米労働省が2018年12月7日に発表した11月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数15.5万人増、(2)失業率3.7%、(3)平均時給27.35ドル(前月比0.2%増、前年比3.1%増)という内容であった。
(1) 11月の米非農業部門雇用者数は前月比15.5万人増となり、市場予想の19.8万人増を下回った。前月分が速報値の25.0万人増から23.7万人増へ下方修正された事もあって、3カ月平均の雇用者数増加幅は17.0万人増に減速しており、2018年で最も低い伸びとなった。
(2) 11月の米失業率は市場予想通りの3.7%となり、約49年ぶりの低水準に3カ月連続でとどまった。労働参加率も予想通りで、前回から横ばいの62.9%であった。一方、フルタイムの仕事を望みながらもパート就業しかできない人などを含めた広義の失業率(不完全雇用率)は前月の7.4%から7.6%に悪化した。
(3) 11月の米平均時給は27.35ドルとなり、前月から0.06ドル増加して過去最高を更新。伸び率は、前月比で+0.2%と予想の+0.3%に届かなかった一方、前年比では+3.1%となり、市場予想どおりの伸びを示した。なお、前年比の伸び率は、9年半ぶりの高水準を記録した前月と同じであった。
米11月雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが予想に届かなかったほかは、概ね予想通りの結果であった。非農業部門雇用者数の3カ月平均増加幅が1年ぶりの低水準に落ち込んだ点はやや気がかりだが、失業率が歴史的低水準にとどまるなど、「完全雇用」と推定される状況下にあって雇用者の伸びが鈍るのはある意味で自然な流れであろう。
平均時給が底堅い伸びを示している事もあって、米雇用情勢が減速を始めたとの感触は薄い。少なくとも、米連邦準備制度理事会(FRB)が12月の利上げを躊躇う内容ではなさそうだ。ただ、雇用統計発表後のドルの小幅な値動きから見ても、足元で市場が気にしているのは12月利上げの有無ではなく、来年以降の利上げペースであろう。その点については、今年最後の雇用統計では窺い知る事ができなかった。12月18-19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内最後のビッグイベントになるとともに、来年1月4日の米12月雇用統計が年明け最初のビッグイベントとなる公算が大きくなった。
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya