資産運用を話題にする記事などで、最近よく見かけるキーワード「ESG投資」。年金運用などを行う機関投資家の中では以前から注目されていましたが、ここ数年はESG投資をテーマにした投資信託やETFが登場するなど個人投資家の間でも話題になっています。ESG投資の考え方、注目される理由など、ESG投資の基本を紹介します。
そもそも「ESG投資」って?
ESGとは環境(Environment)、社会(social)、統治(Governance)の頭文字を組み合わせた造語。この3つの基準を使って企業活動を分析し、投資判断をするのが「ESG投資」です。
簡単にいうと、投資する企業を選ぶときに業績だけでなく、自然環境や人権、情報開示などへの取り組み方を見て判断するということ。かつては、環境や社会への配慮を意識した企業経営はリターンが低いといった否定的な見方もありましたが、リーマンショック以降の短期的な利益追求に対する批判の高まりもありESG投資が注目されるようになりました。
過去にも環境対策に熱心な企業の株式に投資をするといったESG投資に似た手法が話題になったこともありますが、今回は世界中の機関投資家が注目し、ヨーロッパを中心に大きな流れとなっています。
というのは、2006年に国連が機関投資家に対してESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱。2018年6月時点で、世界2000以上の年金、保険、運用機関などがそれに署名をし、その運用資産残高の総額は82兆ドルにも達しているのです。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の投資原則や株主優待にも影響
ヨーロッパやアメリカではすでに大きな流れになっているESG投資ですが、日本では近年、ようやく本格的にESG投資が注目されるようになりました。
というのは、日本はもちろん世界でもトップクラスの機関投資家であるGPIF(Government Pension Investment Fund=年金積立金管理運用独立行政法人)が2015年に国連の責任投資原則に署名し、2017年から国内株式でESG投資を組み入れた運用を開始。投資原則でも「ESGを考慮した取り組みを通じて被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図る」と明示したことが大きいようです。
投資する側の変化を受けて、株主優待に寄付を導入する企業が増えています。たとえば、JTは東日本大震災および熊本地震の復興支援、メニコンはトキ保護募金、動物愛護委員会への寄付が、優待品メニューの選択肢となっているのです。
ESG投資を始めるにはどうすればいい? まだ運用期間が短いのでESG投資のリターンはハッキリしていませんが、年金運用などを行う機関投資家が注目しているのですから、長期的にリターンを生み、ボラティリティ(変動率)が低い投資手法と考えてよさそうです。もちろん、個人投資家にとっても選択肢のひとつとなりえます。
では、どうすれば個人が投資することができるのでしょう。まず考えられるのは、ESGの取り組みに熱心な個別企業の株を購入すること。ただし企業を選ぶにはホームページなどで財務以外の情報を細かく確認する必要があります。専門家が複数の企業の株で運用する、投資信託という方法もあります。ただし、この場合も組み入れている企業の選別方法など、内容をきちんと理解しなくてはいけません。
初心者でも比較的、安心といえそうなのが、GPIFが運用の目安として採用した3つの株価指数に連動するETFに投資する方法です。2018年10月現在で上場されているのは下表の5本。指数に組み入れられている企業をチェックしてみるだけでも、投資のヒントが見つかるかもしれません。