2018年も、さまざまな魅力を持つデジタル機器や白物家電が登場しました。低価格でも充実した機能を持つコストパフォーマンスの高い製品が人気を集める一方で、高価ながらオンリーワンの特徴を持つ製品も話題になりました。そこで、「多少は値が張るけど、奮発してでも買いたい“ちょい高アイテム”」を、ライター諸氏にご紹介いただきます。今回は、AV関連やIoT関連に詳しい山本敦さんです。
こんにちは。フリーライターの山本敦と申します。オーディオ・ビジュアル関連の製品やサービス、ものづくりに関わるヒトの取材とライティングを得意としています。特にイヤホン・ヘッドホンは、2018年だけで250~300機種ぐらいの製品を聴いてきたと思います。楽しかったです。
今回はこの企画の場を借りて、2018年に取材したイヤホン・ヘッドホンの中で、これからのトレンドをぐいぐいっと引っ張りそうなふたつのアイテムをご紹介したいと思います。
すべてのアスリートに体験してほしい「WF-SP900」
ひとつめは、ソニーのワイヤレスイヤホン「WF-SP900」です。2018年は平昌オリンピックにサッカーのW杯、年末のフィギュアスケートなど、大きな祭典で世界のトップアスリートが身に着けていたこともあって、アップルのAirPodsがブレイクしました。
そのおかげで、左右独立タイプの「完全ワイヤレスイヤホン」を使うユーザーが爆発的に増えました。左右の本体を結ぶケーブルがなくなることで、とても解放的な装着感が得られる完全ワイヤレスイヤホンですが、ソニーのWF-SP900も実におもしろい製品です。
特徴は枚挙に暇がないのですが、代表的なもの3つに絞るとすれば、まずIP65/IP68相当の高い防塵・防水性能を備えていること。ふたつめは4GBの内蔵メモリに音楽ファイルを転送して、イヤホン単体(スマホレス)で音楽再生が楽しめること。そしてもうひとつは音楽を聴きながら外の環境音が取り込める「アンビエントサウンド(外音取り込み)モード」を搭載する“安全ワイヤレスイヤホン”であることです。
スポーツしながら音楽を聴きたいなら、SP900がベストなイヤホンといえるでしょう。汗に濡れてベタついたら洗っちゃえ。ジョギングしながらスマホいらずで音楽が聴けて、周りの音にも注意が向けられて最高です。2018年12月下旬の時点で、大手量販店での価格は29,000円前後(税込、ポイントバック分を含まず)です。
とにかく未来感がスゴイ! ノイキャン付きワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM3」
もうひとつの注目したいアイテムは、ソニーのワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM3」です。型番末尾の「M3」は「マーク3」の意味。2016年に発売された1000Xシリーズのヘッドホンが、毎年アップデートを繰り返しながら、2018年の3代目でまたものすごくよくなりました。こちらも、たくさんある特徴を手短にまとめます。
WH-1000XM3は、リスニング環境周囲の不要なノイズを消音してくれる「アクティブノイズキャンセリング」機能を搭載したヘッドホンです。その機能を制御するための回路として、ソニー独自開発の高性能プロセッサー「QN1」が載ったことで、消音効果がまた一段と高く、ナチュラルになっています。
モバイルアプリ「Headphones Connect」を使えば、イコライザーや外音取り込みのレベルなどを細かく調整できます。アプリのアップデートによって、今後も新しい機能が追加されるかもしれません。
Googleアシスタントを内蔵しており、ペアリングしたスマホと連携して音声コマンドによる操作が可能です。いろいろなWeb情報を検索したり、音楽ストリーミングの検索・再生をコントロールできたりします。近く、アマゾンのAlexaに対応することも検討されているみたいです。
総括すると、WH-1000XM3は未来感バリバリのヘッドホンです。ヘッドホンで「こんなこといいな、できたらいいな」が、いまこの1台に詰まっています。モバイルアプリやAIアシスタントなど、多機能対応のワイヤレスヘッドホンはこれからの常識になっていくのでしょうか。
比べるとよくわかる、旬な製品のイイトコロ
同じソニーの現行ラインナップから、WF-SP900、WH-1000XM3と似たタイプのモデルを比べてみると、それぞれの特徴が明快に浮かび上がってきます。
WF-SP900は、2018年春に発売された「WF-SP700N」と比べてみましょう。SP700Nは、2018年12月下旬の時点で、大手量販店での価格は22,500円(税込、ポイントバック分を含まず)です。
WF-SP900を買うべき人 |
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スマホレスで音楽を聴きながらスポーツしたい |
泳ぎながら音楽が聴きたい。海でも使いたい |
ナチュラルでなバランスのよいサウンドが好み |
WF-SP700Nを買うべき人 |
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完全ワイヤレスイヤホンにもノイズキャンセリング機能が欲しい |
音楽再生は低音重視 |
イヤホンだけでなく専用ケースもコンパクトなほうがいい |
WF-SP900は、やはりスポーツイヤホンとしての魅力が突出しています。WF-SP700Nは世界初のノイズキャンセリング機能を搭載したIPX4相当の防滴性能を持つ完全ワイヤレスイヤホンとして、イヤホン史に名を刻むモデルです。
続いてヘッドホン。WH-1000XM3は「魅力的なのことはわかるけど、ちょっと高いよね(直販サイトで税別39,880円)」という声もよく聞きます。価格的には、よりお手ごろなノイズキャンセリング機能搭載のワイヤレスヘッドホン「WH-CH700N」と比較して、どちらを選べばよいのか迷うかもしれません。
それでもWH-1000XM3を買うべき人 |
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外音取り込み機能は欠かせない |
とにかくいい音が聴きたい!(Bluetoothワイヤレス再生もハイレゾ相当のLDAC対応。有線で接続すればガチでハイレゾ対応) |
コンパクトに折りたたんで、キャリングケースに入れてスマートに持ち運びたい |
WH-CH700Nでもいいかもしれない人 |
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ノイズキャンセリング+ワイヤレスヘッドホンをまずは試しに使ってみたい(直販サイトで税別18,880円) |
機能とデザインはシンプルな製品が好み |
音質には妥協したくない |
イヤホン&ヘッドホン選びは、己のワガママを押し通せ!
家電量販店や専門店の売り場に足を運ぶと、イヤホン・ヘッドホンの選択肢があまりに多くて、どの製品を買えばよいのかわからなくなるかもしれません。店頭に足を運ぶ前に、まずは自分の欲しい機能、好きな音やデザインなど「ここは譲れない」というポイントを頭の中で整理してから、お買い物にのぞむことをオススメします。
イヤホン・ヘッドホンは身に着けて使うものなので、装着感の快適さも含めてワガママなこだわりを徹底的に貫けば、自分にとって理想的な製品の条件が見えてくるはず。そして「安物買いは銭失い」になるので要注意。長く使うことを考えて、奮発したほうが一生モノの愛機とめぐり会える確率は高くなるはずです。
著者プロフィール
山本敦(やまもとあつし)
ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ハイレゾやAI・IoTに関わるスマートオーディオ、4KやVODまで幅広いカテゴリーに精通する。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。