ASUS JAPANがゲームに特化したスマートフォン「ROG Phone」を発売した。いわゆる「ゲーミングスマホ」に分類されるデバイスが初めて日本市場に上陸する形になった。
近年、ゲーミング市場はプロゲーマーの活躍や「eスポーツ」の人気が高まり、活況を呈している。これまではPCを中心に盛り上がっており、日本はやや乗り遅れていたが、モバイルへと拡大する兆しが見えてきたことで、注目度が上がりそうだ。
PCを中心に盛り上がってきたゲーミング市場
世界のゲーミング市場の拡大を牽引しているのが、PCだ。高性能で拡張性も高いことから、「eスポーツ」に採用されるFPSやRTSといった競技性の高いゲームに向いている。日本はゲーム大国とされる一方、コンシューマー機やモバイル端末の人気が高いことから、eスポーツには乗り遅れているのが現状である。
国内における課題として、eスポーツの試合の観客や、プレイ人口の少なさが指摘されている。プロスポーツと同様に、観客が少なければビジネスとして成立しない。そこで期待されるのが、モバイルへの対応だ。
スマホ黎明期にはパズルゲームやカードゲームが主流で、現在でもその人気は続いているが、スマホの性能は急速に高まっており、部分的にはPCに肩を並べるレベルに達している。日本の若年層に大ヒットした中国NetEaseのバトルロイヤルゲーム「荒野行動」も、スマホ版を中心に据えている。
こうした本格的なスマホゲームのプレイヤーが増えるにつれ、ハードも進化しており、海外では複数のメーカーが「ゲーミングスマホ」を販売している。その中で台湾のASUSはゲーミングブランド「ROG」のスマホを発表し、日本初上陸を果たす形になった。果たして普通のスマホとどう違うのか、以下に見ていこう。
ゲーミング向け機能を満載した「ROG Phone」
ASUSの「ROG Phone」は、ゲーミングに特化した機能を満載したAndroidスマートフォンで、スマホの最上位モデルに採用される「Snapdragon 845」チップの性能をさらに引き上げた「オーバークロック版」を搭載している。8GBのメモリや512GBのストレージはPCに匹敵する。
だが、スマホで高い性能を引き出すことは意外と難しい。その理由が冷却の問題だ。温度が上がるとスマホは性能を落とすことで部品を守ろうとする。スマホを持つ手が汗ばむのも不快だ。そこでROG Phoneは空冷ファンを装着して冷やせるようになっている。
しかし、PCと比べるとスマホは操作性に限界がある。例えば、画面をタッチしようとすると、自分の手で画面が見づらくなる。そこで、端末の側面に触れることでタッチ操作を代用する機能を搭載。画面をなるべく広く見渡せる操作感を実現した。
ほかにも大型ディスプレイやキーボードをつなぐドック、スマホに装着するコントローラーなど、専用の周辺機器を同時発売する。
ROG Phoneの本体価格は11万9500円(税別)で、スペックを考えれば妥当な価格といえる。だが、ASUSのROGはプロゲーマーを意識したブランドであることが示すように、カジュアルに楽しむ層に向けた製品ではない。スマホを駆使するプロゲーマーが活躍するような、「モバイルeスポーツ」市場が広がるかどうかが鍵になるだろう。
過熱するスマホゲーム人気を背景に、ゲーム大会や動画配信で人気を集めるプレイヤーは徐々に増えている。ASUSの取り組みとしては、企業や学校法人向けの説明会を開き、プロゲーミングチーム「DETONATOR」と連携したイベントも開催していくという。
日本では若者のPC利用率が低いとされる一方、高性能なスマホが広く普及しており、本格的なスマホゲームが爆発的に普及する下地はある。ゲーミングスマホの上陸をきっかけに、モバイルeスポーツの人気に火が付くかどうか注目したい。
(山口健太)