『仮面ライダージオウ』で20作目を迎える「平成仮面ライダー」シリーズをふりかえる企画の第16弾は、『仮面ライダードライブ』(2014年)をとりあげる。

『仮面ライダードライブ』とは、2014(平成26)年10月5日から2015(平成27)年9月27日まで、テレビ朝日系で全48話を放送した連続テレビドラマである。本作では「バイクではなく、自動車に乗って戦う仮面ライダー」という設定が徹底して作り込まれており、仮面ライダードライブの戦闘スタイルや、共に戦う仲間であるシフトカーの描写など、メカニカルでスピード感に満ちている。

第1作『仮面ライダー』(1971年)の愛車・サイクロン号から、仮面ライダーのマシンといえばオートバイ、というイメージが貫かれているが、過去には『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)のライドロンや『仮面ライダー龍騎』(2002年)の契約モンスター・ドラグレッダー、『仮面ライダー電王』(2007年)の"時の列車"デンライナーなど、オートバイと併用する形でさまざまな"乗り物"が仮面ライダーの戦いをサポートしていた。ただ、本作の仮面ライダードライブはオートバイを一切用いることのない、シリーズ初の「自動車のみに乗る仮面ライダー」となり、専用マシン「トライドロン」と仮面ライダーとのコンビネーションにこだわりのポイントが置かれた。

全世界を恐怖に陥れた「グローバルフリーズ」と呼ばれる大事件から半年後、刑事・泊進ノ介(演:竹内涼真)は警視庁特状課(特殊状況下事件捜査課)に配属され、気の抜けた日々を送っていた。そんな中、人間を襲う機械生命体「ロイミュード」が暗躍する怪事件が勃発。自分の意志を持ち、言葉を話す"ベルトさん(声:クリス・ペプラー)"ことドライブドライバーにスカウトされた進ノ介は、ドライブドライバーを装着して戦士「ドライブ」に変身し、ロイミュードに挑んだ。かつてグローバルフリーズが起きた際に人間を守って戦った戦士の名にちなんで、進ノ介は「仮面ライダードライブ」と呼ばれるようになった。

「自動車に乗る仮面ライダー」と並んで「刑事の仮面ライダー」というのも、本作の特色といえる重大な要素である。優秀な刑事だった亡き父・泊英介(演:たれやなぎ)の遺志を継ぐかのように警察官となった進ノ介は、かつて特殊班のエリート刑事として犯罪組織を追っていたが、グローバルフリーズの夜、ロイミュードが引き起こす「重加速」現象(すべての物質の動作が極めて重くなり、自由がきかなくなる現象)に遭遇する。このとき、自分の撃った一発の銃弾がきっかけとなって、同僚刑事で親友の早瀬明(演:滝口幸広)に再起不能の重傷を負わせてしまった。この事件は進ノ介の心に多大なダメージを与え、それ以来彼の「心のエンジン」は止まったままであったが、特状課の相棒であるスーパー婦警・詩島霧子(演:内田理央)やベルトさんの尽力によって仮面ライダードライブになる能力を得てからは、ふたたび脳細胞がトップギアに入り、刑事としての情熱を甦らせている。

人類の絶滅を目論む機械生命体ロイミュードは、モデルとして目をつけた人間の姿と性格の一部をコピーする能力を駆使し、普通の人間ではとうてい不可能な凶悪犯罪を難なく行うことが可能。リーダー格であるハート(演:蕨野友也)と参謀格のブレン(演:松島庄汰)、そして倒されたロイミュードを治療する能力を備えたメディック(演:馬場ふみか)など、ロイミュードはぜんぶで108体存在している。

人類を憎む一方で、ロイミュードすべてを"友だち"と呼び、仲間を大事にする心を持ったハートは、ブレンとメディック両方から強い信頼を寄せられており、ハート以外の者をさげすむメディックに、ブレンが苛立ちを覚えるといったコミカルなシーンも見られた。また、目立った行動を取るロイミュードを"処刑"する役目を備え「死神」と恐れられている魔進チェイサー/チェイス(演:上遠野太洸)も、ハートの大切な"友だち"の1人である。ドライブにとって恐ろしい敵であるチェイスだが、「ルールを守る」ことを重要視するなど妙に生真面目な性格なのが特徴で、進ノ介からは「敵なのにどこか憎めないヤツ」という印象を持たれている。物語が進行すると共に、チェイスの謎めいた過去が明らかとなっていった。

