Microsoftは2018年10月に、SurfaceやOffice 365を月額課金で使用するサブスクリプションモデル「Surface All Access」を米国で提供しているが、その姿をさらに一歩推し進めそうだ。
Microsoftが公式に発表しているわけではないが、海外のIT系ニュースサイトによれば、同社は「M365 Consumer Subscription - Modern Life & Devices」のプロダクトマネージャーを募集している。
「M365」は法人ユーザーを対象にした、Microsoft 365 EnterpriseやMicrosoft 365 Businessとして展開中のサブスクリプションモデルだ。例えば同Businessは1ユーザーあたり月額2,180円(税別)で、Windows 10、Office 365、Enterprise Mobility + Security(EMS)のライセンスを取得できる。
Microsoft 365 Consumer Subscriptionの製品構成は不明ながらも、募集ページの後に続く説明によれば、「Windows 10、Surfaceデバイス、消費者向けOffice 365、Skype、Cortana、Bing」をパッケージングした形となりそうだ。
一般的な消費者の場合、PCを購入すればWindows 10はプリインストールされているので、パッケージの中に含まれていてもさほど魅力とはいえないが、Surface All AccessとMicrosoft 365を消費者向けにリパッケージングしたソリューションと見るのが正しそうだ。
募集したプロダクトマネージャーが所属するのはModern Life&Devicesチームだ。日本マイクロソフトの「FY19新年度経営方針記者会見」で同社 代表取締役社長 平野拓也氏は「インダストリーイノベーション、ワークスタイルイノベーション、ライフスタイルイノベーションと、3つのイノベーションを推進する」と述べつつも、Surfaceシリーズの浸透具合をアピールするにとどまり、具体的な施策は打ち出さなかった。
Microsoftおよび日本マイクロソフトの定義する"モダンライン"が、どの方向性を目指しているのか浅慮な筆者には計り知れないものの、Microsoft 365 Consumer Subscriptionは1つの解答ではないだろうか。
PCやOSの存在自体に価値はなく、人は製品やサービスから得る体験に価値を見出す時代へ移行した。だからこそ、ソフトウェアのみならずデバイスもサブスクリプションビジネスへ移行させるのだろう。
もちろん所有する楽しさは重々理解できるし、筆者も新たなSurfaceへ乗り換えるたび、開封時はワクワクしている。だが、それすらも過去の楽しみ方だとMicrosoftは提案しているのだ。
ただ、ビジネスの世界では至極当たり前となったサブスクリプションビジネスモデルだが、日本の企業を取材していると、いまだに「初期費用は●●●万円、月々の費用は1ユーザーあたり……」という声が聞こえてくる。
これは非外資系企業で顕著だ。サブスクリプションモデルの長所は「使いたい時に開始し、現時点で有用でないと判断すれば翌月から止められる」点にあるが、この点において日本はまだITに関しては発展途上と言わざるを得ない。
Microsoft 365 Consumer Subscriptionが対象とする消費者のマインドセットをいかに変えるか。それが日本国内においてMicrosoft 365 Consumer Subscriptionを広める近道となるだろう。ただし、消費者のマインドセットが醸成されるまで、日本マイクロソフトは静観するかも知れないが……。
阿久津良和(Cactus)