外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年11月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 11月の推移】
11月のドル/円相場は112.305~114.204円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.5%の小幅な上昇(ドル高・円安)となった。月間の値幅は約1.9円にとどまり2018年で最小を記録。米中間選挙が、上院を共和党、下院を民主党、という大方の予想通りの結果に落ち着くとイベント通過のアク抜け感が広がった。
12日には114.20円前後へと上昇したが、10月に付けた年初来高値(114.55円前後)を前に失速。20日にはNY原油が1日で3ドル超下落した上にNYダウ平均が550ドル超下落するという逆風が吹き荒れたが、下値は112.30円前後までにとどまった。
リスク選好局面ではドルと円が(他の主要通貨に対して)売られた一方、リスク回避局面では、ドルも円も強含んだ。こうしてドルと円の力関係が拮抗した結果、ドル/円は小幅なレンジで方向感なくもみ合う事になった。
【ドル/円 12月の見通し】
12月1日の米中首脳会談でひとまず90日間の貿易戦争「休戦」に合意。少なくとも年内の対立激化は避けられる公算で、市場の関心は、米金融政策にシフトする事になりそうだ。12月18-19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が最大のヤマ場という事になるだろう。11月FOMCで「さらなる漸進的な利上げが適切」という文言の変更が検討された事が議事録で明らかとなっており、金融政策の正常化に伴う一定ペースでの利上げ局面の終了が近い事が浮き彫りとなった。
そうした中、市場には2019年の利上げは1回のみで打ち止めになるとの見方が広がっている。なお、FOMCが9月に発表した金利見通しでは2019年の利上げは3回が予想されていた。12月FOMCでの利上げは概ね織り込み済みと見られる中、こうした2019年の利上げペースが焦点になるだろう。利上げのペースダウンが示されれば一時的にはドル売り材料となり得るが、ドルの下値には本邦勢を中心に、引き続き買い興味が示される公算が大きい。
仮に、利上げ打ち止めが示されても、すぐに利下げ観測が浮上する公算は小さい。そうであれば、米長期金利は低下しにくいと見られ、金利差に着目したドル買い・円売り意欲がドル/円相場の下値を支える構図も簡単には崩れないだろう。112円台を割り込めば下値は堅くなりそうだ。
一方、FOMCの金利見通しが9月時点から大きく変化しなければ「タカ派サプライズ」となる。株価への影響が気になるところだが、米長期金利の上昇につれてドル高・円安に振れる公算が大きい。10月に付けた114.55円前後の年初来高値を更新する可能性もあろう。18-19日のFOMCの他、5日に行われるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)の議会証言にも注目しておきたい。
【12月の日米注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya