CESでのレノボは全方位での守りで死角のないグローバルベンダーとしてのビジネスをアピールした。だが、ここラスベガスでは、レノボはアメリカの企業だ。あのトランプ大統領でさえ、米国出自だと思い込んでいるかもしれないくらいにThinkPadブランドの価値を究極的なところまで引き上げてきた同社だが、その戦略にはますます磨きがかかっている。
ハードウェアメーカーとしの立場をアピール
レノボはハードウェアカンパニーであると同社はいいきる。Microsoft、Googleなどと協業しつつ、スマートAIでは、Cortana、Alexa、Googleアシスタントの全部にコミットする立場に徹する。
デバイス、ワークプレース、スマートビジネスなどをよりスマートで、より効率的なものにするためのビジネスを、パーソナライズコンピューティングソリューションで実現しようというのが同社のビジョンだ。
そのために必要なものは、Chrome Bookからワークステーションまで何でも徹底してそろえる。
今回のCESでは、第7世代ThinkPad X1 Carbonと第4世代ThinkPad X1 Yogaが発表されたが、ユーザーがThinkPadに望むであろうさまざまな要素を裏切ることなく踏襲する。
新製品にはある意味で保守的な印象も感じるくらいだが、ThinkPadが歩み続けてきた26年間を考えれば、斬新な変革を伴わないなかに、シンプルで説得力のあるイノベーションを模索しているのだろうということがよくわかる。
こうして、レノボはThinkPadで職場のトランスフォーメーションを推進し、世界中の人々の働き方を変えていこうという姿勢を強く打ち出している。
貪欲に変わろうとするYOGAブランド
一方、コンシューマー路線については、ITとエンドユーザーについて言及。いまの子どもはテクノロジーといっしょに育つのだということを強調する。
CESで発表されたYOGA S940は、デザイン性を高めるためのContour Glassを搭載した最初のラップトップだ。また、YOGA A940はオールインワンPCとして、Precision Dialやフォンチャージングパッドを装備し、使い勝手を高めている。
これらの目新しい部分が、コンシューマーへの提案として強く打ち出されている。変えられないThinkPadと貪欲に変わろうとするコンシューマーカテゴリの製品の性格の違いだ。
ThinkPadと同様に、コンシューマー向けブランドとしてのYOGAの位置付けを確固たるものにするべく訴求に余念がない。
ゲーミングやスマートデバイスでもスキなく製品を投入
ゲーミングPCの「LEGION」ブランドも同様だ。eSports向けの製品としてこの1年間で37%と驚異的な伸びを示すレノボのゲーミングPCだが、キューブとタワー、そしてノートと、こちらも全方位を固めている。
そして、PC以外では、Googleアシスタントを実装したスマートクロックと、Amazon Alexaを実装したスマートタブも登場した。家庭の中で使われることを想定したセミパーソナルなデバイスだ。
いわゆるアンビエントコンピューターとして、家庭の中に置かれ、直接的に操作することなく、対話で使えるコンピュータとしてのスマートスピーカーは、単に音声のみならず、音声と同時にビジュアル情報も提供するようになってきているのがトレンドだが、それをレノボが形にするとこうなるという製品だ。
特に、スマートタブはおもしろいアプローチだ。一般的なAndroidタブレットを充電ステーションに装着するとビジュアルでも情報を表示するアマゾンAlexaデバイス、ちょうど、Echo Showのようなデバイスになる。
最初は、充電ステーションそのものがスピーカーになっているのかと思いきや、そうではなかった。AndroidタブレットにAlexaが統合されているという不思議なイメージのデバイスに仕上がっている。
同時にGoogleアシスタントが使えるスマートクロックもきちんと出す。発表会などでは絶対に同席しないであろうGoogleとAmazonの担当者を個別に挨拶させ、両方に対して積極的にコミットしていることを強調するなど、とにかくレノボは、あらゆる方向に対してスキがないビジネスを成立させるのだという意気込みが感じられる。
少なくとも、ここラスベガスにおいてはレノボはアメリカンなハードウェアメーカーだ。いまの時代、その姿勢を見せることが重要だ。ハードウェアメーカーに徹することで、オーバー・ザ・トップ、いわゆるGAFAには逆らわない姿勢を示す。それが、今回のCESでみたレノボだった。