不要なものを残さず、衣類をよみがえらせる
「アタック ZERO」は3つの革新を実現した。1つ目の革新はバイオ IOSを配合したことによる「ゼロ洗浄」だ。現代では夫婦共働き家庭が増え、家事全般をシェアする時代となったことから、誰がやっても失敗しない洗濯が求められている。その失敗の理由として、汚れの落ちにくい化学繊維の増加、節水型洗濯機の普及と洗濯機への詰めこみ、UVケア品や化粧品に含まれる油分、消臭剤や芳香剤といった新しい汚れの出現があるいう。花王の中尾氏は、この状況を「洗濯環境の変化によって生まれてしまっている負のスパイラル」と表現する。
油汚れの代表ともいえる皮脂は、衣類のくすみや生乾きの臭いの原因となる。しかし、化学繊維は油になじみやすく水をはじく性質があり、水によって引きはがすことが難しい。従来の洗濯用洗剤では、化学繊維の皮脂汚れに対する洗浄力は木綿の半分以下になっていたという。
また、節水型洗濯機やドラム式洗濯機の普及、時間短縮のための詰め込み洗濯によって、水量当たりの衣類の量が増加。その結果、洗濯時に衣類にかかる力が40%、本来水中で働く洗浄成分の量が30%減少してしまい、十分な洗浄力が得られない状況に陥っている。
洗濯環境の変化によって生まれてしまっている負のスパイラルを、正のスパイラルに導くため、花王は“繊維に不要なものを残さず、衣類をよみがえらせる”という洗濯の原点に立ち返り、新界面活性剤「バイオIOS」を開発した。花王が行った実験では、従来の洗剤からバイオ IOSを配合した洗剤に切り換えたところ、汚れが蓄積された衣類が清潔状態によみがえったという。繊維に不要なものを残さないため、柔軟剤などの仕上げ剤の効果も高まるそうだ。
界面活性剤としての性質を極めたバイオ IOS
岡野氏は、バイオ IOSの特徴を「油に良くなじんで水に溶けるという、界面活性剤としての性質を極めたもの」と説明する。界面活性剤とは、油になじむ新油基と水に溶ける親水基を併せ持つ分子種を指す。新油基を長くすれば化学繊維に対する洗浄力は高まるが、その反面、分子同士が凝集、結晶化するなどして水に溶けにくくなってしまい、水を使う洗濯ではかえって力を発揮できなくなってしまう。
そこで花王は、新油基を長くしつつ、親水基を内部に動かすことで、新油基の中間部に親水基が位置する特殊な構造を研究、開発。この構造によって新油基は2つに枝分かれを起こし、分子同士が凝集しにくくなり、水に溶けやすい性質に変化したという。これを精密にコントロールすることで、洗濯に冷たい水を利用する日本でも高い洗浄力を発揮する分子構造にたどり着き、バイオ IOSが誕生した。このバイオIOSを中心に成分の組み合わせを検討し、超濃縮配合して完成したのが、ゼロ洗浄技術の「アタック ZERO」だ。
新たにドラム専用とワンハンドプッシュを用意
2つ目の革新は、洗濯に使用する水量の少ないドラム式洗濯機に適した「アタック ZERO ドラム式専用」の開発にある。エコロジー、エコノミーの両面で優れた洗濯機だが、水量の少なさから汚れが濃縮されやすく、徐々に衣類に汚れが再付着するという問題がある。そこで「節水対応ポリマー」を通常の「アタック ZERO」よりもリッチに配合。黒ずみの原因となる粒子汚れが高濃度に存在していても、汚れの再付着を防げるという。
3つ目の革新は、「ワンハンドプッシュ」の採用。現状の洗剤は、容器を開封し、液や粉をキャップやスプーンに移し替えて計量する必要がある。またその際に液や粉がこぼれてしまうこともままあった。ワンハンドプッシュは、このような手間や負担を減らし、洗濯機に直接洗剤を投入できる新しい仕組みだ。上部のトリガーをプッシュすると決まった容量の洗剤が出てくるため、量の調整は自由自在。また片手でプッシュできるため、子育て中の方や洗濯ビギナー、手の不自由な方やシニア層でも簡単に扱えるという。
自宅でドラム式洗濯機を使用しており、今回の洗剤もずっと試用し続けてきたという澤田社長。最後に開発にかけた思いとこれからの展望を次のように述べる。
「研究統括をやっていたころから発破をかけて、ようやくここまで来ました。アタックとして広げることも重要ですが、この基剤を理解してくれるところがあれば、自社ブランドにこだわらずともうまく連携してもいいのではないかなと。バイオ IOSをグローバル基剤とし、色々なアライアンスを組んで、広く世の中の役に立つように使っていければと思います」