エリアによって異なりますが、アパートやマンションを借りるとき、「敷金」「礼金」「保証金」「敷引き」などのワードを、聞いたことがあるのではないでしょうか?
なんとなく頭では分かっていても、内容を完全に理解しているかと問われると、自信のない方も多いはず。今回は、賃貸借契約における、「敷金」「礼金」「保証金」「敷引き」などの言葉の意味や違いについて説明していきます。
「敷金・礼金」「保証金・敷引き」とは?
「敷金」「礼金」「保証金」「敷引き」といった言葉は、名称が異なるだけで、大体同じような意味だと思っていませんか。
これらは似ているようで異なる考え方のものであり、住む地域によって、契約内容に違いさえ生じるものである、ということをご存知でしたか。
これらの言葉の意味や、システムの違いをしっかり把握しておかないと、退去の際に戻ってくると思っていた金額が返ってこず、トラブルの原因となってしまうこともあるため、注意しましょう。
・【敷金・礼金】主に東日本を中心に、使われているシステムです。
「敷金」は、契約時に家主へ預けるお金で、保証金のような役割です。
「礼金」は、「部屋を貸してくれる家主に対するお礼金」という意味合いがあり、家主に全額支払うことになるため、退去時に返金されない費用となります。
(入居時)敷金+礼金を支払う
(退去時)敷金が返金される
主に西日本で使われているシステムが「保証金・敷引き」です。
「保証金」は、契約時にお金を預けるという、関東の「敷金」と同じ考え方です。しかし、退去時に「保証金」から、契約時に定められた「敷引き」の金額が差し引かれて返金される仕組みとなっているので、想定していたよりも返金額が少なかった、とならないよう、事前に「敷引き」の金額を確認しておきましょう。
※地方によっては「敷金・敷引き」と表記される場合もあります。
(入居時)保証金を支払う
(退去時)保証金-敷引きの残金が返金される
これで、「敷金・礼金」と「補償金・敷引き」については、理解できたと思います。次に、「敷引き」について、より詳しく説明していきます。
「敷引き」とは?
「保証金3か月・敷引き1か月」と記載されていると、「ラッキー! 家賃が一ヶ月分割引される」「あれ?礼金は払わなくていいの?」と、勘違いしてしまう人もいるかもしれませんが、前述したように、「敷引き」とは、西日本特有のシステムで、「保証金」から無条件で引かれる定額費用のことを指しています。東日本と西日本ではシステムが異なりますが、「敷引き」は関東地方の「礼金」と同じようなものです。
礼金=敷引き
敷金=保証金-敷引き
このように考えると、分かりやすいかもしれません。
・「敷引き」の相場は?物件によってさまざまですが、西日本は「保証金」が賃料の4~8か月分、「敷引き」が賃料の2~3か月分が相場となっています。東日本では、「敷金」は賃料の1~2か月分、「礼金」は1か月が相場のようです。
※相場は2009年、国土交通省調べ
・「敷引き」がある場合、ない場合の違い東日本では、「敷金」と「礼金」を合算した金額を契約時に支払うことになります。また、退去時の返金額は「敷金」として記載されているので、どのくらい返金されるのか、一目瞭然で分かりやすいという特徴があります。
しかし、西日本では、契約時に支払う金額は、「保証金」と記載された金額のみとなり、退去時の返金額は、「保証金」から「敷引き」を引いた残金ということになります。
「敷引き」がある物件と、ない物件を例に、返金額の差を比べてみましょう。
※1か月の賃料6万円の部屋【保証金5か月/敷引き2か月の場合】
(契約時)30万円-(退去時)12万円=(返金額)18万円
【保証金5か月/敷引き0か月の場合】
(契約時)30万円-(退去時)0円=(返金額)30万円
このように「保証金・敷引き」システムの場合、敷引きの額が退去時の返金額に大きく関わってきます。部屋を借りるときは、契約時に支払う「保証金」だけではなく、「敷引き」の金額もしっかり確認してから契約をすることが大切です。
「敷金」や「保証金」をめぐり、トラブルに!?
退去時にトラブルとなりやすいのは、「部屋の原状回復費の負担」についてです。契約時に預けている「敷金」や「保証金」は、例えば家賃滞納などの債務不履行があった場合、その金額が差し引かれて返金されます。
ところが、部屋の修繕費も「敷金」や「保証金」から引かれてしまうケースがあり、借主と家主の間で裁判にまで発展してしまうこともあるようです。
退去時は、「部屋を原状回復してから家主に返す」という契約が一般的です。しかし、原状回復とは「入居時とまったく同じ状況に戻して返す」という意味ではありません。
退去後は、必要に応じて畳の裏返しや表替え、壁クロスの張り替え、ルームクリーニングなどを実施しますが、入居者が故意に傷つけたり汚したりしたものでなければ、費用は基本的に家主の負担となる旨が、国土交通省のガイドラインにも記載されています。
畳や壁クロスの日焼け、床や備え付け家具などの経年劣化による傷みなどは、生活していくうえで起こり得るものです。したがって瑕疵のない借主は、修繕費用を「敷金」や「保証金」から支払う義務はないということになります。
ただ、「ルームクリーニング代などの修繕費は、賃借人負担とする」などと契約書に記載があれば、これは契約ですので支払い義務が発生します。
修繕費がかさんで、契約時の「敷金」や「保証金」をオーバーしてしまうと、返金どころか追加で費用を請求されることもあります。退去時のトラブルを避けるためには、「敷金」や「保証金」と原状回復費の負担について、契約の際にしっかりと内容を確認しておくことが大切でしょう。
敷引き(しきびき)まとめ賃貸借契約の際、よく見聞きする「敷金」「礼金」「保証金」「敷引き」。それぞれの言葉の意味や、システムの違いについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
近年では、西日本でも「敷金・礼金」システムを取り入れている物件も増えてきているようですが、一般的には、東日本では「敷金・礼金」、西日本では「保証金・敷引き」のシステムのようです。
エリアを越えて引っ越しをする際に戸惑わないよう、それぞれのシステムを理解しておきたいところです。そして、部屋を借りる際には、契約内容を十分に確認し、思わぬトラブルに発展しないよう注意しましょう。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。