平和な日常が続いていると、気にとめることはありませんが、空き巣などの被害は、決して他人事ではありません。警視庁が発表したデータによると、東京都内の平成29年の住宅対象侵入窃盗(「一戸建て住宅」「その他の住宅」「中高層住宅(4階建て以上)」を対象とする「空き巣」「忍込み」「居空き」)の件数は合計2,681件でした。単純計算にして、1日に7件もの被害がどこかの家で発生していることになります。

これだけの被害が発生している中で、「自分には関係がない」と安心しきってしまうのは、危険ではないでしょうか。特に一人暮らしは留守の時間が長くなるので、より用心しておいたほうがいいでしょう。そこで今回は、空き巣の手口やその対策などをご紹介します。自分にもできる対策は積極的に取り入れて、安心できる生活を送りましょう。

空き巣の手口

侵入手段などを把握しておくことで、防犯対策に役立てましょう。

ピッキング

「ピッキング」という名前を聞いたことがあるという方も多いと思います。これは「ピック」という金属製の工具を鍵穴に入れて、開けるという手口です。ピッキング防止に対応している種類の錠でなければ、ものの1分ほどで解錠され、侵入されるといわれていています。

サムターン回し

ドアの外側からドリルなどによって穴を開け、サムターンと呼ばれるドアロック用のつまみを回して解錠する手口です。ドアにドリルで穴を開ける以外にも、ドアスコープやドアノブを破壊してできた穴、あるいはドアと壁の隙間から工具を入れてサムターンを回すという手口もあります。

カム送り解錠


シリンダーを浮かしてできた隙間から特殊な工具を差し込み、錠の本体を直接攻撃して解錠する方法です。これにより、ピッキング防止に対応しているシリンダーでも解錠されてしまうという手口です。

しかし、この手口で解錠可能な錠はほぼ特定されており、警察庁から情報が公開されています。それらの錠にしても、すでに廃番になっているかバージョンアップされて対応済みのものが多いようです。念のため築年数が古い物件などは、一度確認しておいたほうがよいでしょう。

ドアのこじ破り

強引で単純な手口ですが、ドアと壁の隙間にバールのような工具を差し込み、力わざで錠を破壊して侵入する手口です。対策が不十分なドアや錠だと、短時間で侵入されてしまうこともあります。

ガラス破り

窓の錠付近のガラスを破り、その穴から手を入れて解錠する手口です。慣れた空き巣ならほんの数秒で破壊し、侵入するといわれています。平成29年の警視庁のデータでは、一戸建て住宅の空き巣被害の侵入手段はこのガラス破りがもっとも多い手口となっています。

無締まり

これは、戸締まりを忘れたドアや窓から侵入されるケースです。意外に思われるかもしれませんが、平成29年の「中・高層住宅」と「その他の住宅」における空き巣の侵入手段としてもっとも多かったのが、この無締まりです(警視庁データ)。

狙われやすい物件

次に、空き巣に狙われやすい物件の条件を紹介します。もちろん該当する物件のすべてが危険だというわけではありませんが、用心をするにこしたことはないでしょう。

線路沿いに建っている物件

空き巣がドアを解錠しようとするときには、必ず音が出るものです。しかし、線路沿いに建っている物件なら、通過する電車の音に紛れて解錠し、その音を周囲に気づかれないようにすることができます。また、部屋を物色しているときも、音を気にせずにいられるという点で、空き巣に狙われやすいと考えることができます。

観光地が近くにある物件

日常的に不特定多数の人がいるため、見知らぬ人がいても不審に思われにくく住民の警戒の隙間をつきやすくなります。また、空き巣にとっては、人ごみに紛れて狙いを定めた物件まで近づくことや逃走がしやすくなります。万が一犯行に及ぶ際、誰かに声をかけられたとしても、道に迷った旅行者のふりをして、何食わぬ顔でその場を離れることができてしまいます。

人通りの少ない道路に面している物件

目撃される心配が少ないため、空き巣が安全だと判断してしまう一因となります。また、普段は人通りが多くても、夜や休日など、特定のタイミングで人通りが少なくなるような道路に面している物件も、同じく狙われやすくなるでしょう。

高層階にある部屋

1階が狙われやすいというのは聞いたことがあるかもしれませんが、2階以上の部屋だからといって、狙われないということはありません。物件のそばに足場となるような塀や電信柱、隣家の屋根などがある場合には、そこを利用して空き巣が侵入してきます。また、「自分は1階じゃないから安心だな」といった具合に、高層階になるほど戸締まりが疎かになってしまう傾向があるようで、そういった高層階にある無締まりの部屋が狙われる危険性があるのです。

