2018年も、さまざまな魅力を持つデジタル機器や白物家電が登場しました。低価格でも充実した機能を持つコストパフォーマンスの高い製品が人気を集める一方で、高価ながらオンリーワンの特徴を持つ製品も話題になりました。そこで、「値が張るので簡単には手を出せないけれど、奮発してでも買いたい“ちょい高アイテム”」を、デジタル&白物家電業界に造詣の深いライター諸氏にご紹介いただくことにしましょう。
今回は、白物家電に詳しい神野恵美さんです。いったいどんな洗濯機や掃除機が登場するのかと思っていたら、なんと彼女が推薦したのはシャープの8Kテレビ「AQUOS 8K」。8Kテレビはまだシャープしか販売していないほか、放送局もNHKのみ(2018年12月現在)。4Kチューナーと8Kチューナーを内蔵した80V型「8T-C80AX」は200万円前後(税別)です。それでも彼女が「8K」を推す理由はどこにあるのでしょうか。
クオリティは4Kの4倍
お値段は張るものの、絶対に欲しいと思っている製品―私は断然「8Kテレビ」です! 2018年12月1日に本放送が開始されたばかりの「新4K8K衛星放送」。8Kといえば、最高峰の映像を楽しめるテレビ放送で、2018年現在の主流である地上デジタル放送の「フルハイビジョン(2K、1,920×1,080ドットの約200万画素)」と比べて、なんと16倍もの高画質。4K(3,840×2,160ドットの約800万画素)だって非常に美しいのに、8K(7,680×4,320ドットの約3,200万画素)はそれと比べて4倍もハイクオリティーな映像が楽しめるのです。
8Kテレビを発売しているのは2018年12月現在、シャープのみ。市場価格は、11月に発売された80V型の「8T-C80AX1」が200万円前後(税別)、70V型の「8T-C70AX1」が100万円前後(税別)、60V型の「8T-C60AX1」が75万円前後(税別)。庶民の感覚から外れる価格に、発表されたばかりのときは「4Kだの8Kだの自分には関係ない……」と思い込み、軽くスルーしていました。
ところが2018年10月に行われたCEATECで実物を目のあたりにし、そのリアルさと臨場感に圧倒され、あっという間に虜となりました。なんでも8Kの映像は、「人間の視覚能力で画質の差を識別できる限界」とまでいわれているそうで、確かに隣に実物を並べても見分けがつかないのではないかと思うほど。一度見てしまうと、どうしようもなく魅力的なのです。筆者のなかであっという間に、「お金さえあれば絶対欲しい家電」リストの最上位に食い込みました。
8Kで東京オリンピックを
とはいえ、筆者はふだんあまり時間がないこともあって、ほとんどテレビを見ない生活です。ニュースか、せいぜい息子と一緒にプロ野球中継を見るぐらいなので、今あるフルHD解像度のテレビも、野球のオフシーズンにはほぼ冬眠。息子のゲーム用ディスプレイと化している状態です。「たとえこれほど高画質なテレビが自宅にあったとして、いったいなにを見るの?」と、ふと冷静になりました。
……いやしかし、「新4K8K衛星放送はなんのための放送なのか」を考えてみると、それはもちろん2020年の東京オリンピックに先駆けてのこと。オリンピックとテレビは、いつの時代も切り離せないものなのです。
日本でカラー放送がはじまったのは1960年。放送開始に伴って発売された、当時のカラーテレビ第1号機の価格は50万円だったとか。それから60年近く経った今でも50万円は高価なのに、当時の物価を考えると、かなりお高い代物だったことは間違いないでしょう。
カラーテレビも最初は普及が進まなかったようですが、1964年の東京オリンピックで「世界初の衛星生中継」に成功すると人気に火がつき、そのあと高度経済成長の最盛期を迎えた日本においては「三種の神器」の1つとなりました。以降の家電製品が大きな進化を遂げていく引き金になったともいえます。
ちなみに地上デジタル放送がはじまったのは2008年、北京オリンピックの年でした。そして2020年、今から1年と半年後に東京へ聖火が戻ってくる……56年ぶりに東京で行われる夏のオリンピックに思いをはせるのです。東京都民の1人として、できれば会場で見たいけれど……自宅でもその興奮を味わいたいという気持ちが日に日に高まってきています。
子どものころ、今は亡き祖父から1964年の東京オリンピックに合わせて購入したカラーテレビの話をよく聞かされました。今から60年近く前、岐阜県の"ド"がつくほど田舎町で、当時カラーテレビを所有していた世帯は我が家だけ。町中の人が集まって、自宅がパブリックビューイングスペースになったという話を自慢げに語っていました。
シャープの8Kテレビを目の前にしたとき、筆者はそんな亡き祖父の姿をふと思い出したのです。「私の新しいモノ好きな性格は、おじいちゃんから受け継いだ血だったのか!」と気付いてうれしくなるとともに、「この血は次世代へ引き継ぐべき」という使命感にかられ、勝手に燃え上がっています。
筆者も今や人の親。周囲に先駆けて8Kテレビを購入し、パブリックビューイングに我が家へ友達を集めて、一緒に侍ジャパンの応援ができたら……。子どもたちには楽しい記憶が残るだろうし、自分にとってはどれだけ冥途のいい土産になるだろうと、今から妄想が止まりません。「思い出はプライスレス」、8Kテレビは思い切って投資すべき代物な気がします。
というわけで、意中はもちろん1番大きな80インチ「8T-C80AX1」。市場価格は200万円なり。筆者にとっては、価格が高いという以外に欠点は見当たりません。そもそもほかに比較対象がない、唯一無二の存在というだけで価値アリです。
4Kテレビじゃダメなの?
4Kテレビも映像の美しさという点では8Kテレビに劣らないレベルだと思います。ですが色の規格では、4Kテレビの10BTに対して、8Kテレビは12BTと拡大されて、より滑らかに色の移り変わりを表現可能。動きの激しいスポーツの臨場感を妥協せずに楽しむなら、8Kテレビを選ぶべきだと思うのです。
解像度の違いが映像の差に表れるのは60インチ以上といわれているので、それ以下の画面サイズでよい場合や、少人数でテレビを楽しみたいという人は4Kテレビで十分かもしれません。
また、「AQUOS 8K」に罪はないものの、個人的な問題はアンテナ設備です。新4K8K衛星放送を受信するにはもちろんアンテナが必要ですが、筆者が住んでいるエリアは地デジの難視聴地域でした。高層ビルの陰になり電波が届きにくいため、今もマンション全体がケーブルテレビを使って地デジを視聴しています。2018年12月現在、新8K衛星放送に対応したケーブルテレビはありません。
というわけで、現状はケーブルテレビの対応待ち。東京オリンピックがはじまるまでに8Kテレビの軍資金を貯めるため、今回の依頼を引き受けることにしました。原稿料は100万円でお願いします!
8Kテレビをがんばって買うべき人 |
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2020年の東京オリンピックをテレビで存分に楽しみたい人 |
60インチ以上の大画面を楽しみたい人 |
とにかく周囲に自慢したい人 |
4Kテレビでも十分な人 |
テレビは50インチぐらいあれば十分だと思っている人 |
2020年の東京オリンピックを現地ですべて観戦できる人 |
著者プロフィール
神野恵美
フリーライター・編集者。ワーキングマザーとして10余年、世の中にあるさまざまな便利ガジェット・ツールを駆使して、生き延びる。趣味は料理に掃除、洗濯と野球、旅行、音楽や映画鑑賞などなど、周りが呆れるくらい趣味人間。"モノ"より"コト"優先で生きてる。