学生時代に自動車免許を取得したものの、運転する機会もなかなかなく、気付けば筋金入りのペーパードライバーに。特に都内在住のビジネスマンは、そのような人も多いのではないだろうか。

しかし、運転をしなければいけないタイミングはいつやってくるかわからない。例えば、出張で地方を訪れた際や、運転するシーンに出くわすような職種に転職した場合、はたまた子どもが生まれて自転車移動のみではしんどくなってきたというケースも考えられるだろう。

そこで今回は、編集部随一のペーパードライバーが実際に講習を受ける様子をレポートしてみることに。訪れたのは、トヨタが運営するクルマのテーマパーク「メガウェブ」(東京・お台場)。果たして、効果のほどは?

  • 事前予約を済ませ、いざメガウェブへ

脱ペーパードライバーなるか!?

メガウェブでは、「脱! ペーパードライバー講習」なるものを不定期で開催している。講習は1回約1時間で、料金はなんと300円。チョロQよりも安い。教習所などでも同様の講習を行っていたりはするが、料金が1万円以上に設定されている場合も珍しくないことを考えると、これは破格すぎると言える。では内容もチープなのかというと、決してそんなことはない。ここからは、その中身を紹介していこう。

  • まずは受付カウンターにて支払いを済ませる

コース周回トレーニング

初めに受付で注意事項などの説明を受け、建物の外へ。クルマに乗り込んだら、インストラクターのガイドのもと、シートの調節をしながらドライビングポジションを確認。ブレーキ・アクセルの位置確認など、教習所で受けた初回の講習のように丁寧なレクチャーをしてくれる。その後、助手席にインストラクターが同乗し、ヴィーナスフォートの周囲を10~20km/hほどのスピードで走りながら運転の感覚を少しずつ取り戻していく。

  • 受講者はいくつかのグループに分かれ、それぞれの講習をローテーションで回る

  • 同講習は女性の受講者も多いとのこと。雑談を交えながら、和やかなムードで講習スタート

ちなみに今回の受講者は、免許の更新を忘れて一度失効したこともあるというモノホンプレイヤーだ。免許取得後の運転経験はトータルで10回未満、前回運転したのは約2年前という事前情報も。しかし、実際に運転してみると、インストラクターからは「ものの10分で感覚取り戻しましたね! 2年間運転してなかったとは思えないですよ!!」との声が。技術や知識ももちろん大切だが、まずは何より運転に対する苦手意識を取り除くことが重要なのかもしれない。

  • 理論と感覚、両方の側面からやさしく運転のポイントを教えてくれる

  • 「いきなり公道で練習するなんて無理!」という人もここなら安心だ

  • 揺れを感知して音が鳴るセンサーも備えられていたが、何も音を発することなくコース周回トレーニングは無事に終了

縦列駐車トレーニング

続いては、ペーパードライバーでなくても苦手意識を抱きがちな縦列駐車の講習。運転席からの視線とクルマの位置を確認しながら、少しずつ車体を動かしていく。目印になる部分やミラーからの景色、ハンドルを切るタイミングなども細かく解説し、成功の方程式を導く体験を味わわせてくれる。

  • 手前側のスポンジで囲まれたスペースに縦列駐車を試みる

  • 後ろを気にするあまり左前への意識がおろそかになってしまうなど、慣れていない人が陥りがちなケースを挙げながら注意点を教えてくれる

  • 3回ほど縦列駐車を実践。外から見ていると、回を重ねるごとに確実に上達していくのがわかる

車両点検講習・死角確認

マイカーを所有しておらず、たまにレンタカーを利用する程度の運転頻度だと、クルマの点検に目を向ける機会もほとんどないはずだ。その状態でクルマに何かトラブルが発生してしまった場合、多くの人は余裕を持って対応することはできないだろう。そんな不安の芽を摘んでおくため、水・オイル・タイヤ・ブレーキといった基本的な点検項目のチェックポイントを教えてもらえる時間も設けられている。

  • ボンネットの開け方、知ってますか?

