JR西日本は30日、JR神戸線(東海道・山陽本線)に新設する特急列車に関する記者会見を行い、列車名を通勤特急「らくラクはりま」とし、平日朝に姫路発大阪行1本、平日夕方以降に大阪発姫路行1本を運行すると発表した。運行開始時期は2019年春とされた。
通勤特急「らくラクはりま」は、JR神戸線の利用者が快適に充実した通勤時間を過ごしてもらうことを目的に新設される列車。特急「くろしお」で使用される6両編成の289系を使用し、座席数は全351席。1号車は運転台側の半室がグリーン席、連結部側の半室が普通車指定席となっており、この普通車指定席を女性専用席(エリア)として18席を用意する。2・3号車は普通車自由席、4・5・6号車は普通車指定席とする。
停車駅は大阪駅・三ノ宮駅・神戸駅・明石駅・西明石駅・加古川駅・姫路駅。新快速の停車駅である尼崎駅・芦屋駅を通過する一方、三ノ宮駅以西は新快速と同様の停車駅となる。大阪~姫路間の所要時間は新快速の1時間5~10分に対し、「らくラクはりま」は約1時間とされ、速達性が向上。平日朝の上りは姫路・明石方面から神戸・三ノ宮・大阪方面への通勤に便利な時間帯に設定される予定となっている。
平日夕方の下りは、現行の特急「はまかぜ5号」(大阪駅18時4分発)の後、特急「スーパーはくと13号」(大阪駅20時6分発)の前の時間帯に設定される予定。「らくラクはりま」を加えたこれら3列車をおおむね1時間おきに運行することで、明石・姫路方面へ帰宅する際、利用しやすい時間帯に特急列車を選べるダイヤにする計画だという。
ちなみに平日17~19時台は現在も大阪駅始発、姫路方面の新快速が設定されており、その中の1本に乗車してみたが、始発駅の大阪駅からすでに立ち客であふれ、尼崎駅でさらなる混雑となった。西明石駅発車後に補助シートが使用可能となるまで、容易に座れない状態が続いた。
記者会見では、JR西日本執行役員 近畿統括本部神戸支社長の多田真規子氏が「らくラクはりま」の概要説明を行った。新たな通勤特急の導入にあたり、JR神戸線において新駅開業や新快速の12両編成化、沿線のショッピングセンターの開業・リニューアル等によって「大変多くのお客様にご利用いただいており、JR神戸線をさらに便利に快適にしたいとの思いから、通勤向けの特急列車を新設することとしました」と説明した。
新快速「Aシート」とともに多様な着席ニーズに対応
列車名に採用された「らくラク」に関して、多田氏は「楽にきっぷが買えて」「楽に乗れて」「楽に過ごして」「楽に行ける」という4つの「楽」を提供したいと話す。「スマホから『e5489』で座席を予約でき、チケットレスで楽に乗車できます。駅ホームで長時間並ばなくても、楽に座れます。車内ではコーヒーを飲みながら資料を確認したり、本を読んだり、おやすみになったりと思い思いに過ごせます。出発地から目的地まで、楽に過ごしていただきたいと思っています」とのこと。「はりま」は兵庫県西部エリアの「播磨国」に由来し、「自然が豊かでほっこり」としたイメージをひらがなで表現した。
おもな区間の特急料金(通常期)は、大阪~三ノ宮・神戸間が普通車指定席1,170円、普通車自由席650円、大阪~明石・姫路間が普通車指定席1,490円、普通車自由席970円。多田氏によれば「通勤時間帯に繰り返しご利用いただきたい」とのことで、J-WESTカードに加入した上で「e5489」からチケットレス特急券を購入した場合、大阪~三ノ宮・神戸間510円、大阪~明石間620円、大阪~姫路間720円と指定席がお得に。「らくラクはりま」だけでなく「スーパーはくと」「はまかぜ」も同様の価格で利用できる。「『らくラクはりま』『スーパーはくと』『はまかぜ』を一層便利にご利用いただけるように、お得なキャンペーンも検討しています」と多田氏は話した。
質疑応答では、同時期に導入予定の有料座席サービス、新快速「Aシート」との差別化に関する質問も。新快速「Aシート」は琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線(東海道・山陽本線)を対象に、1日あたり上下4本の列車で導入され、空席があれば自由に座ることができる。多田氏は対象となる区間が異なること、新快速「Aシート」は事前予約や座席指定を行わないことなどを挙げた上で、「『らくラクはりま』は特急列車の車両を使い、事前に座席を予約でき、必ず座りたいという要望に応える列車となります。『座りたい』にもさまざまなニーズがあることを踏まえ、サービスを提供したいと思っていますし、サービスが始まってからも必要な改善があれば進めていきたい」と説明した。
明石駅・加古川駅への停車にも期待
「らくラクはりま」の運行区間は山陽新幹線も並行するが、「場合によって移動手段を使い分けられるというのがこのエリアの特徴であり、強みでもあると思います」と多田氏。現在、JR神戸線では特急「スーパーはくと」「はまかぜ」が運行されており、自由席に乗車する定期券利用者が一定数いることも把握しているとのことだが、現行の特急列車では通勤時間帯の運行に対応できていなかった。このことも「らくラクはりま」を導入するきっかけのひとつになったという。
新幹線が停車しない明石駅・加古川駅などにも「らくラクはりま」は停車する。これらの駅は「通勤時間帯、たくさんの方々に並んで乗車していただいており、新快速の車内も非常に混み合っている状況」(多田氏)であり、通勤特急が停車することへの期待は大きいようだった。
琵琶湖線・JR京都線で特急「びわこエクスプレス」が運行され、特急「はるか」も多くの通勤利用者がいることからも、JR西日本の列車において通勤時間帯の着席ニーズがあると認識している様子。「座ってゆっくり通勤したいという方は増えると想定しています。他線区の状況なども見ながら、ニーズがあるならやってみようということで、(『らくラクはりま』の導入に)踏み切ったところです」と多田氏は話していた。