今年も牡蠣の季節がやってきた! 生牡蠣、蒸し牡蠣、焼き牡蠣……調理法を考えるだけで、すでに空腹感が増してくる。旬のシーズンに突入して飲食店はもちろん、自宅でも美味しい牡蠣を楽しみたいと思う人も多いはず。そこで今回、牡蠣の養殖を手がけるプロに、美味しい牡蠣の見分け方と調理法を伝授してもらったのでご紹介しよう。
牡蠣についてレクチャーしてくれたのは、牡蠣を主体とするレストラン(オイスターバー)を経営する「ゼネラル・オイスター」グループが、富山県で運営する「海洋深層水かきセンター」の代表取締役社長を務める津久井研悟さん。牡蠣の産地・愛媛県で養殖を手がけていた「牡蠣のプロ」だ。
牡蠣は3度楽しめる
牡蠣の旬は11月上旬だが、温暖化の影響で旬が徐々に遅れてきている関係で、今がちょうど牡蠣のレギュラーメンバーが揃い始めた頃だという。牡蠣通の間では、11月のはしりを味わい、栄養を蓄えた年明け頃に2度目を楽しみ、旬のピークとされる3月~4月に3度目の牡蠣を堪能するという。さらに牡蠣は生息地が2km離れただけで、潮の流れやストレスの度合いによって味が変わるほど、繊細な生き物だという。時期や場所によって味が変わる牡蠣との出会いは、まさに「一期一会」だ。
栄養素たっぷり&ヘルシーなスーパーフード
牡蠣は低カロリーで高タンパクのため、美容や健康に良い食材だという。エネルギーの元となるグリコーゲンや、日本人に不足しがちな必須アミノ酸やタウリンも多く含んでいる。また美肌に効果的だとされるカルシウムや亜鉛などのミネラル類も多い。さらには血管・血液の健康維持に重要なEPA(エイコサペンタエン酸)や、「頭が良くなる」と言われているDHA(ドコサヘキサエン酸)も入っている。またコレステロールの吸収を抑える植物性ステロールが含まれており、これだけの栄養素が詰まっているにも関わらず、カロリーは1粒約13kcalと低カロリーだ。まさにスーパーフードといっても過言ではないだろう。
簡単過ぎる「美味しいむき身の見分け方」
そんな魅力がたっぷり詰まった牡蠣だが、普段私たちの食卓に並ぶものは、大抵はスーパーで販売している10個入りなどでパック詰めされた牡蠣のむき身だろう。その中で津久井さん直伝の美味しい牡蠣を見分ける4つのポイントは驚くほど簡単だった。
見分けるポイントは、以下の4点。
(1)身が厚い
(2)貝柱が大きい
(3)色は絹ごし豆腐のような淡いクリーム色
(4外套膜(がいとうまく)の厚みがあり黒ぐろしたもの
この中でも、(4)が最も見分けやすい。外套膜は聞き慣れない言葉かもしれないが、牡蠣の外側の黒っぽい部分を指し、ここが厚みがあり黒ぐろとしているものは、元気な牡蠣と言えるそうだ。そのため、スーパーに立ち寄った際には、外套膜に厚みがあり黒いものが多く入ったパックを選ぶと、栄養を多く吸収した美味しい牡蠣が含まれている可能性が高いという。
「美味しい殻付きの牡蠣の見分け方」
新鮮な殻付きの牡蠣は、魚市場に足を運んだ際や、通販サイトなどでも数多く取り扱っている。むき身と違って中身を直接見ることができないが、目利きのポイントとして「殻が黒っぽく、厚みと幅がある」ものを選ぶと、元気な牡蠣である可能性が高いそうだ。
牡蠣のおすすめ調理法3種
津久井さん曰く「牡蠣の生産者が一番好きな食べ方は蒸し牡蠣」とのことで、自宅で簡単にできるおすすめの調理法を教えてくれた。殻付き牡蠣は、表面を流水で洗い、鍋の中には水深2センチほどの牡蠣が少し浸かるぐらいに、割り水を入れる。割り水は日本酒やワインを用いることが多いが、酒だけだと焦げやすいため、酒 (1):水(4)の1:4の割合がおすすめだという。中火でほどよく過熱すると、牡蠣の無駄な水分が抜けて味が濃厚になるという。さらに100円ショップなどで販売している蒸し器を使用すると、鍋に牡蠣が直接付かず、割り水の水分が上手に牡蠣に行き渡りさらに美味しく仕上がるとのこと。
生食用のむき身の場合は、牡蠣独特の匂いやぬめりが苦手という方も多く、その場合は30秒ほど湯がく下処理を施すと、外套膜が開き匂いやぬめりを追い出してくれるという。ただし一気にまとめてお湯に入れてしまうと温度が下がってうまく下処理ができないため、しゃぶしゃぶのように一つひとつ行うとよりクオリティーが上がるという。さらに氷水で身を引き締めれば、水分を切ってから牡蠣フライにしても良し、そのまま大根おろしとポン酢と合わせても最高だという。
冷凍の粒牡蠣の場合、あまり質が良くないものも少なくないというが、牛乳に3%の塩分を加えた塩牛乳に一晩漬けておくと、乳のタンパク質が牡蠣の臭みを吸収して消してくれるとのこと。一晩漬けた後に、牛乳を捨てて軽く洗って調理すると、ぷっくりした牡蠣を味わうことができるという。
バリエーション豊富な牡蠣料理を堪能
牡蠣の魅力を存分に聞いたところで、メニューを一新したばかりだという同社が運営するオイスター テーブルで、旬の牡蠣を堪能してきた。
牡蠣の中でも最も美味しいという「1年モノ」の若い牡蠣をメインで使用している同社のメニューの中で、ひときわ目を引くのが、ずらりと並んだ牡蠣が圧巻の「焼き牡蠣全種盛り合わせ 10ピース」(4,650円)。
10種類の趣向を凝らした焼き牡蠣のメニューは、プリプリの身とガーリックの香ばしさがバターのほのかな甘味に包まれて食欲をそそる「香草ガーリックバター」、わさびマヨネーズにプチプチと弾けるイクラがソースとなって、クリーミーな味わいを生み出す「わさびマヨネーズとイクラの焼き牡蠣」など、毎回新しい感動を舌にもたらしてくれる。どれもフォトジェニックな見た目に加え、折り紙付きの濃厚で厚みのある牡蠣が見事にマッチしている。
蓋が開いた途端、ほどよく蒸されたぷくぷくとした牡蠣の身に、艶やかささえ感じてしまったのが、「炊きたて! 牡蠣釜飯」(1,790円)。窯の中にびっしりと詰め込まれた牡蠣からこぼれたエキスがご飯に染み渡り、芳醇な香りがしっかり胃袋と心をわしづかみにする。噛むほどにぷりっぷりの身からあふれる旨味と、牡蠣から染み出したエキスを吸ったほどよい塩加減のご飯の組み合わせは抜群だ。
牡蠣料理に合わせて作られたスペインのワインの名門「ミゲル・トーレス・チリ社」とのコラボワイン「CACCCI(カッキー)」は、料理や好みによって4種類の飲み方を堪能することができる。調理法だけでもさまざまな味に変化する牡蠣との組み合わせは多彩で、選ぶだけでもワクワクするが、おすすめの飲み方も教えてくれるのでぜひ参考にしてもらいたい。
牡蠣の魅力を余すとこなく伝授してくれた同社では、11月30日まで、「JAPAN OYSTER WEEK November」を全国のゼネラル・オイスターグループ26店舗で開催している。時間は17時~。期間中は、旬の牡蠣をたっぷり楽しめるメニューを用意する。「牡蠣つかみ取り」(1回1,980円)では、山盛りの殻付き牡蠣の中からつかみ取りした牡蠣を、生牡蠣、焼き牡蠣、バターソテー、蒸し牡蠣の4つの調理法から選んで食べることができる。この機会に足を運んで旬の牡蠣を存分に味わってもらいたい。
※金額はすべて2018年11月時点のもの
※価格はすべて税別