引っ越しの前と後で、都道府県や市区町村が変わる場合、住民税はどこに払えばいいかご存知ですか? 年度の途中での引っ越しの場合、迷ってしまう方も多いと思います。

引っ越し前と後の住所のどちらからも請求され、二重に払うことになってしまうかも……と心配される方もいるかもしれませんが、ご安心ください。

税金の手続きは、ややこしいと感じる方も多いかもしれませんが、しっかりと理解すれば難しいことはありません。今回は、引っ越しに関わる住民税の手続きについて、わかりやすく説明していきます。

引越し後の住民税、どこに払う?

別の都道府県や市区町村に引っ越した場合、どこに住民税を払えばいいのか迷う方も多いと思います。

そもそも住民税とは

住民税とは、住民票がある市町村へ納める「市町村民税」と住民票がある道府県へ納める「道府県民税」の総称です(東京都の23区と区外に住民票のある人には別の取り決めがあります)。主にその地区の治安を維持し、公共事業や公共施設のために使われる税金です。

住民税は個人だけでなくその地域に本社や事務所、営業所がある法人にも支払い義務があり、そちらは「法人住民税」と呼ばれますが、この記事では個人の払う住民税についてお話をしていきます。

「普通徴収」と「特別徴収」

税額は前年度の所得から計算され、「普通徴収」と「特別徴収」という2つの納付方法があります。

普通徴収は個人事業主などの方が対象になり、自分の住んでいる都道府県や市区町村から送られてくる納付書や口座振替で払うことが可能です。1年分を一括で、または4期(6月末、8月末、10月末、1月末)に分けて払うことができます。ちなみに、郵便局や銀行、役場の窓口、コンビニなどで支払えます。

特別徴収は、給与を会社から貰っている場合、会社がその給与から天引きし、払う方法です。しかし、会社を退職した場合などは普通徴収に切り替わるので、払うのを忘れないようにご注意ください。

また、派遣社員の場合、住民税の支払いについては、派遣会社に確認し、払っていなかった、とならないように注意しましょう。この特別徴収の制度と似た制度に、源泉徴収というものがあります。これは、所得税などの税金を差し引き、会社が社員の代わりに払うというものです。

住民税額は前年度の所得から計算される

住民税の額は前年度の所得(1月から12月)から計算されます。ちなみに、その年の1月1日時点で収入のない状態でも、前年度に少しでも収入があれば、課税の対象になります。

ちなみに、収入のい主婦や学生などで、年収が103万円以下の場合は、住民税の支払いが免除されます。

引っ越し後の住民税はどこに払う?

さて本題に戻りますが、引っ越しをして、違う都道府県や市区町村に引っ越した場合、旧住所と新住所、どちらに住民税を払うべきなのでしょうか?

結論から言うと、前に住んでいた都道府県や市区町村に払います。住民税は、その年の1月1日時点に住んでいた住所がある都道府県や市区町村に払うことになっているからです。例えば、1月2日に引っ越したとしても、1月1日まで住んでいた旧住所の都道府県や市区町村に払うことになります。

普通徴収で住民税を支払っている方は、引っ越し後も、その年の末までは引っ越し前の都道府県や市区町村から届く納付書で払えば大丈夫です。特別徴収で会社に住民税を払ってもらっている場合も、その年の末までは、会社が引っ越し前の都道府県や市区町村に払ってくれます。

引っ越しの際に必要な住民税の手続き

前述したとおり、住民税はその年の1月1日に住んでいた都道府県や市区町村に払うため、引っ越し後に特別な手続きが必要になる、ということはありません。

引っ越し後に必要な「転入届」「転出届」の手続きをおこなっておけば、住民税の納付先の切り替えの時期に、新しい納付先の都道府県や市区町村から納付書が届きます。(特別徴収の場合は、会社に新しい納付先の知らせが来ます)。

以前住んでいた都道府県や市区町村と新居の都道府県や市区町村への二重払いになることにはなりませんので、ご安心ください。

万が一、「転入届」と「転出届」の手続きをおこなわなかった場合、次の年にも引き続き以前の都道府県や市区町村に住民税を納めることになります。しかし、転入をした日から14日以内に手続きをすることが法律で定められており、期間内に手続きをおこなわなかった場合は、5万円以下の過料が科されるとされていますので、注意が必要です。

住民税の滞納には気をつけよう

特別徴収で、会社が給料から天引きし、住民税を代わりに払ってくれている場合は心配ありませんが、普通徴収で、自分自身が住民税を払う場合は、滞納しないように気をつけましょう。

ここでは、住民税を滞納するとどうなるのか、住民税を滞納しないための対策をご紹介します。

住民税を滞納してしまうとどうなる?

納付期限が過ぎてしまうと、20日以内に督促状が納め先から届きます。主な内容は「納税金額と延滞金」、「納付期限」です。住民税だけでなく、延滞金まで払うことになるのはもったいないですよね。

また、督促状を無視し続けると、1か月から3か月以内に催告状が届き、そこには「強制執行」という注意喚起の文言が書かれています。また、税務署や役所から催促の問い合わせが来る、担当者が催促に家に来る場合があります。さらに、財政調査がおこなわれ、財産が差し押さえられるなどの「強制執行」に至ることもあります。

ここまで放っておいてしまうと、預貯金口座からお金が引き出せなくなったり、所有物が競売へとかけられてしまったりすることもあります。トラブルを避けるためにも、住民税の滞納は絶対におこなわないようにしましょう。

住民税を滞納しないための対策

では、住民税を滞納しないようにするにはどうしたらいいのでしょうか? 一番確実なのが、納付書の到着後、すぐに、銀行、郵便局、役場の窓口、コンビニなどで一括で払ってしまうことです。

しかし、一括で払うためには高額のお金を用意しなければいけません。そんなお金はすぐに用意できないという場合もあると思いますので、その場合は、住民税を4期に分けて払う手続きをしましょう。その際、口座振替を申し込むと、自動的に住民税の納期限に引き落としてくれるので、忘れることはありません。

口座振替でない場合、納付期限の都度、銀行や郵便局、役場の窓口、コンビニなどで払うことになり、手間がかかります。なので、口座振替を選択しておけば、毎回振り込みに行く手間が省け大変ラクで、払い忘れもなくなるので、検討してみるのはいかがでしょうか。

どうしても住民税が支払えないときには

今は家計が苦しくて、住民税が支払えないという方は、差し押さえの免除と納税の分割をしてもらえる猶予制度があります。猶予が認められれば、延滞金も支払わなくて済むようになるので、万が一の場合には、忘れずに手続きをおこないましょう。

スムーズな手続きになるよう、やるべきことを把握する

引っ越しの際は、おこなわなければならない手続きが多く、頭がパンクしてしまうかもしれません。しかし、住民税は引っ越ししたからといって、必ず手続きが必要になるわけではありません。

引っ越し後に必要な「転入届」「転出届」だけ忘れずに手続きをおこなえば、住民税の納付先が切り替えとなる時期に、新しい納付先の都道府県や市区町村から納付書が届くようになります。また、会社員の方で会社に住民税を天引きして払ってもらっている場合も、会社に新しい納付先の知らせが届くので、会社に住所変更の手続きをしておけば、手続きは必要ありません。

普通徴収で、個人で住民税を納付しなければいけない人は、納付期限をしっかりと頭に入れ、口座振替で住民税を払う手続きをするなど、必ず払うことができるようにし、くれぐれも滞納にならないように、気をつけましょう。



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