2018年12月29日、東京・秋葉原にあるアキバ・スクエアにて、「モンスターストライク プロフェッショナルズ 2018 トーナメントツアー(モンストプロツアー)」のファイナルが開催された。ツアーは、10月13日の東京を皮切りに、仙台、大阪、福岡、名古屋で行われ、『モンスターストライク(モンスト)』のプロ8チームのなかから、予選のタイムアタックポイントとトーナメントの順位ポイントを合わせたポイントの合計数が多い上位4チームがファイナルに進出する。
大会ではスマホアプリ『モンスターストライク スタジアム』を使用。4人1チーム制で、プレイヤーは順番に自分のモンスターをボスモンスターにぶつけて倒していき、相手とステージクリアの時間を競う。
王者・壁ドンズとツアー後半に追い上げたGVが激突
今回、ファイナルに進出したのは、東京会場、仙台会場で連勝した今池壁ドンズα、名古屋会場で優勝したGV、大阪会場で優勝したアラブルズ、福岡会場で優勝したはなっぷの4チーム。ツアー序盤は、7月に行われた「XFLAG PARK」内のモンストグランプリで優勝した今池壁ドンズαが、その実力を遺憾なく発揮し、圧倒的な強さで連勝を決めた。
だが、ツアーが進むにつれ、ほかのチームが対策と練習を重ね、ポイントの差をジワジワと縮めてくる。特に2位通過となったGVは、最終的に今池壁ドンズαと10pt差の102ptと、高ポイントを獲得(大会ごとに、タイムアタックでは1~8pt、トーナメントの順位では4~30ptが付与される)。会場ごとの順位も2位2回、3位1回と抜群の安定感を見せた。
ファイナルは変則トーナメント方式。まずは1位通過の今池壁ドンズαと、2位通過のGVが対戦し、勝った方が決勝に進出する。その敗者は、3位通過のアラブルズと4位通過のはなっぷの勝者と対戦し、そこで勝利したチームが決勝に進出するというものだ。決勝以外は3戦2先勝ち抜けのBO3方式で、決勝のみ5戦3先勝ち抜けのBO5方式で行われた。
さらに通過順位上位チームは、ステージの選択権(ステージごとにギミックや登場するボスキャラが異なる)か、ピックの(先攻・後攻)選択権(試合では同じキャラクターを使用することができないので順番に取り合う。1、4、5、7枚目を先攻が、2、3、6、8枚目を後攻が選択する)のどちらかが与えられる。変則トーナメント方式と書いてはいるが、これまでのツアーの結果を尊重したうえで、下位チームにも十分なチャンスがあるバランスのとれたルール設定と言えるだろう。
初戦となった今池壁ドンズαとGVの対戦では、上位通過の今池壁ドンズαがステージ選択権を選び、得意の「冥黒の女王」ステージを指定するも敗北。しかしながら自力を見せつけ、2戦目、3戦目を連取し、決勝へ駒を進めた。
2試合目は3位アラブルズと、4位はなっぷの一戦。この2チームは、モンストグランプリ、モンストプロツアー通じて1度も対戦をしたことのない組み合わせだ。こちらも通過順位通りの結果となり、アラブルズがはなっぷを下した。
3試合目は、初戦を勝ち上がったアラブルズと敗者復活を狙うGVとの対戦だ。これまでの戦績ではGVがアラブルズに2戦2勝しており、順位的にもGVが優位。実際の対戦も波乱はなく、GVが2連勝し、相性の良さをみせた。
その結果、決勝は初戦と同じく、今池壁ドンズα対GVというカードとなった。
決勝戦は、BO5になるだけでなく、ステージ選択がなくなり、「翠緑の生命体」「水駆ける天叢雲の皇子」「冥黒の女王」「天地開闢の始神」「妖光の狐少女」というステージの順番で行われる。通過順位上位の今池壁ドンズαには、ピック選択権が与えられた。
1本目は今池壁ドンズα、2本目はGVと初戦と同様に両チーム一歩も引かぬ熱戦となったが、3本目の「冥黒の女王」ステージでリベンジとばかりに今池壁ドンズαが奪取し、リーチをかけると、その勢いのまま4本目も取り、モンストプロツアーの初優勝を決めた。
他チームの成長スピードに王者もヒヤリ
表彰式では優勝トロフィーと盾、そして優勝賞金1000万円が授与された。直後には優勝者チームインタビューも行われたので、その様子も合わせてお伝えする。
――優勝おめでとうございます! 圧勝にも見えましたが苦戦したところはありましたか。
なんとかキララEL選手(以下、キララ):今日は本当に熱量の多い大会で、僕らもほかのチームも、いつもやらないようなミスが多かったですね。お互いいつも通りできていなかったので、相手のスキをついてパッと倒してしまおうと思い、それが結果的にうまくいきました。でも、やはり自分たちがやりたいことができていないというのは変わらないので、そこが一番苦戦したところですね。
