外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年11月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ユーロ/円 12月の推移】
12月のユーロ/円相場は125.406~129.251円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.2%の下落(ユーロ安・円高)となった。仏・独・ユーロ圏12月製造業/サービス業PMIの悪化(14日)などで、欧州景気の先行きに懸念が広がった。
もっとも、12月のユーロはイタリア財政問題の収束などもあって対ドルでは上昇した。ユーロ/円の下落は、ユーロ安よりも円高の要素が大きかったという事になる。
世界的な景気減速を懸念する形で世界の株式市場が軟調に推移する中、下旬に入るとリスク回避の円買いが強まった。ドル/円相場が110円台を割り込むなど円が全面高となった31日には、ユーロ/円も125.406円まで下落して8月以来の安値を付けた。
【ユーロ/円1月の見通し】
2018年12月のユーロ相場は、イタリア財政問題の収束など政治面の不安がひとまず後退した半面、域内景気の先行きに減速懸念が広がるなど、強弱材料が入り混じる形で方向感が出なかった。対円では昨年末から下落基調となり、1月3日の暴落で120円台を割り込むなど、リスク回避の円買い主導で下値を模索する展開となっている。ユーロ/円相場のさしあたっての焦点は、年末年始に不安定さが増した世界の株式市場の動向という事になるだろう。株安の連鎖が続くようなら再び120円割れを目指す可能性がある一方、過度な悲観論が後退すれば、12月半ばまでもみ合いを続けていた128-129円台への反発も見込めよう。その他、英国の欧州連合(EU)離脱=Brexit問題もユーロ相場にとって重要な手掛り材料となろう。メイ英首相は、1月14日の週に離脱協定案の議会採決を実施する方針を示している。仮に否決されれば、「無秩序離脱」の可能性が高まるため、ユーロにも下落圧力がかかる公算だ。ユーロ/円相場は1月も、外的要因に振り回される展開となりそうだ。
【1月のユーロ圏注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya