カードを出してサインをしたり、暗証番号を入力したりするだけでお買い物ができるクレジットカード。キャッシュレス決済の普及とともに使うシーンが広がってきていますが、そもそもどんなしくみなのでしょうか?
今回は、クレジットカードのしくみを確認しておきましょう。
クレジットカードのしくみ
クレジットカードを使ってお買い物をするしくみは、おもに3つの契約によって成り立っています。
まず、私たちがカードを作るときに契約するのが「カード会員契約」です。カード会社と会員との間で結ぶ契約です。契約の内容は「カード会員規約」に書かれており、カードの申込書の裏側や、インターネットでのカード申し込み画面に表記されています。年会費、有効期限、利用枠、引き落とし口座などについての約束が定められています。
2つめは、私たちとお店との間での売買契約です。日頃お買い物をするときには、お金を支払ってモノやサービスを受け取ります。このときに、私たち消費者とお店との間ではその都度、契約が成立しているのです。
3つめは、お店とカード会社との間での加盟店契約です。直接には私たち消費者には見えないところで交わされている契約ですが、この契約によって、私たちはカード払いに対応しているお店でカード決済ができます。
これら3つの契約によって、私たちはクレジットカードを作ることができ、それをお店で使ってお買い物ができ、お店はカード会社を通して代金を回収できるしくみになっています。
カード払いした代金がお店に届くしくみ
私たちがカードでお買い物をしたときには、お店にはカードを提示するだけで、現金を渡すことはありません。では、お店はどのようにして代金を回収しているのでしょうか? カード払いをしたときのお金の流れをみてみましょう。
お店でカード払いをする
店頭でカード払いをして、商品を受け取ります。このとき、カードを端末に差し込むと、カード番号やお買い物をした金額などの情報がカード会社に送られます。これはおもに、カードが有効なものかを確認したり、後日にまとめて代金を請求したりするために使われます。
カード払いをしたときには、クレジットカード払い売上票が発行されます。多くはレシートのような紙で、利用日、カード番号、代金、端末番号などが記載されています。店頭では3枚発行されます。カード会社用、加盟店用、お客様用です。このうちカード会社用の控え1枚には署名を求められます。そして、お客様用の1枚を受け取ります。
なお、ここで発行される売上票に記載されているカード番号は、下3桁が「xxx」と表示されます。万が一売上票を落としたり、なくしたりしても、カードの情報が漏えいしないように配慮されています。
お店がカード会社に代金を請求する
カード払いを受け付けたお店は、代金を回収するためにカード会社に請求します。一括払いでの売上代金の場合は、月に2回、それまでの売り上げ分をまとめて請求するのが一般的です。お客さんの署名が付いたカード会社用の売上票を、専用の封筒に入れてカード会社に送付します。
カード会社がお店に代金を振り込む
お店から送られてきた売上票を確認して、カード会社は代金をお店に振り込みます。このとき、いわゆる加盟店手数料が差し引かれます。ですから、お店に入金されるのはお客さんが支払った代金全額ではなく、一部はカード会社の手取りになるわけです。
カード会社から代金の請求書が届く
カード会社は、1カ月分をまとめてカード会員に請求します。カードの種類や設定、利用日のタイミングによって異なりますが、一括払いの場合はお買い物をした翌月から翌々月に請求が届きます。そして、あらかじめ設定した引き落とし日に、会員の口座から代金がまとめて引き落とされます。
こうしてみると、カード払いをした代金はまずカード会社がお店に支払い、その後に会員の銀行口座からカード会社に振り替えられていることがわかります。つまりカード払いは立て替え払いのひとつであり、カード会社に一時的にお金を借りているのと同じなのです。
カード会社・お店・消費者のメリットは?
モノやサービスを売ってお金を得るしくみは、本来ならばお店と消費者の2者でも成立します。しかし、わざわざクレジットカードで払うことによって3者の取り引きにするのは、それぞれにメリットがあるためです。
カード会社のメリット
カード会社は、お店でモノを買った消費者に代わって、速やかに代金を立て替え払いします。その代わりに、販売代金の一部を「加盟店手数料」として徴収します。これがカード会社の利益になります。
ですから、より多くの加盟店がカード払いに対応し、より多くの消費者がカード払いをすれば、カード会社の利益は上がるしくみになっています。
お店のメリット
お客さんがお店に来たとき、現金を持ち合わせていなければ買わずに帰ってしまう恐れがありますが、カード払いに対応していれば買ってくれるかもしれません。また、高額の商品を買ってもらえるチャンスも広がります。カード払いに対応することで、お店の売り上げが上がることが期待できます。
その反面、お店はカード会社に加盟店手数料を支払わねばなりません。このため、一部のお店では「3,000円以上のお買い上げ」など、カード払いをできる条件を設けていることもあります。
消費者のメリット
カード払いをすれば、その場で現金を持ち合わせていなくてもお買い物ができます。また、代金の支払いは翌月以降の引き落としまで猶予されます。さらに、ほとんどのクレジットカードはお買い物代金に応じたポイントがつきます。
それぞれにこれらのメリットがあるため、クレジットカードは日本だけでなく世界各国で普及しているわけです。
使い慣れていると、カードのしくみについて考えることはないかもしれません。ですが、改めて知っておくと、お買い物でサインをするとき、控えをもらうとき、引き落としがされるときなど、お金がどんな風に動いているのか、よりイメージがわくのではないでしょうか。
※写真と本文は関係ありません
加藤梨里
ファイナンシャルプランナー(CFP(R)認定者)、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員
保険会社、信託銀行を経て、ファイナンシャルプランナー会社にてマネーのご相談、セミナー講師などを経験。2014年に独立し「マネーステップオフィス」を設立。専門は保険、ライフプラン、節約、資産運用など。大学では健康増進について研究活動を行っており、認知症予防、介護予防の観点からのライフプランの考え方、健康管理を兼ねた家計管理、健康経営に関わるコンサルティングも行う。