  • 「スリップサイン」など、「聞いたことはあるけど詳しくは知らない」という人も多くいるようなチェック箇所の見方をしっかりと解説

  • タイヤの適正な空気圧は、運転席のドア開口部などに記載されている。近年はガソリンスタンドもセルフ形式が増えているため、自分で知識を持っておくことが大切だ

車両点検の講習を受けた後は、死角と車両間隔の確認。初めに、赤・黄色・緑、3色のパイロンで囲まれたクルマを外から眺める。ここでクイズの出題が。「クルマから近い順に赤・黄色・緑のパイロンが置かれているんですが、運転席からは何色のパイロンまで見えると思いますか?」とインストラクター。受講者は「黄色あたりまで見えるんじゃないですかね?」と答え、実際にクルマに乗り込んでみる。

  • クルマから近い順に赤・黄色・緑のパイロンが配置されているクルマに乗り込んでみると……?

受講者がクルマに乗り込んだ瞬間、「あれ? これ全部見えないですよ! 」という声が聞こえてきた。実はこれ、すべて死角になっているのだ。パイロンの高さは約70cm。「小さい子どもがクルマの周囲にいたら……」というインストラクターの発言には、筆者も思わず「怖っ」と漏らしてしまった。

  • 運転手の目線はこんな具合。この死角の多さには驚く人も多いはずだ

クルマの正面と左右に配置されたバーは、車両間隔を掴むためのもの。運転席はクルマの真ん中にあるわけではないため、中心から真っすぐ伸びているはずのバーが中心からはズレているように見えるのだ。左側に引かれた黄色いラインについても、受講者は「運転席から見ると実際より近くにあるように感じるかも」と印象を述べていた。走行中、左右どちらかに寄りすぎてしまう人は、自分が運転しているクルマを俯瞰で見られるよう、この位置関係をインプットしておく必要があるだろう。

  • 乗り降りを繰り返し、脳内に発生しているギャップを埋めていく

車庫入れトレーニング

最後に待ち受けているのは、車庫入れの講習だ。縦列駐車のときと同様に、紅白のスポンジで囲まれたスペースを車庫に見立ててバックでクルマを入れていく。まずは、インストラクターのアドバイスなしで挑戦してみることに。

  • 車庫に対して垂直に停めてある状態からスタート

  • 左右にやや蛇行しつつ……

  • けっこうギリギリを攻める場面も

  • ヤラセ抜きでしっかりとケツからクラッシュ

「バックしながらハンドル操作を行うと、タイヤがどこに向いているのかがわからなくなってしまう」というのはよく相談されることだという。その場合はバックだけでなんとかしようとせず、迷ったら前に進んで修正し、バックするときはハンドルを切らないのがオススメとのこと。

車庫前方スペースにあまり余裕がないケースなども想定し、少し進んで位置確認、また少し進んで位置確認と、限られた時間の中でも丁寧な指導が光る。明らかに実感できるレベルで上達していくので、受講者も自信がつくこと請け合いだ。

  • 数回のレクチャーでビシッと車庫入れができるまでに

以上で約1時間の講習は終了。はっきり言って、これが300円は安すぎると感じた。もちろん、これを一度受けたからといって完全に脱ペーパードライバーだとはならないかもしれない。しかし、最初の一歩として「意外と運転できるもんだな」という感覚を得るには持ってこいの内容だと言える。

  • 女性のインストラクターも在籍

  • 講習の前後は、メガウェブ内に展示されたクールな車両たちを見学して運転欲を高めるのもいいだろう

同講習会の開催スケジュールについては、公式HPで随時アナウンスがあるとのこと。人気プログラムのため予約はお早めに。さまざまな車種に乗れるうえ、300円という手軽さも魅力的な「脱! ペーパードライバー講習」。自分の運転に自信が持てない人や、免許証がただの身分証明書になってしまっている人は、いざという時に備えて受講を検討してみてはいかがだろうか。