『日本の人事部』(アイ・キュー)はさきごろ、「HRカンファレンス2018- 秋-」を開催した。人の採用・育成・マネジメントに携わる方を対象とした、働く人と組織の明日を考えるイベントだ。
本稿では、特別講演「経験を学びに変える『成長力の高め方』~自ら育つ若手社員を育てる4ステップ~」を紹介したい。講師はアチーブメントHRソリューションズ 組織コンサルタント 辨野巧己(べんの たくみ)氏。
同期入社し、同じ業務経験をした新入社員がいるとする。2年目になると、それぞれのパフォーマンスに差がある、こうした事例は多いのではないか。
成長スピードの違いは、経験を学びに変える力=「成長力」にあるようだ。では成長力を高めるにはどうすればよいのか。
成長のキーワードは負荷
若手社員の教育によく活用されるのが「社会人基礎力」だが、この能力は社会人として成果を出すための能力を指すのに対して、成長力は直接的に成果に直結する能力ではなく、「自分の能力を、自分で高める能力」を意味するとのこと。
では、そもそも成長とは何によって促され、どのような考え方や行動をとる人が成長するのか? キーワードは「負荷」だという。
多くの新入社員にとって、仕事は初めての経験となる。そこには「不安、恐れ、葛藤、障害」などの負荷が多く存在し、それらに対し「挑戦を継続できたとき、人は成長する」という。
負荷を肯定的に捉え、乗り越えるプロセスが重要だそうだ。
「負荷を成長痛と捉え挑戦する人」と、「苦痛と捉えその場から逃れようとする人」の差は何だろうか。
そこで紹介されたのが「経験学習サイクル」だ。
成長力は5つのマインドが鍵
これは、組織行動学者のD・コルブが提唱する「経験→省察→概念化→実践」という4ステップの学習サイクル理論。
そして、このサイクルを回すための重要な鍵となるのが「マインド」だそうだ。マインドは5つあり、「目的、挑戦、責任、学習、柔軟」となる。
目的マインド | やらされ感で行動するのではなく、やる意味や価値を見出そうとする |
挑戦マインド | 困難な課題に直面したときに、それを避けようとするのではなく、自ら乗り越えようとする |
責任マインド | 思い通りにいかない結果を他人や周りのせいにするのではなく、自分に何が改善できるかを考える |
学習マインド | 結果に一喜一憂して終わりではなく、その結果から学び取ろうとする |
柔軟マインド | 他者からのフィードバックをはねのけ、自らを守ろうとするのではなく、素直に受け止め自己改革に活かそうとする |
この中でも、筆者がより重要だと感じたのは柔軟マインドだ。他者からのフィードバック、特に耳障りな言葉を素直に受け止められるかが大事なようだ。
「若手社員向けの研修でも、『自分なりに頑張っています』と言うのはNGと教えています。成長のためには他者のフィードバックを受け入れましょう」と伝えているそうだ。
また、マインドは、そのマインドを実践した結果得られる肯定的な感情によって強化されるので、研修や育成機会では、マインドが醸成されやすい環境づくりを意識するとよいという。
若手社員の成長力を高めるには
世の中には様々な研修プログラム、教育サービスが存在する。どれが適切か、企業や受講者により異なるが、一番大事なことは「成長の促進ができるか」だそうだ。
「本やインターネットなど様々な情報が数多くあります。自ら学びにいこうと思えば手段はいくらでもあるのです」
つまり若手社員のマインドを醸成する経験、機会を提供し、他者の力も活用しながら経験学習サイクルを回せるようにすればすればよい。
あとは、本人が能動的に学習方法を探し、実践するようになるというのだ。
上司が関与しない研修に部下を参加させるなら、現場のOJTを優先するべきで、上司が部下をどこまでフォローできるか、職場で若手社員が成長できる環境なのか、それが成長力を高める鍵となるようだ。
若手社員の成長に悩む人事担当者は、ぜひ参考としてほしい。