2018年に発表されたエアコンのトレンドともいえるのが「AI(人工知能)」と「清潔性」。メーカーによって細かな機能は異なるものの、各社さまざまなAI機能や清潔性に優れたエアコンを市場に投入しました。富士通ゼネラルが2018年12月に発表した「ノクリア」シリーズ最上位モデル「ノクリアX」も、この2つのキーワードを意識した新機能を備えています。2019年1月17日、18日には、これらの機能を説明するプレスツアーが開催されました。

  • ノクリアX

    会場に展示されていた2019年モデルのnocria(ノクリア)X

ユーザーの好む温度をAIが分析

ノクリアXはWi-Fiに対応し、「エッジ&クラウドAI」を搭載。エッジとは家庭内にあるエアコン本体で、クラウドはインターネット上のサービスのこと。つまりエッジ&クラウドAIとは、エアコン本体のAIと、インターネット上のAIが連携して機能するものです。富士通ゼネラルによると、エッジAIは素早い判断に優れており、クラウドAIはエッジから受け取った家庭内のデータや天気予報データなど、大量のデータを処理するのに向いているといいます。

エッジ&クラウドAIは、部屋の環境に合わせたエアコン制御を行います。部屋の温度や湿度に対して、ユーザーがどうリモコン操作したかを学習し、AIが「ユーザーの好む温熱環境」を予測するのです。たとえば、「夏の夕方は食事準備中だけ、冷房設定温度を通常より2度下げる」といった操作を繰り返していた場合、いつも夕食を支度している時間になると自動的に温度を下げてくれるのです。データが溜まるほど行動パターンの学習精度が高くなるため、使い続けるほどにリモコン操作が必要なくなっていきます。

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    AIを使用した機能のひとつ「体感温度予測」。エアコンがユーザーの好みを学習することで、リモコンを操作する回数を減らします

生活学習のほかにも、インターネット上の天気予報などを参照して、AIがエアコンの運転を提案する機能も搭載。たとえば、天気予報から「明日の朝は冷える」「会社から帰ってくるころに暑くなる」といった情報を収集し、アプリにタイマー運転の提案を送信します。また、AIがエアコンを設置した部屋の住宅性能(断熱性能の違いによる暖まりやすさや冷えやすさ)を学習するので、タイマー運転時も最適な運転制御をすることが可能。帰宅時間ちょうどに部屋が快適な温度になるので、省エネ性も高くなっています。

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    AIを利用したもうひとつの機能が「立ち上げ予測」。天気予報と連携して、設定時間ちょうどに最適な温度になるよう運転制御します。快適性と省エネ性を両立しました

「55度」でカビや菌を撃退!

AIとともに注目されているエアコンのキーワードが「清潔性」です。ノクリアXは、熱交換器を加熱することで除菌する「熱交換器加熱除菌」機能を搭載しています。

熱交換器とは室内機にある、スリット状に細かく配置したアルミ製パーツのこと。暖房時はこのアルミパーツを熱し、熱くなったアルミの隙間から風を送ることで部屋を暖めます。冷房時は、熱交換器が冷たくなることで冷風を送れるのです。

ただし、効率良く風の温度をコントロールするため、熱交換器のスリットは非常に細かく設計されています。このため、ホコリが入りこんでもスリットの掃除は困難なうえ、温度変化による結露で濡れることも多く、カビが発生しやすいといわれています。

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    会場に展示されていたエアコンのデモ機。真ん中に見えている金属製のギザギザが熱交換器です。アルミを細かく並べているので、掃除が難しいパーツ

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    熱交換器の細かな隙間に「表面張力現象」で結露の水が溜まります(表面張力とは、水分子が互いに引っ張り合うことで、表面積をできるだけ小さくしようとする現象のこと)。会場ではストローを使った表面張力現象のデモも。ストローで吸った水を勢いよくコップに落としても、ストローには少し水が残ってしまいます。これは水滴にかかる重力と、水が小さくなろうとする表面張力が等しくなるために起こる現象です。エアコンでは、この少量の水にカビや菌が発生。熱交換器が乾くと一時的に菌の活動が弱まりますが、濡れると活動が活発になる菌もあるので、熱での除菌が重要なのです

熱交換器加熱除菌は、10分という短時間で熱交換器を一気に55度以上に加熱し、熱交換器に発生した結露を「熱めのお湯」にすることで、カビや菌を抑制します。人間は乾燥したサウナ室なら、室温が90度でも耐えられます。が、55度のお風呂には入れません。同じように、乾燥した状態で熱交換器を加熱するより、液体があるうちに加熱したほうが微生物のタンパク質を破壊できるのです。

他社のエアコンでも、50度くらいまで熱交換器を加熱する製品はありますが、50度ではカビや菌のタンパク質を破壊できないそうです。

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    会場では「熱交換器加熱除菌」を行うデモ機もありました。サーモグラフィーカメラを使って、リアルタイムに温度が変化する様子を確認できます。写真ではちょうど55度になっています

触らず使える、スタイリッシュなリモコン

新モデルはリモコンのデザインも大きく変わりました。板状の握って使用するタイプから、円柱状の置き型タイプに変更。最大の特徴は、リモコンの上で手を往復させるだけで、触らなくてもエアコンを起動させられることです。たとえば料理中で手がべたべたの状態でも、リモコンを汚さずサッとエアコンを起動できます。リモコン上部はタッチパネル液晶になっており、運転モードや設定温度の変更などは画面をタッチして変更します。

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    一見すると時計のようなデザインのリモコン。有機ELディスプレイのため、暗い場所での視認性もよさそうです

リモコンのディスプレイに向かって手をふると、エアコンのオンオフができます

温度設定やモード変更はタッチ操作で行います

このリモコンのもうひとつの魅力が、Bluetoothでエアコン本体と接続していること。一般的な赤外線リモコンと違って、送信部をエアコンに向ける必要がありません。もちろん、エアコンとリモコンの間に障害物があっても、エアコンを操作可能です。

ノクリアXはスマートフォンのアプリから遠隔操作が行えるほか、音声アシスタント「Google Assistant」と「Amazon Alexa」にも対応しています。スマートスピーカーから、エアコンの起動や温度変更などを音声で指示することも可能です。

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    会場には音声操作ができる体験ブースも。会場にはGoogle Assistant対応のテレビ「BRAVIA」(ソニー)が用意されており、テレビに話しかけることでエアコンや照明、ロボット掃除機などの操作ができました

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    テレビに話しかけて家電を操作するのは、とっても未来的!

ちなみにノクリアシリーズといえば、本体横についた2基のファンで、温度と速さの違う2種類の風を放出する「デュアルブラスター」も人気。今回のプレスツアーでは、このデュアルブラスターを使った気流の動きを確認できるデモンストレーションも用意されていました。

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    デュアルブラスターあり(写真左)となし(写真右)で部屋の空気の動きを確認。デュアルブラスターによって、部屋の隅まで風が届いているのがわかります