電子書籍をより多くの人に親しんでもらうべく、はじまったこの連載。最終回は、電子書籍の未来についてです。これから電子書籍はどんな形に進化していくのか、私なりに予測してみました。
電子書籍の市場、15年間で224倍に
2002年、電子書籍の売り上げはだった10億円でした。それが2017年には、2,241億円に。15年で売り上げが224倍にもなったのです。そのうち、コミックス(単行本)が82.3%ものシェアを誇り、2017年度は電子コミックス(単行本)の売り上げが、はじめて紙のコミックス(単行本)の売り上げを上回りました。5年後の2022年には、電子書籍の市場が3,150億円規模になるだろうと予測されています(インプレス総合研究所調べ)。
これからも電子書籍市場が伸びるだろうと予測する人もいれば、伸びが鈍化してきているので、このあたりが限界だろうという人もいます。私は、まだまだ電子書籍の市場は伸びると考えています。コミックス以外のジャンルに伸びしろがあるからです。なかでも個人出版が日本では、まだ目立っていません。
アメリカでは近年、プロの作家でない人がセルフパブリッシングで電子書籍を販売し、ベストセラーになるケースが多くあります。出版社を通さない、いわゆる「インディーズ」と呼ばれるジャンルですが、日本ではまだまだ発展途上。ツイッターで話題になった書き込みが書籍になった事例はあっても、もともとインディーズで電子書籍として出されたものがヒットした事例はほとんど見られないからです。
マンガや小説を誰でもアップロードできる投稿サイト「Pixiv」では、アマチュアが投稿するマンガが話題となり、出版社から書籍化されています。また、小説投稿サイト「小説家になろう」などにアップロードされた小説も、続々と書籍化されています。2004年ごろブームとなったケータイ小説もそうですが、日本では投稿サイトから読者の口コミが広がり、そこに出版社が目を付け、作品がヒットするパターンが多い気がします。
今後は出版社を通さず、個人がセルフパブリッシングした電子書籍からも、話題作が出てくるのではないでしょうか。電子書籍をインディーズで出版したことにより、チャンスを得る人も増えてくるでしょう。マイナビニュースでこの連載がはじまったのも、私がセルフパブリッシングで『無料も読み放題も! 使いこなせる電子書籍生活』を配信したことがきっかけでした。自分が好きなこと、考えていることを自ら発信することが、これからの時代さらに重要となっていくはずです。
縦読み、横読みはお好みで?
本の読み方にも大きな変化が起きています。ケータイ小説やオンライン小説の発達により、小説は縦書きだけではなく、横書きでも読まれるようになりました。今まで横読みが当たり前だったマンガも、スマホの普及によって縦スクロールで読むものが登場しています。今後は電子書籍も気分に合わせて縦で読んだり、横で読んだりする人が増えるかもしれません。
日本語の電子書籍を読んでいるのは、日本人だけではありません。日本語を勉強している外国人も、電子書籍を利用することが多いと聞きました。私が電子で出版した書籍がヨーロッパで購入され、驚いたことがあります(海外在住の日本人が購入したのだとしても、そんな遠くから購入してもらえて嬉しく思います)。物流が必要ない電子書籍は国境を越え、多くの人に読んでもらえるのが魅力。自動翻訳技術が進めば、世界中のあらゆるコンテンツを翻訳というタイムラグなしで、世界中の人が楽しめるようになるかもしれません。
ケータイでポチポチしてた時代から10年あまり
スマホではなく、ケータイ電話が一般的だった2,000年初頭、電子書籍はケータイの画面に100文字くらいしか表示できなかったし、電子マンガは1コマごとにボタンをカチカチと押して読み進めていました。それがスマホや電子書籍リーダーといったデバイスの発達により、当時から想像もできないほど便利に電子書籍を読めるようになりました。たった10年ちょっとの出来事です。これから10年後、電子書籍がどうなるかは想像もつきませんが、ますます便利になることは間違いなし。電子書籍で日々の生活を充実させたいところです。
■著者プロフィール : 内藤みか
山梨県出身・慶應義塾大学文学部卒(通信課程)・日本文芸家クラブ理事。著書80冊以上。2000年代にケータイ小説サイトでランキング1位を連発し、ケータイ小説の女王という異名を取る。脚本を担当したラジオドラマ『婚活バスは、ふるさとへ』(YBS)が文化庁芸術祭優秀賞受賞。『夢をかなえるツイッター』などSNS系への関心も強い。
近著は『数学しかできない息子が早慶国立大学に合格した話』(ぶんか社)、『無料も読み放題も! 使いこなせる電子書籍生活』など。