エレベーターや階段に近い部屋

空き巣が逃走経路を確保しやすいという理由で、エレベーターや階段を上ったすぐの場所にある部屋は、狙われやすいといえますので、戸締まりは念入りにしておくようにしましょう。

ドアや窓、バルコニーが外から死角にある部屋

空き巣の侵入経路としてよく狙われるドアや窓、それにバルコニーなどが外から死角になっている場合、その部屋もターゲットにされやすいかもしれません。空き巣はピッキングやガラス破りなど、何かしらの手口を使って侵入を試みますが、その作業中に外から見られる心配がないとなると、やはり侵入しやすいとみなされてしまうでしょう。

ポストが溢れかえっている部屋

郵便物がポストにたまっている部屋は、空き巣に向けて「長期間留守にしていますよ」と教えてあげているようなものです。そういった部屋は、格好のターゲットにされてしまう恐れがあります。

空き巣対策

次に、しておきたい空き巣対策をご紹介します。今日からすぐに始められるものもありますから、ぜひ生活に取り入れて、安心できる部屋を目指してください。

鍵をこまめに閉める

非常に単純な対策ですが、無締まりによる空き巣の件数が多いことは、先ほどご紹介した通りです。「ちょっとそこのコンビニまで行くだけだから」「ポストに郵便物の確認に行くだけだから」といった油断をすることなく、戸締まりはしっかりと行うようにしましょう。それだけで、かなりの対策となることでしょう。

また、同様の対策として、カーテンをこまめに閉めることも意識しておきましょう。外から部屋の中が見えてしまうと、空き巣の目につきやすくなってしまいます。また、「防犯意識が薄い人が住んでいるんだな」と思われ、狙われてしまうかもしれません。鍵とカーテン、ともにこまめに確認をするようにしましょう。

スペアキーを玄関周りに置かない

鍵を失くしてしまったときのため、あるいは恋人や友人が来るからと、ドアの周辺にスペアキーを置いている人がいるかもしれません。しかし空き巣は、スペアキーが置いてあるような場所を熟知しています。植木鉢の下、ポスト、水道メーターなど、本人は上手く隠しているつもりでも、非常に危険です。玄関周りにスペアキーを置かないようにしましょう。

防犯意識が低いとわかる雰囲気を作らない

ポストが郵便物で溢れかえっている、玄関周りが物でごちゃごちゃしている、洗濯物がずっと干しっぱなしなど、「この部屋の住人はあまりしっかりした防犯意識を持っていないな」と空き巣に思われると、狙われてしまう危険性があります。雰囲気というと難しいかもしれませんが、片付けや整理整頓が防犯対策に繋がる、というように意識をしておきましょう。

玄関ドアに対策を施す

空き巣の侵入経路のひとつである玄関ドアに、対策を施しましょう。防犯対策がされている鍵に取り換えることができればいいのですが、賃貸だと簡単にはいかない場合があります。そういうときには、後付けで増設できる補助カギという手段があります。これなら種類によっては簡単に設置することができ、ドアや壁を傷つけてしまう心配もないでしょう。それでも勝手に設置してよいのか迷う場合は、大家さんや管理会社に問い合わせをしてみましょう。

窓に対策を施す

窓から侵入されるケースも多いので、こちらにも対策が必要です。玄関ドアに比べると鍵の増設が簡単にできるので、ぜひ設置しておきましょう。また、ガラスが破られてしまう恐れもありますから、窓に衝撃があった場合に大きな音が鳴る防犯フィルム、防犯ブザーなどを取り付けておくとより安心でしょう。

バルコニーへの対策

バルコニーへの防犯対策には、センサーライトが有効です。人が近づくと反応してライトが点きます。空き巣が近づいてきても、このライトが反応することで、侵入を断念する可能性が高まるといわれています。さらに、ベランダに物を置いて侵入されにくくするという方法もあります。空き瓶などを置いておくと音が出やすく、さらに防犯効果が高まります。

防犯意識を高めて、安心できる生活を

今日までが安全だったからといって、明日も空き巣に狙われないという保証はどこにもありません。必要以上に不安に思って生活に支障が出ては困りますが、安心して毎日を過ごすためにも、日頃から空き巣対策を行っておきましょう。



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