宮藤官九郎のオリジナル脚本によるNHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)が1月6日よりスタート。折しも2020年東京オリンピック・パラリンピックの前年ということで、テーマは近代オリンピックだ。本作で、W主演を務めた中村勘九郎と阿部サダヲを直撃!
『いだてん』は、日本が初参加した1912年のストックホルム五輪から1964年の東京五輪までの知られざる歴史を、ユーモアを交えて描く意欲作。前半を引っ張る中村は、日本でオリンピックに初参加したマラソン選手・金栗四三役を、中盤から主演をバトンタッチする阿部は、1964年の東京オリンピック招致に活躍した田畑政治役を演じる。
――脚本を読んだ感想から聞かせてください。
中村:時空を飛び越えていて、明治から昭和にかけての物語。普通の人が書いたらむちゃくちゃになっちゃうんでしょうけど、宮藤さんの脚本だからそうならない。僕は毎回、台本を読むのが楽しくてしょうがないですし、自分が出ている出ていないに関係なく、おもしろい本だなと思っています。
金栗さんは走ることしか考えてない男です。走ることに一途で、そこは一貫しています。でも、演じていてとても楽しいです。大河の主役って通常は甲冑とかを着るじゃないですか。でも、金栗さんはだいたい体操服とか地味な衣装ばかりです(笑)。
阿部:とにかく役の真っ直ぐさがすごいんです。
中村:阿部さんが演じる田畑さんはセリフ量がすごいです。僕はほとんど走っているだけなんですが、阿部さんは1回分でたぶん僕の24回分くらいしゃべっている感じですよね?
阿部:ヤバイです。金栗さんはマラソンの呼吸法を見つけるけど、田畑さんは呼吸を忘れてしゃべり続けて息切れしてしまう感じです(笑)。
――2020年に東京オリンピック・パラリンピックを迎えますが、本作ではどういう形でオリンピックが描かれていくのですか?
中村:金栗さんは、日本で初めてオリンピックに行った方ですが、環境は今と全然違います。自費で行かなければいけないし、本当に大変です。史実と同じく、ドラマでも大惨敗してしまうんですが、お金の大変さや、オリンピックへのプレッシャーなどを感じ、走り終わったあとに、本当に悔しいなと思いました。僕は、今までスポーツとかをあまりやっていなかったのに、そう思いました。役者って勝ち負けがないので、負ける悔しさがわからなかったけど、今回本当に悔しかったです。
今の時代の選手はいろいろなサポートが受けられるけど、その分、プレッシャーも相当だと思いました。金栗さんの時代は、新聞くらいしかメディアがなかったんですが、今は練習の時から追いかけられたりしますよね。その精神で戦って、勝っても負けても糧にしている。すごいと思います。このドラマに出て、スポーツの見方が変わりました。
阿部:今まではこれから東京の町ができあがっていくシーンを撮っていました。首都高速とか道などを作っている最中の東京をCGやオープンセットで撮影しているんですが、そういう昭和のものを作っている段階でワクワクします。僕たちはできあがったものを知っているので。そのために渋滞なども起きるんですが、楽しみですね。
――演じた役柄に共感する点や共通点などはありましたか?
中村:金栗さんはとてもピュアな人。かわいい奥さんと結婚するんですが、それでも走ること、マラソンのことしか考えていないんです。「大丈夫かな!?金栗さん」と思うこともあり、そこは共感しません(笑)。もちろん奥さんのことを大事にはしているのですが……。でも、憧れる部分はあります。これだけ1つのことに情熱を注げられたらいいなという思いで演じています。
阿部:せっかちなところです。僕もせっかちなので、歩くのが早かったり、コース料理が苦手だったりするところがあるので、そういうところが似ているのではないかと。意表をついたところもあり、タバコを逆に吸っちゃうようなシーンもあります。
――これまで出会ったなかで、印象に残っている“師”について教えてください。
中村:僕にとっては父ですね。すべて教わったので。金栗さんにとっては、そういう存在が(役所広司さん演じる)嘉納治五郎先生だったのかなと。きっとお父さんみたいな気持ちもあれば、憧れもあっただろうし。崇拝するってことはこういう気持ちなのかなと思いました。
阿部:僕は、松尾スズキさんですね。たくさん教えていただいた方なので。でも、お父さんって言えるのはいいなあ。
――『いだてん』は、型にはまらない新しい大河ドラマになりそうですね。なにかこれまでの大河ドラマを変えたいという思いはありますか?
阿部:これまでの大河は、そんなにガハガハ笑って観ていた印象がなかったので、今回は笑って観ていただきたいとは思っています。まだ、プールもなく、ふんどしで泳いでいた時代の話です。今はかっこいい水着でやっていますが。そこをぜひ。
中村:きっと共感してくださると思います。0から自分で練習法を作っていった人の話です。金栗さんはストックホルムで大惨敗したあと、まず日本へ帰ってからやったことは、立山の海岸で暑さに耐えひたすら走り続けることでした。そんな練習法は絶対にやっちゃダメなのに。歴史もスポーツも入った大河ドラマですが、一生懸命やっている人たちだからこそ笑える、必死でやっている姿が笑えると思います。
中村勘九郎(なかむら・かんくろう)
1981年10月31日生まれ、東京都出身の歌舞伎俳優。屋号は中村屋。歌舞伎名跡「中村勘九郎」の当代。2012、年新橋演舞場『土蜘』僧智籌実は土蜘の精、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精などで六代目中村勘九郎を襲名。歌舞伎の舞台公演以外にも映画、テレビ、現代劇などでも活躍。映画の近作は『銀魂』(17)や『銀魂2 掟は破るためにこそある』(18)
阿部サダヲ(あべ・サダヲ)
1970年4月23日生まれ、千葉県出身の俳優、歌手。劇団「大人計画」所属。パンクコントバンド「グループ魂」のボーカルの“破壊”としても活動。2007年、『舞妓Haaaan!!!』で映画初主演し、第31回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。2010年のNHKドラマ『離婚同居』で連続ドラマ初主演。映画の近作は『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(18)
(C)NHK