ジャニーズJr.の安井謙太郎が主演を務め、山本涼介、森田美勇人(ジャニーズJr.)、灯敦生といったフレッシュなメンバーが集まった青春映画『ニート・ニート・ニート』(が公開中だ。三羽省吾による同名小説を実写化した同作は、3人のニートとワケあり家出少女が北海道を駆け巡る、ロードムービーとなっている。

公開前の監督インタビューでは、主に男性キャスト3人の印象について話を聞いた。映画が公開された今、メガホンをとった宮野ケイジ監督に、もう少しシーンに踏み込み、ネタバレ気味の話を聞いていく。

  • 宮野ケイジ監督

孤独な浮世者でいてほしかった

――知英さん主演の映画『殺る女』が10月27日に公開されて、今回『ニート・ニート・ニート』が11月23日に公開されて、監督作が続きましたね。

結果的に、と言う感じで、自分としては全然予想はしていませんでした(笑)。

――でも逆に、監督の名前が印象付けられたように思いました。今回の『ニート・ニート・ニート』は北海道を3,300km移動したということですが、監督はどんなところが印象に残っていますか?

とにかく移動距離があって、時間に追われていたという思い出が強いです(笑)。またロケハンの時にここで撮りたい、といっていた場所で、ことごとく天候に恵まれなかったんですよ。だから、天気にも追われていました。

でも今回、いわゆる「ザ・北海道」という風景は全部外しています。だからリアルな生っぽい北海道の風景を撮れたのは良かったですね。また、大自然の中で車を走らせているシーンも結構あり、絵としてダイナミックなので、撮りがいがありました。

また今回、画面を横長のシネスコサイズ(2.35:1)にするのか、ビスタサイズ(1.85:1)にするのか、ギリギリまで迷っていました。カメラマンにも相談して、シネスコでいくことにしたんですが、北海道の大自然の中での彼らを撮っている時に「シネスコにして良かった」と思いました。

――広大な様子が映えていましたよね。車の中のシーンなど、4人が一緒にいるところが多かったと思いますが、揃った時の魅力はどのようなところにあると思いますか?

実は、4人ということはあまり意識していなかったんです。とにかく男3人は常に仲が良いので、役として撮っているときも温度が伝わってきました。一方で、月子(灯)というのはあの中では異質な存在なので、あんまり仲良くならないで欲しくて。

――たしかに、作中ではなかなか気持ちが交わらないですよね。

そうなんですよ。もちろん役者として、4人とも仲は良かったんですが、僕はどこかのタイミングで灯さんを呼んで、「1人の時間をたくさん作ってね」と言いました。というのも、作中では目的のない3人の男たちと、唯一目的がある月子が旅をしていて、彼女は男たちのことを、ずっと嫌悪しているんです。3人の態度も生き方も全て嫌いで許せないけど、どこかのタイミングで、ちょっとだけ許す。だから、それまで月子は孤独な浮世者でいてほしいと思っていました。

ラブシーンにしたかった2人の場面

――ニートの3人が夜の河原で気持ちをぶつけ合うシーンも印象的でした。

3人に関しては、河原のシーンで初めてそれぞれの想いを吐露するので、撮りながらも印象深いです。クランクインする前に、3人の間合いを感じたいだろうなと思い、リハーサルの機会を設けたんですが、それがまさに河原のシーンでした。

リハーサルとは違ったセリフが生まれたのも、あのシーンでしたね。キノブー(森田)がレンチ(安井)に馬乗りになって殴っている場面で、最後に月子が「くだらねぇ」と言うんですけど、あれは台本にはありませんでした。

――そうだったんですね。

現場で段取りをやっているときに、月子役の灯さんを呼んで「くだらねぇ」と言ってほしいと指示しました。「言い方はどうしたらいいんですか?」と質問されたので、「それは任せる。月子だったら、くだらないって思うでしょう」と(笑)。

撮り方も、現場で変えました。リハーサルの時は僕もアップで撮るつもりで近くで見ていたので、彼らは「ここはアップで撮られるんだろう」という想定をしていたと思うんです。でも現場で実際にやってみると、このシーンで寄って丁寧に撮ると、too muchというか、お腹いっぱいすぎるような気がしたので、最後は引くようにしました。彼らは初めて自分の思いをぶつけあっているんだけど、客観的に見たらくだらないことをやっているということは、引きで見せた方が伝わるのかな、と思いました。多分、僕自身が「あ、くだらねぇ」と思っていたんでしょうね(笑)。その時に、月子も「くだらねぇ」と思うだろうなと思ったので、セリフでも言ってもらいました。

あとは、レンチと月子が2人で語っているシーンがあるんですけど、あそこはラブシーンにしたいと思っていました。いわゆる恋愛のラブシーンではないんだけど、心がグッと、最も近づくところにしたくて。

――それは、演じられている2人にも意図を伝えていたんですか?

それぞれに言って、安井くんにも「ここはラブシーンにしたい」と言いました。ただ、どちらが仕掛けるのがいいかは、2人に任せました。1人が想いを寄せていって、想いを寄せて来られた方は受け入れる、ということを見せてほしいということは、伝えました。だから、月子のムードは、あのシーンで変わったかもしれないですね。

■宮野ケイジ
1965年1⽉3⽇⽣まれ、京都府出⾝。監督作品『CHIKANO LiveTour in Japan』(10)、『不良少年3000⼈の総番』(12)、『Moon☆Dream』(13)、『夢⼆〜愛のとばしり』(16)。最新作『殺る⼥』(18)が公開中。

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