30代になって、年齢からしても、収入から見ても、周囲の同年代と比較しても、何とかやっていけそうと思って「そろそろ住まいが欲しい!」と考え始めている方々も多いと思います。同時に果たして本当にそうなのかと不安な気持ちもあるのではないかと思います。

  • 新年,住宅購入

    今年こそ住宅購入!

どうすれば確実に大丈夫と思えるのか、安心して住まいを取得するにはどうすけばよいのか、何からスタートすればよいかなどを考えてみましょう。

住宅取得は両刃の刃

家賃を生涯支払い続けなければならないことに比べて、ローンの完済後は自分のものになる住まいの取得はそれなりに今後起きるかもしれない人生上のリスクを軽減してくれる可能性があります。一方預貯金をはたいて多大なローンを組むことになりますので、計画を間違えれば、一挙に破たんに向かってしまう危険性もあります。

安心して住まいを取得するためには、住まいの取得は両刃の刃であることを念頭に、綿密な計画を立てるのが何よりも大切です。

最初にライフプランニングシートを作ろう

ライフプランニングシートは生涯収支表とも言い、現在から自分たちの平均寿命までの年数の収支と支出と預金残高の経年変化を想定して記録するものです。

教育費や住宅ローンの返済など大きな支出が重なるときは、預金残高が少なくなり、自分たちの家計が危機となる時期です。

生涯収支表で先々の自分たちの弱点がわかれば、それまでの年数を通じて改善していけばよいので、事前に対策が取れます。

住まいの取得も、いつ、どの程度の費用をかけるのが適切か、借入期間はどのくらいが自分たちに適しているか、頭金を多くした方がよいのか、預貯金として残しておいた方がよいのかなども判断できます。

それだけでなく、いつどのくらいの生命保険に加入すればよいかなども判断できます。貯金残高が少なくなる時期に働き手に万一のことがあれば、家計に対する影響が大きくなります。その時期の保険金額を多くすればよいので無駄がありません。

そこで役に立つのがライフプランニングシートです。

  • ライフプランニングシートのサンプル (C)佐藤章子

    ライフプランニングシートのサンプル (C)佐藤章子

配偶者や子供がいなくても想定して記入します。教育費などのデータはネットからいろいろ検索できますが、日銀の情報サービス「暮らしと金融なんでもデータ」が便利です。老後の生活費などのデータもあります。

大切なのは家族のイベント欄。「いつ何がしたいか」の人生設計が重要で、「そのためにはその時にいくらしたいか」を考えます。生涯を通じて無理なく計画が遂行できるかをチェックするのが、ライフプランニングシートなのです。

表の2021年を見ると、住宅取得を計画していて、親からの300万円の支援があるから貯蓄はマイナスにはなっていませんが、この年に何かあれば、お金が足りません。そのための対策をあらかじめ講じられれば、その年の住まいの取得は可能となります。

対応する保険に加入する、保険金を増やす、妻がパートに出る時期を1年早める、その間は自宅でできる仕事をする、再就職時期は早めずに正社員の道を模索し収入アップする、もっと節約するなど対策はいろいろあります。万一の場合は親から支援を受けて、妻の再就職後にその分を返済するように、親と話し合っておく方法もあるでしょう。

考えられる問題点を列挙し、対策を想定しておく

私が昔、住まいを取得する際に検討した点を例にすると、何かしらの理由でローンの返済が困難になったら、一時的にでも貸して、家賃収入でローン返済が可能かどうかという点です。そのために購入物件周辺の家賃調査をしました。管理費や修繕費の支払いを考えても十分可能と分かり安心しました。私の場合は実家も都内でしたので、避難先はなんとかなるのと、多少の家賃収入も残りそうなのでその点は安心です。駅前なので空室もさほど考えなくても済みそうでした。

また売らざるを得なくなったら、有利な条件で売れるかという点も検討しました。育ってきた希望の地元エリアではなかったのですが、都心に近く駅前、その割に敷地に余力があるという市場性を優先しました。結果的に資産価値は現在も維持していて助かっています。

このように将来のローン返済に対するリスクは、「転勤になったら」「働けなくなったら」「田舎に帰らなければならなくなった」「介護や子供の病気で共働きできなくなった」など、いろいろ考えられます。事前に考えられる自分たちの問題点を列挙して、対策を用意しておきましょう。

頭金を増やすか預貯金を多くするかは別として、リスクを少なくするには、節約して資金をより多く確保することが大切です。リスクを少なくするためには節約で余力を作ることが第一歩です。住宅取得を考え始めたら、マイホームでの暮らしを徹底的に楽しむことを夢見て、そのほかは徹底的に節約しましょう。取得後もマイホームでの暮らしを楽しむことをいろいろ工夫して、そのほかのことは節約して余力を極力蓄えていきましょう。

できれば定期的にライフプランニングシートをチェックして、繰り上げ返済時期や老後の生活資金などの準備に活用してみてください。ライフプランシートを一度でも作ってみると、今の極々わずかの節約が将来の生活水準を劇的に変えることがわかるでしょう。

私も資格を取得したときに一般的な家庭向けのサンプルを作り、支出を少し少なくするだけで、破綻することになっていた家計が、老後も安心な貯蓄高に劇的に変化したのを見て衝撃を受けました。みるみる赤字が消えていく様子は圧巻です。なるほど日々の節約が大切だと心底実感した瞬間でした。

■著者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。