さまざまな企業が取り組み働き方改革に取り組むなか、老舗企業のイトーキがユニークな発表を行った。同社が働き方改革として掲げたのが「ABW」や「ゾークスタイル」。耳慣れない言葉ながら、ワークライフバランス先進国・オランダの幸せ思想がぎゅっと詰まっているのだ。
オフィスビルや商業施設が立ち並び、2020年に向けて再開発が加速する日本橋。2018年秋、2020年には130年となるイトーキが、この街に本社機能を移転・集約した。新本社オフィスは、通称「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」。
イトーキが業務提携しているオランダの「Veldhoen+Company Pty Ltd」社は、「ABW」(Active Base Working)というビジネス戦略をはじめて提唱したコンサルティング企業。「ABW」のコンセプトは、「いつでも、どこでも、誰とでも働くことができる」ワークスタイリング。この「ABW」の考え方を導入した働き方が「XORK Style(ゾーク・スタイル)」というわけだ。イトーキは、新本社オフィスで、率先して新しい働き方「ゾーク・スタイル」を実践する。
新本社のグランドオープンを記念して行われた記者会見では、代表取締役社長 平井嘉朗氏以下、登壇者による興味深い講演が行われた。
東京本社移転プロジェクトリーダー 藤田浩彰氏からは以下のような話があった。
「イトーキ・トウキョウ・ゾークは、『ABW』の考え方を導入した働き方『XORK Style(ゾーク・スタイル)』を普及するための拠点です。『AMW』(Active Base Working)に大事なのは、ワーカーの自己裁量を最大化すること。このことにより、企業は生産性を高めることができます。
そのためには、「ワークプレイスデザイン」(オフィスの物理的なデザインを見直すこと)、ITデザイン(移動しやすいITツールを確保し、誰とでも気軽に連絡できるようにすること)、行動デザイン(会社の制度や管理者、ワーカーの行動を見直すこと)が重要となります。
それから、オフィスは『AMW』で定義する10の活動をしっかりとサポートできる空間であるべきです。高い集中力を保つこと、2人以上で共同ワークを行うこと、アイデアを出し合うことなどです。こうしたことにより、ワーカーの行動・心の自由を実現することができるのです」
オフィスデザインを手がけたデザイナーの星幸佑氏からは、設計・デザインに関する興味深いスピーチが行われた。
「特徴的な数字を交えて、オフィスデザインの展開を説明いたします。まず、『93』。これは個室の数です。個人の働き方を支える『ABW』の考えに基づき、多くの個室を作りました。私は過去に社員300人に対し個室10程度のオフィスで働いてきたこともありますので、800人規模のオフィスに対して93という数は非常に多い数といえます。
それから、『237』。これは、会話や騒音を聞こえにくくする『サウンドマスキング』の数です。ポイントではなく、オフィス全体で"音"に配慮しました。『30g以下』というのは、社内で提供される食事・飲料の糖分の量です。社内には一般的な自販機などを置かず、ワーカーの健康を配慮ししています。
その他、二酸化炭素濃度、簡単な調理もできるカフェスペース設置など、さまざまな工夫をして設計しました」
最後に、商品開発本部・清水俊也氏より、新商品の発表が行われた。今回の新本社お披露目に合わせて、新しいワークスタイルの提案も含め、満を持してのリリースとなる。
今回発表されたのは、ミニマルデザインのフレームでユーザーが働く空間を自由に作り上げることができるフレームキット「HAX(ハックス)」、アクティビティに合わせ、セミクローズのブースを設置できる「ADDSITE(アドサイト)」、ワークパフォーマンスを高めるための理想の座り心地を追求したタスクチェア「Actチェア(アクトチェア)」などだ。