展示会、みんなで出れば安上がり

JA2018をJA2016と比較すると、会場の規模が小さくなった。その分だけ相対的に目立ったのかもしれないが、目に付いたのが「クラスタ出展」である。これは、個々の企業による単独出展ではなく、国あるいは地域単位でまとめてスペースを確保して出展を行う形態。

日本からは都道府県単位で「我が地域の航空宇宙関連サプライヤー」が出てきていたし、海外だと国別ということになる。これはJA2018に限ったことではなくて、逆に海外の展示会で「日本パビリオン」と題して日本企業がまとまって出展していた事例もある。

これは主として、規模が小さいサプライヤーが「お見合い」の機会創出を狙う場である。規模の小さな企業にとっては出展料の負担がバカにならないが、まとめて出れば敷居が下がる。航空関連のメーカーが多い地域というと、愛知県をはじめとする東海地域を真っ先に思い浮かべるが、それ以外の地域からもいろいろな出展があった。

  • 日本各地の都道府県を単位として「クラスタ出展」を行っている場面が目に付いた

謎なのは台湾勢で、JA2016でもJA2018でも、かなり広いスペースを確保して熱心に展示を行っていた。地対地ロケットの多連装発射機にしろ超音速の対艦ミサイルにしろ、日本で買い手が付くようには思えないのだが「技術力をアピールするためのシンボル」ということだろうか。

  • JA2016に続いてJA2018にも登場した、台湾製の対艦ミサイル。上が超音速の「雄風III」、下が亜音速の「雄風II」

展示会に合わせて発表を

大きな展示会があれば、当然ながら見に来る人が多いし、報道陣も集まる。すると、展示会は展示の場というだけでなく、発表の場にもなる。

わかりやすいのは、それぞれイギリスとフランスで隔年開催されている、ファーンボロ航空ショーとパリ航空ショー。いずれも民航機が占める比率が大きい。そこで、これらの展示会に合わせてエアバスやボーイングが競い合うようにして、受注の発表や契約の調印を行うのが通例である。

素人目には、「話がまとまった時点で、個別にどんどん契約してしまってもいいんじゃないか」と思いそうになる。だが、展示会に合わせて集中的に発表するのは、ある種の演出、勢いを示す効果を狙ったもの、といえるだろう。

JA2018に合わせて日本のエアラインから大口受注の発表が……ということはなかったが、エアバスは興味深い発表をいくつか行っていた。

例えば、エアバスは将来の航空宇宙産業を担う学生を育てる目的で、「ユニバーシティ・パートナーシップ」というプログラムを行っているが、そこに東京大学・大学院の工学系研究科が加わることになり、JA2018の席で調印式が行われた。

現場には工学系研究科長・工学部長の大久保達也教授と、エアバス・ジャパン株式会社のステファン・ジヌー代表取締役社長が出席して、書面への調印と報道陣向けの質疑応答が行われた。大学の側から見ると、航空宇宙産業界の知見に直に接することができるとか、エアバスの専門家や他大学の教授・学生と交流する機会が生まれるメリットがある。

  • 東京大学・大学院工学系研究科長・工学部長の大久保達也教授(左)と、エアバス・ジャパン株式会社のステファン・ジヌー代表取締役社長(右)による、調印式に続いて行われた記念撮影

このほか、ユーロコプタージャパン(当時。現在はエアバス・ヘリコプターズ・ジャパン)が2012年に神戸に開設した事業所について、隣接地への拡張を行うとの発表もあった。事業所を拡大して機体の整備・改修などを行う能力を増すのは、それだけ需要が増している、あるいは増すと見込んでいることを意味する。

エアバス・ヘリコプターズは民間分野で大きなシェアを持っているだけでなく、海上自衛隊の訓練ヘリも納入している。さらに陸上自衛隊の次期攻撃ヘリ計画にも提案を実施しており、受注が決まれば神戸の事業所は納入・改修・整備サポートの拠点になる。

  • エアバス・ヘリコプターズ・ジャパンの神戸事業所(開設当初の撮影)。右側の空地に増築するのであろう

モノだけでなく人の動きにも注目

このように、さまざまな発表、そしてメーカー同士の接触があるため、大きな展示会では出展社のトップや幹部が現地入りすることが多い。したがって、トップ会談や記者説明会を行う機会が多く発生するのも展示会の通例である。

前述した、エアバスと東京大学のパートナーシップ締結に合わせてのことだろうか。エアバスのCEO、トム・エンダース氏が東京大学で講演を実施した。これはパートナーシップ実現の記念にもなるし、エアバスのプレゼンスをアピールする機会にもなる。

展示会というと、会場に並ぶ展示品、つまり「モノ」が主役と思えるだろうし、それは事実である。しかし、その「モノ」を作ったり売ったりするための「人」の動き、そしてその「人」が集まって構成する「組織」の動きもいろいろ生じる。

そちらに着目してみるのも、ひょっとすると面白いかもしれない。航空関連の展示会に限らず、他の分野においても。