ロイミュードが引き起こす「重加速」を「どんより」と表現し、人々に注意を促している特状課の面々も、非常に個性的かつ魅力的な人物がそろっている。日常のすべてを「占い」に頼る、軽い性格の特状課課長・本願寺純(演:片岡鶴太郎)を筆頭に、重加速粒子測定器などを発明する沢神りんな(演:吉井怜)、ネットワーク研究家の西城究(演:浜野謙太)が客員として参加し、進ノ介や霧子をサポートする。警視庁・捜査一課から協力連絡員として特状課と接する追田現八郎(演:井俣太良)は、当初こそ変わり者ぞろいの特状課メンバーを馬鹿にしていたが、重加速(どんより)を実際に体験し、ロイミュードや仮面ライダーの存在を目撃してからは、進ノ介たちと共に難事件に挑む頼もしい仲間となった。

第12話「白い仮面ライダーはどこから来たのか」からは、アメリカ帰りの陽気なカメラマン・詩島剛(演:稲葉友)が登場。霧子の弟である剛は進ノ介を「進兄さん」と呼んで慕い、抜群の身体能力と行動力で、特状課よりも早くロイミュード事件の手がかりをつかんでくることも多くあった。剛は「マッハドライバー炎」とシグナルバイクを使って「仮面ライダーマッハ」に変身し、ロイミュードを1人残らず殲滅することを誓っている。非常に派手なふるまいを好み、「追跡、撲滅、いずれもマッハ! 仮面ライダーマッハ!!」とポーズ付きで名乗りをあげるのが定番パターンである。常に自信まんまんで強気な剛であるが、ロイミュードを憎み、一刻も早く全滅させたいと願う"理由"は実に深刻であり、悲壮な決意をもって戦っていることがストーリーの進行と共に語られていく。

当初、ドライブが進ノ介であるという事実は霧子、剛、そしてメカニック担当のりんなしか知らない「秘密」であったが、第25話からは本願寺課長によってマスコミに情報が広まり、仮面ライダードライブの存在がすべての人々の知るところとなった。基本的に人知れず悪と戦う秘密の戦士であるはずだった仮面ライダーが、誰でも正体を知る「公」のヒーローになってしまうという異例の展開が、ファンの話題を集めた。そして第26話では、チェイスがりんなの開発したマッハドライバー炎によって第3の仮面ライダー「仮面ライダーチェイサー」へと変身。より強大化したロイミュードにドライブ、マッハ、チェイサーの3人体制で対抗するかたちとなった。

毎回のストーリーは前後編の2話完結エピソードが基本となり、ロイミュードが巻き起こす犯罪の手がかりを追い、進ノ介たちが捜査を進める中で真相が究明されていくという「刑事ドラマ」のフォーマットが重視されている。その中で、進ノ介たちだけでなくロイミュードにとっても恐ろしい脅威となる蛮野天十郎(演:森田成一)/ゴルドドライブの抱く"野望"や、蛮野と剛の間にある"因縁"、そして人間を守る戦いを続けるうち、人間に憧れ、近づきたいと願うようになったチェイスの"成長"など、魅力的なキャラクターたちによる熱きドラマが繰り広げられた。

『仮面ライダードライブ』の物語はテレビシリーズの第47話にてひとまずの"完結"を見るが、続く第48話「ゴーストの事件」では、ベルトさんと別れてドライブに変身する能力を失った進ノ介が、1人の刑事として悪に挑んでいく姿を描きつつ、新たな仮面ライダーである仮面ライダーゴーストと遭遇するシチュエーションを盛り込んだスペシャルなエピソードが作られた。次回は、異世界の怪物「眼魔」に命を奪われ、ゴースト(幽霊)になった天空寺タケルが、ふたたびよみがえるために"命を燃やす"『仮面ライダーゴースト』(2015年)をご紹介しよう。

映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER』は現在大ヒット公開中。なお、マイナビニュースでは平成仮面ライダー20作を記念した『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』大特集を展開している。

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