東京都武蔵野市は20日、武蔵野総合体育館で東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)に向けたイベント『ホストタウン交流フェス~Sports for All ルーマニア・パラ~』を開催した。
ルーマニア×武蔵野市 26年の交流
同市はホストタウンとしてルーマニアと約26年の交流があり、これまでスポーツだけでなく、文化的な体験イベントを実施してきた。今回は、強化合宿のために来日しているパラアスリートのアレクサンドル・ボロガ選手、ガブリエラ・コンスタンティン選手、タビタ・ブルトゥラル選手の3名を招いてのトークセッションをはじめ、イースターエッグ作りや、民族衣装の体験コーナーなど、ルーマニアの文化を肌で感じることができるコーナーが多数設けられた。
会場にはパラスポーツを広く知ってもらおうと、視覚障害者柔道、車イスバスケットボール、ボッチャ、ブラインドサッカーなどの体験コーナーが設置され、悪戦苦闘しながらも楽しむ子どもたちの姿が印象的だった。
オリンピックは地球の運動会
イベントには、フリーアナウンサーの大橋未歩さんも出席。大橋アナはこれまで、アテネオリンピック、北京オリンピック、ロンドンオリンピックの取材経験があり、現在は、パラ卓球のアンバサダーを務めている。また、今月25日からはBSスカパー!で、パラスポーツを応援する番組『PARA SPORTS NEWS アスリートプライド』(金曜23:00~24:00)のMCを務めるなど、パラスポーツの応援に力を入れている。
大橋アナはこれまで3大会のオリンピック取材を通じて「オリンピックって地球の運動会なんだな」と感じたそうで、「言葉が分からなくても、私たちが運動会で感じた悔しさや喜びを(アスリートの)皆さんが同じように感じている。見ている人も言葉がいらない。悔しがったり喜んでいたりする姿を見て、世界の人たちも自分と同じ人なんだと思って世界を身近に感じることができた」と振り返った。
その中でも大橋アナが最も印象に残った出来事は、アテネオリンピックでの元競泳日本代表の北島康介さんが2つの金メダル獲得したことだと話し、「全然知らない外国人の方から、『コングラッチュレーション』って言ってもらった。その時に本当に日本人で良かったと誇りに思えて、良い思い出になった」としみじみ。「来年の東京オリンピック・パラリンピックの際には、外国の方が入賞した際は『コングラッチュレーション』って声をかけると、お互い良い思い出になると思いますし、自分が地球の一員だと感じることができる」と、オリンピック・パラリンピックの楽しみ方を伝授していた。
パラスポーツは障害を乗り越える競技
パラスポーツは、まだまだ日本では知名度が低く、柔道やサッカーといった国民的なスポーツでさえ、パラスポーツ版のルールは知らない人が大多数なのが現状だろう。大橋アナは、2013年に軽度の脳梗塞と診断され、療養し復帰した経験がパラスポーツに興味を持ったきっかけだという。
そのパラスポーツの取材を通してパラアスリートからの「障害は可哀想なことではないんです。障害は個性。自分の障害を乗り越える戦略を出していくのが選手としてのプライドなんです」という言葉に感動したという。
大橋アナは「障害者なのに頑張っていると見られがちですが、そうではなく“1つの戦い方”である。1つ不自由な部分があったとしても、それ以外の部分でどう自分のポテンシャルを活かしていくか、前向きに人生を捉えるという力を、パラリンピアンから学んでほしいなと思います」と呼びかけていた。
パラアスリートの技を身近に体験
イベントでは、パラアスリートの3選手のデモンストレーションが行われた。リオデジャネイロパラリンピック・視覚障害者柔道60kg級(全盲)男性で銅メダルを獲得しているボロガ選手は、組んだ状態からはじまる独特のルールの中、豪快に技をきめるたびに会場からは大きな歓声が起きていた。
卓球T6クラス(立位・先天的に両腕に奇形がある)のコンスタンティン選手と、上肢障害を持つ卓球のブルトゥラル選手のラリー実演には、マイラケットを持参した大橋アナも参加。大橋アナは緊張気味で何度がミスをして苦笑いを浮かべていたが、パラアスリートのハンディキャップを物ともしない軽快なラリーに、多くの人が感心の声を漏らしていた。
目標は「優勝」
いよいよ来年の開催となった東京パラリンピックに向けて、3選手に意気込みを問うと、ボロガ選手は「メダルを勝ち取ることはどの選手の夢でもある。(リオでメダルを獲得した)その時の気持ちは言葉にするのは難しくて、それを言葉にしようとすると時間がかかります」と振り返りながら「優勝してメダルを勝ち取りたい」と決意を明かしてくれた。
コンスタンティン選手とブルトゥラル選手も、やや緊張気味で言葉少なだったが「優勝したい」と静かな闘志をちらつかせていた。イベントの最後には、集まった市民の寄せ書きが綴られた応援旗が贈られ、選手たちはより一層、東京2020パラリンピックへの思いを強めているように見えた。