平成仮面ライダーシリーズをふりかえる企画の第17弾は、英雄の魂を宿した"眼魂(アイコン)"の力で戦う"おばけ(ゴースト)"の仮面ライダー『仮面ライダーゴースト』(2015年)をとりあげる。

『仮面ライダーゴースト』とは、2015(平成27)年10月4日から2016(平成28)年9月25日まで、テレビ朝日系で全50話を放送した連続テレビドラマである。本作の主人公である仮面ライダーゴーストのモチーフは、その名のとおり「おばけ」。基本形態である「オレ魂」から、歴史に名を残すさまざまな英雄(宮本武蔵やエジソン、ニュートンなど)の魂を借りて、フォームチェンジしていく仮面ライダーとなった。

大天空寺で修行をしている天空寺タケル(演:西銘駿)が18歳の誕生日を迎えた2015年10月4日、彼のもとへある荷物が届けられた。それは、10年前に命を失ったゴーストハンターの父・天空寺龍(演:西村和彦)から息子へと託された「眼魂」だった。眼魂を手にしたことによって、異世界から来た怪物「眼魔(ガンマ)」の姿が見えるようになるタケルだったが、幼なじみの月村アカリ(演:大沢ひかる)や大天空寺の住職代理・御成(演:柳喬之)を守るべく眼魔と戦おうとして、命を失ってしまう。死後の世界で出会った仙人(演:竹中直人)からゴーストドライバーを与えられたタケルは、ゴーストとなって現世に現れ、仮面ライダーゴーストに変身して眼魔に立ち向かう道を選択する。しかし、タケルが命を失ってから99日の間に「英雄」の魂を宿した15個の眼魂を集めないと、彼は生き返ることなく消滅してしまう。果たしてタケルは見事15個の英雄眼魂を集め、ふたたび人間の肉体を取り戻すことができるだろうか……?

仮面ライダーゴーストの基本形態である「オレ魂」は、ベースとなるボディに「パーカー」の形状をした幽体が被さることで、変身を完了する。首に巻いたマフラーをなびかせる『仮面ライダーW』(2009年)やロングコートを翻して戦った『仮面ライダーウィザード』(2012年)の流れを汲む「硬質のボディにやわらかい布を組み合わせた仮面ライダー」であるゴーストは、変身完了直後に頭に被ったフードをめくって戦闘態勢に入るなど、「衣服」という部分をより強調したスタイルとなっている。

タケルがよみがえるために必要とされる「英雄眼魂」は、すでにこの世に存在しない歴史上の英雄や偉人の魂が込められたアイテムである。最初に現れた英雄眼魂は、龍が死の間際にタケルへと託した「刀の鍔」とタケルの強い思いが重なって生まれた「宮本武蔵」の眼魂=「ムサシゴースト眼魂」だった。これをゴーストドライバーに装填することで、ゴーストにムサシのパーカーゴーストがとりつき「ゴースト ムサシ魂」にフォームチェンジを行う。以後、タケルたちは「英雄に関する"物"」と「英雄への強い思いを持った"人物"」と次々に出会うことによって英雄眼魂を生み出し、ゴーストの強い味方にしていく。序盤のエピソードでは、さまざまな英雄への強い思いを抱くゲストキャラクターが登場。彼らとの交流によってタケルが徐々にではあるが人間的成長を遂げ、それに応えるかのように英雄眼魂が集まっていくようすが描かれた。

英雄眼魂を狙う眼魔を探る方法として御成が発案したのが、修行僧のシブヤ(演:溝口琢矢)、ナリタ(演:勧修寺玲旺)と共に世間に巻き起こる怪事件・異常現象(それはもちろん、眼魔の仕業である)を調査・分析する「不可思議現象研究所」の設立である。当初は非科学的なゴースト現象を拒絶し、理解したがらなかったアカリだが、得意の理系知識と探求心をフルに活用して、人間の眼には見えない眼魔を可視化する薬品「不知火」などを発明し、タケルをサポートするようになる。一方で御成は常に「タケル殿~~~!!」と叫びながらタケルの周りを騒がしく走り回り、何かと役に立とうと努力するものの、おっちょこちょいな性格のため役に立たないことが多い。しかし、修行によって徳を積み、慈悲深い面も持ち合わせており、彼の人柄によって心を救われた者も存在する。トラブルメーカーであると同時に、最高のムードメーカーでもある御成は、本作の魅力を語る上でなくてはならない存在だといえる。

第4話からは、仮面ライダースペクター/深海マコト(演:山本涼介)が登場。マコトはタケルやアカリの幼なじみだったが、10年前に妹のカノン(演:工藤美桜)と共に行方をくらませていた。ふたたびタケルの前に現れたマコトは、タケルと同じく15個の眼魂を集めようとやっきになっていた。その理由は、眼魂になっている妹カノンを生き返らせることであり、当初はゴーストと激しく対立し、眼魂を奪い合った。タケルが15個の眼魂をすべて集め、自分の命ではなくカノンを生き返らせることを優先したため、以後マコトはタケルのよき仲間として共に眼魔と戦うことを決意する。

また、英雄眼魂を狙う謎の男・西園寺(演:森下能幸)と、彼と行動を共にする青年アラン(演:磯村勇斗)のミステリアスな行動も、視聴者の興味を惹きつけた。「眼魔の世界」から来たというアランは、後に「仮面ライダーネクロム」へと変身し、ゴーストやスペクターの強敵として立ちはだかるが、兄・アデル(演:真山明大)の策略によって故郷を追われ、人間社会で生きていくことになった。完璧な世界だと信じていた眼魔の世界に疑念を抱き、揺らいでいた自分の心を鎮めてくれたタコ焼き屋台の"フミ婆"こと福嶋フミ(演:大方斐紗子)との交流を経て、アランはタケルやマコトの仲間として戦う道を選択することになる。1年間にわたるストーリーの中でアランの心情の変化が細やかに描かれ、彼が最初は見下していた人間社会と、そこに住む人間たちのすばらしさを感じ取っていく過程が観る者の感動を呼び起こした。

ゴーストになったタケルがふたたびよみがえるため英雄眼魂を集める中で、敵・味方を問わずさまざまな人物との出会いが描かれ、人間が「いかに生命を燃やして生ききるか」という、ヒューマニズムを重視したストーリーが描かれていく。

タケルは戦いの中で眼魔の世界の"実情"を知り、眼魔にも人間と同じ"心"を持つ者が多く存在していることを知る。そして、眼魔とも互いに理解しあうことが可能だと信じて、たびたび対話を試みようともしていた。当初は純粋に「英雄」に憧れ、自分に何ができるのかを模索していたタケルだったが、さまざまな人とのふれあいや対立などを経験していくことで人間的度量が大きくなり、15人の「英雄」たちとも心を通わせ、強い男へと成長した。

本作はタケルの成長を通じて、人間の持つ「無限の可能性」のすばらしさ、自分を信じることの大切さ、そして家族や仲間を大事に思う気持ちなどを謳いあげたドラマであったといえるだろう。

次回は、「医療」と「ゲーム」という異色のモチーフを組み合わせた『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)の概要を解説し、魅力的な「ドクターライダー」たちの群雄割拠のもようをご紹介したい。

映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER』は現在大ヒット公開中。なお、マイナビニュースでは平成仮面ライダー20作を記念した『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』大特集を展開している。

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