――モンストプロツアーの初戦に比べて、チームもお客さんもかなり雰囲気が変わってきた感じがしました。自分たちのチームやほかのチームの変化は感じられましたか。
キララ:初戦の東京大会では僕らが勝利したのですが、お客さんの盛り上げ方に関して「プロと呼べるのは自分たちだけじゃん」と内心思ってました。あ、ほかのチームには内緒ですよ(笑)。で、2戦目の仙台大会が終わってから、次の大阪大会まで1カ月の期間が空いたんですね。その間に海外の大会とかもあったのですが、その1カ月間で、ほかのチームもプロ意識が目覚めてきたような感じがして。ピックの選び方だったり、戦い方だったり、お客さんとの接し方だったり。それを見たとき、「おお、なんかプロっぽい」って思いました。自分たちのチームもその間にうまくなっている自覚はあったんですけど、ほかのチームの伸び方がすごくて。正直、決勝直前も不安はありました。
pkrn選手(以下、pkrn):僕も同じ印象ですね。回を追うごとにプロとしての気持ちの持っていき方が変わってきたなと感じました。
そふぁ。選手(以下、そふぁ):モンストグランプリとか、いままでの大会って一発勝負だったじゃないですか。プロツアーでは同じステージを何度も何度もやっていくので、各チームのカラーが出てくるようになりましたね。このチームはこういう勝ち方をする、このチームはこういうピックをするといったように。そのあたりは「刺さると負ける」と脅威に感じました。福岡では実際負けましたし。
べーこん選手(以下、べーこん):そうですね。作戦を決めるときに相手の想定をするんですけど、それを超えてきている感じですね。今回は結果的に僕らが勝ちましたが、この大会は王者としてではなく、挑戦者のつもりでやってきました。
――今日の試合で一番印象に残ったシーンはなんでしょうか。
べーこん:3点バンカーと、ユミルの上に入ったやつとか、pkrnが本当によく決めてくれました。
そふぁ:最後の試合のSS(ストライクショット)とか、翠緑のフィニッシュのショットとか、あれって練習していたショットではなかったんですよね。あの場で判断して、しかも勝敗が決まるところで決めたのはすごいなって思いました。
キララ:本当に今回はやりたいことができてなかったんですけど、イレギュラーからのリカバリーができていたなと思います。
――プロツアーが行われていた3カ月は、どんな時間だったのでしょうか。
べーこん:モチベーションを維持するのが本当に大変でした。
キララ:例えば自分たちが「これが良い!」と戦略を決めたとして。でも、それに対して、「こっちの方が良いんじゃない?」とか「こっちの方が早いよ」ってなってくるわけですよ。で、結局パーティが1転、2転、3転、4転して、酷いときは11転くらいするんです。やっぱり「これじゃない」ってなって、気がついたら「これって2カ月前に通った道じゃん」ってなったりして。まあ、そのこと自体は大変なんですけど、正直楽しくなってきていますね(笑)。
そふぁ:負けたときの反省が辛かったですね。ミスをしたのか、作戦が悪かったのか、それを考えるのが辛かった。
――今回、1位の今池壁ドンズαと2位のGVはどちらも中部地区の代表チームですが、中部地区が『モンスト』に強いというのは何か理由があると思いますか。
キララ:味噌じゃないですかね。赤味噌ですね。
(一同笑い)
――では、来年あたり今池壁ドンズαが赤味噌のCMキャラクターになっているかもしれませんね。
キララ:なるかもしれませんね。味噌メーカーがスポンサーに付いてくれるかもしれません。でも、僕らを見て『モンスト』を始めてくれた人もいるんですよ。アラブルズのKEVIN選手なんかは、僕らをみて大会出るぞってなったみたいです。
――今年はグランプリとプロツアーを優勝して、ほかのチームはより一層「打倒今池壁ドンズα」に燃えるとみられますが、いかがでしょうか。
キララ:2年前からそうなので。でも、べーこんが言った通り、自分たちは挑戦者だという気持ちを持って、来年のプロツアーのファイナルに出場したいです。
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2018年の『モンスト』のeスポーツシーンは今池壁ドンズαで始まり、今池壁ドンズαで終わった1年となった。しかし、ほかの7チームのプロチームも着実に力をつけてきている。
また、元M4(モンストうまい4人組)で解説を担当したS嶋氏が、最後の総括で、明言は避けつつも、新戦力の参入もほのめかしていたことからも、2019年はさらなる混戦、熱戦に期待できそうだ。1月26・27日の「闘会議2019」では、ジュニア大会の開催も予定されているので、そちらも目が離せない。
(岡安学)