都内のレストランにて、エプソン販売がプロジェクターを利用した映像空間演出を手がけました。プロジェクターというと、四角いスクリーンに味気ないスライドを投影するものという印象がありますが、粋な演出やサプライズの要素が盛り込まれていて楽しさを感じさせました。エプソンが「プロジェクター業界で生き残るための新戦略」と力を入れる新しい取り組みを取材しました。
窓際のパネルにアニメーションが現れ、音楽も流れる
映像空間演出を開始したのは、東京・青山にあるレストラン「Casita」(カシータ)。ランチタイムやディナータイムに食事を提供するほか、ウエディングやパーティーなどの貸し切り営業も実施しています。
食事を提供するメインダイニングの壁面には、水彩画の絵が添えられたパネルが5つ飾られています。この部分が実はスクリーンになっていて、楽器を演奏する人のアニメーションが表示されるとともに、クラシック風のやさしい音楽が流れる仕組みになっていました。
映像投影に用いられているプロジェクターは3LCD方式のため、投影された映像をスマホカメラなどで撮影する際、DLP方式のようなレインボーノイズが発生せず、見た目通りにきれいに撮れるのも特徴として挙げられます。
テーブルに置かれた飲み物に投影するサプライズも
別フロアにあるラウンジでは、異なる仕掛けが施されていました。ソファーに囲まれたテーブルの上に温かい飲み物が置かれると、その場所に合わせて映像が投影されるのです。天井に赤外線センサーが埋め込まれており、飲み物の位置を検知してその場所を中心に投影する仕組みになっていました。投影されるのはごく普通のテーブルなので、よもや映像が現れるとは予想できず、サプライズを演出してくれます。
気が利いていると感じたのが、飽きてくるころに自然に表示されなくなること。担当者は「たとえ楽しい演出でも、ダラダラ出続けていると興ざめしてしまう。熱を検知するこのシステムなら、飲み物が冷めるころに表示されなくなるのでちょうどよい」と語ります。
プロジェクターの新たな活用が増えそう
このような新しい分野に挑戦することになったのは、プロジェクター業界への危機感があります。エプソンは、プロジェクター販売で23年連続ナンバーワンの圧倒的なシェアを誇りますが、今後大幅な成長は期待できないと分析しています。複数のプロジェクターを組み合わせての大画面投影や、四角以外の複雑な形状への投影など、プロジェクターを応用した新しい価値の提供を模索するなかで、人が集まる場所での映像表現を強化していくことにしたそう。なかでも、食事や雰囲気を楽しむ飲食店が効果的だと考え、今回の取り組みにつながったわけです。
今後、飲食店やショッピングモールなど、さまざまな場所でプロジェクターを用いた新しい映像空間演出を目にする機会が増えるかもしれません。どのような驚きやサプライズをもたらしてくれるのか、期待しましょう。