2018年も残すところあとわずか。スマートフォン業界でも、この2018年は大きなトピックが相次いで登場しました。本企画では、2018年に巻き起こったスマホ業界の大きなトピックを、Q&A形式で紹介。携帯電話に関連した幅広い分野で活躍するフリーライターの佐野正弘氏が、概要や背景をわかりやすく解説していきます。

それでは、2018年のスマートフォン業界を振り返っていきましょう。今回はスマートフォンの技術や機能にまつわるトピックを紹介する「機能編」です。


トピック1:スマホの「AI」は何に使われているの?

AI(人工知能)という言葉はデジタル分野の多くの場面で聞かれるようになりました。特にスマートフォンでは、AIの演算を処理するプロセッサが搭載されていたり、写真の撮影にAIが使われていたりします。

ここ最近、スマートフォンの機能としても、よく耳にするようになった「AI」。最近ではクアルコムの「Snapdragon 845」やアップルの「A12 Bionic」、ファーウェイの「Kirin 980」など、AIの処理能力が高いチップセットを採用していることをアピールするスマートフォンが増えているようです。

スマートフォンで使われているAIは、大きく分けて2つ存在します。1つはクラウドと連携して利用するAIです。これらは膨大なデータの中からユーザーが求める適切な答えを返す機能に多く採用されており、「Googleアシスタント」や「Siri」などに代表される音声アシスタントや、「Googleレンズ」のようにカメラで写し出した被写体が何であるかを調べる機能、そして自動翻訳等に用いられています。

  • スマートフォンで「AI撮影」機能が増えた

    多くのスマートフォンでは、例えばフードにカメラを向けると自動的にコントラストが上がる設定になる。被写体を判別して適切な撮影モードに切り替える「AI撮影」は身近な機能だ

そしてもう1つは、インターネットを使わず、スマートフォンの内部で処理するAIです。こちらは主に、AIによる膨大な処理が必要だけれども応答速度が求められる機能に活用されることが多く、先に触れたチップセットの性能強化が実現に大きく影響しています。カメラで写し出した被写体を判別して適切な撮影モードに切り替える「AI撮影」や、AIがユーザーの癖を覚えて操作しやすくする機能などが、その代表例といえます。

トピック2:「ノッチ」って何のためにあるの?

ノッチとは、スマートフォンのディスプレイ上部にある切り欠きのこと。2018年はノッチデザインのスマホが多く登場しました。

2017年に「iPhone X」が採用したことで大きな話題となった、ディスプレイ上部を切り欠いた「ノッチ」。2018年にはその影響を受けて、多くのスマートフォンがノッチのあるデザインを採用したため、最近スマートフォンのトレンドの1つにもなっています。しかし、ディスプレイ上部が見づらくなるため好きではないという声も少なからずあるようです。

  • もちろん、2018年9月に登場したiPhone XSでもノッチ(ディスプレイ左側の黒い切り欠き)は健在

なぜわざわざノッチのあるデザインを採用するのかというと、ディスプレイの画面占有率(スマートフォン前面におけるディスプレイの占める割合)を高めるためです。画面の見やすさもありますし、見た目のインパクトも大きいです。

スマートフォンメーカーはこれまで、ディスプレイのベゼル部分を極限まで削り、少しでも画面占有率を高めることに力を入れてきましたが、それも限界が見えてきています。そこで今度は、自分撮りや顔認証に欠かせないフロントカメラの部分を残しながらも、可能な限り画面占有率を高めるべくカメラ部分の両脇を削った結果、ノッチが生まれたわけです。

そうしたことから可能な限りノッチのサイズを小さくすることに取り組むメーカーも多いのですが、最近では新たな取り組みとして、OPPOの「Find X」のようにカメラを内蔵し、使う時だけ飛び出す機構を採用し、ノッチ自体をなくしてしまう機種も出てきています。また2019年には、フロントカメラ部分だけ穴を空ける「ピンホール」を採用したスマートフォンも登場すると言われており、画面占有率を高めるメーカー側の試行錯誤は来年も続きそうです。

  • OPPOの「Find X」はノッチ(画面上の切り欠き)のない、全画面スマホ。内蔵カメラを出し入れする機構を背面に備えている

  • こちらはノッチを画面上下に備えた「ダブルノッチ」デザインが話題になった「AQUOS R2 Compact」