ソフトバンクグループの子会社で通信を手がけるソフトバンクは2018年12月19日、東京証券取引所第1部に上場しました。12月6日に発生した通信障害や、ファーウェイについての問題などから、初値は1,463円、終値は1,282円と、公開価格の1,500円を下回る結果となりました。ソフトバンクにとっては、厳しい船出といえそうです。
ソフトバンクが12月19日に開いた上場に関する記者会見の冒頭、ソフトバンク代表取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏らが、12月6日に発生した通信障害について謝罪しました。
宮内氏は「今後はこのようなことがないよう、全力をあげて取り組む」と謝罪。ソフトバンク代表取締役副社長執行役員兼CTOの宮川潤一氏は、通信障害について詳しく説明しました。
今回の通信障害の原因はLTE交換機にありました。全国に18台あるLTE交換機が一斉にダウンし、ソフトバンクユーザーはLTE通信を利用できなくなったのです。LTE通信が使えなくなったとき、ソフトバンクユーザーは自動的に3G回線にアクセスするよう設定されていますが、全国的に3Gへのアクセスが急増した結果、3Gが高負荷状態に陥り、「輻輳」(ふくそう)という現象(ネット上で多くのトラフィックが発生し、通常の送受信が困難な状態となること)が起こりました。ソフトバンクユーザーはLTE通信が使えなくなり、3G回線にもアクセス困難となったのです。
LTE交換機が一斉にダウンした理由は、LTE交換機の内部で暗号通信を担う「TLS」の証明書の有効期限が切れたため。ソフトバンクはすべてのLTE交換機を同一ベンダーから調達しているため、すべてのLTE交換機が同時にダウンしました。
ソフトバンクのコアネットワークはシステム異常を検知すると再起動する仕組みとなっていますが、再起動してもTLS証明書の期限切れが修正されるわけではないため、再起動を繰り返し、長時間の通信障害へとつながりました。
一般的なネットワーク設備におけるTLS証明書は、導入企業側が有効期限を確認できますが、ソフトバンクのLTE交換機には、ベンダー側がソフトウェアとして埋め込んでおり、ソフトバンク側は有効期限を確認できない状態だったといいます。
今後は、LTE交換機をマルチベンダー化するほか、ソフトバンクでもTLS証明書の有効期限を確認、更新ができる仕組みを導入するとしています。宮川氏は、「過剰投資にはなるが、万が一に備えていく」と話しました。
ファーウェイの端末は?
質疑応答では、ファーウェイやZTEなどの中国メーカーに関する質問が続出。これら中国メーカーについては、以前から中国政府との癒着を指摘する声があり、中国によるスパイ行為を受けやすい可能性があるのではないかと懸念が広まっています(ファーウェイはそれを否定しており、日本でも声明を出しています)。
ソフトバンクはファーウェイの端末を販売していますが、宮川氏は「日本政府はエンドユーザー側が選択できるものについては、エンドユーザーが決めればよいという考えのようです。我々もそれに従うまで」とのことでした。言葉通りに解釈すれば、ソフトバンクは今後も、ファーウェイ製スマートフォンの販売を継続するようです。
基地局などのネットワーク設備について、中国メーカーの扱いを問われると、宮内社長は「政府のガイドラインを見極めたいと思っています。政府関係者とお会いし、いろいろなオルタナティブを常に検討している状況です。ネットワークのコア部分については、ヨーロッパのベンダーに頼らざるを得ないかもしれません。ですが早急に動くべきではないと思っています」と言葉を濁しました。
そもそも基地局ベンダーが、ネットワーク設備などをキャリアに納入したあと、勝手に情報を抜くといったことは可能なのでしょうか。キャリアとしての見解を求められた宮川氏は、「4Gと5Gで基地局の仕組みは異なります。5Gの場合、基地局から情報を抜くことは可能ではあると思っています。4Gについては、普通の考え方であればできないのではないでしょうか」と語りました。