環境発電で駆動するマイコンを実現するSOTB
DRPと並んで、e-AIの進化を支えるもう1つの技術がSOTBである。SOTBはFD-SOI(完全空乏型SOI)の一種で、通常のSOIに比べて薄い10nmほどのBOX層と、シリコン薄膜(SOI)がSOI基板上に形成されたトランジスタで、不純物レスチャネルとバックバイアス制御により、従来以上の低アクティブ電流や低スタンバイ電流を可能とする。
10年以上にわたって研究開発が進められてきたもので、第1世代となる「R7F0E」が2018年11月に発表されている。その性能は、というと、アクティブ電流20μA/MHz、ディープスタンバイ電流150nA、ソフトウェアスタンバイ電流400nA(コアロジック、32KB SRAM保持@1nA/KB)という、ほかのマイコンと比べて低い値を実現している。
同事業本部 ホームソリューション事業部長の守屋徹氏は、「搭載している14ビットのA/Dコンバータを32KHzで駆動させた状態で3μAであり、少ない電力で長時間の稼動が可能なシステムを構築できる。ただし、マイコンだけではエナジーハーベスト(環境発電)は実現できないので、発電素子やセンサ、スーパーキャパシタなどを有しているパートナーとエコシステムを構築することで、市場の拡大を図っていきたい」とする。
また、第1世代品はCortex-M0+を採用しているが、第2世代品としてCortex-M33を搭載したものも開発を進めているとするほか、第3世代品として、より高性能なCortex-M7を搭載したものも計画段階にあるとする。この第2世代、第3世代であっても、アクティブ電流、スタンバイ電流ともに大きく変化はない。通常、コアが高性能化すれば、それだけ消費される電流も増えそうなものだが、「現在は65nmだが、55nm程度までは微細化できる見通しが立っている(それ以上、一般的なFD-SOIのような28nmプロセスではリークが大きすぎるため、SOTBには使えない)」(同氏)としており、プロセスの進化で電力の増加はある程度抑えられるとする。また、「理論値はアクティブ電流が10μA、スタンバイ電流で100nA。実働でそこまでいければ究極の超低消費電力デバイスが実現されることとなる。まずはそこをターゲットに技術開発を継続していく」(同)ともしており、プロセスのみならず、回路技術など、さまざまな方向から、さらなる進化を目指していくとした。