作家の真藤順丈氏が16日、小説『宝島』で第160回直木賞を受賞し、同日、都内のホテルで会見に臨んだ。
米軍施政下の沖縄で熱く生き抜いた若者たちを描いた同作。真藤氏は東京都出身だが、「沖縄の人間ではない自分が書くという葛藤自体は何度も繰り返しましたし、途中書けなくなった時期はそういう自問自答にぶつかっていた」と振り返りながら、「沖縄の問題は現代日本の一番複雑な問題でもありますし、センシティブすぎて(書くのを)やめておこうかなと腰が引けてしまい、結局腫れ物に触る扱いをするということは、潜在的な差別感情が起きているのと同じことじゃないかと思いまして」と、執筆を完走した背景を明かした。
今作は7年前に構想を立ち上げ、執筆は3~4年を費やしたそうで、「まぁつらかったですね」と本音を漏らす場面も。それだけに、「沖縄の戦後史は多くの人に知ってもらいたかったとうのもあるし、本当に豊穣な物語がある大きな器だと思うので、僕は沖縄について書かれるものはもっともっといっぱい出てきていいと思うんです。批判とか、沖縄の人が違和感を持つとか、そういう意見がもしも出てきたら、僕は矢面に立って議論の場に出て行こうという覚悟を決めるまでにわりと逡巡があったという感じですね」と、具体的な葛藤について語った。
今回は、候補にあがってから「長いドラムロールを聞いているよう」だったといい、「今日はそれが一際うるさかったです」と、受賞を待つ心境を吐露した真藤氏。最後に「我々日本人が沖縄の問題を考えるときの一助になればいいなと思いますので、ぜひ読んでいただければと思います」と呼びかけた。
同会場では、W受賞となった芥川賞の上田岳弘氏(『ニムロッド』)と、町屋良平氏(『1R1分34秒』)も会見に登場。受賞の心境を、上田氏は「良かったです。良かったです」と繰り返し、町屋氏は「緊張してるので、なかなか訳がわからない状況というのが正直なところです」と、それぞれ語った。