『おっさんずラブ』『アンナチュラル』など、今年ヒットしたドラマの中で、海外のトップバイヤーたちが広瀬すず主演の『anone』をグランプリ作品に選出。リメイクしたい作品には、仲間由紀恵主演の『美しい隣人』をイチオシした。世界で注目されているジャパニーズドラマとは…。10月にフランス・カンヌで開催された国際映像見本市「MIPCOM」(ミプコム)で聞いてきた――。

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  • 「MIPCOM BUYERS' AWARD for Japanese Drama」授賞式

トルコでも知られる脚本家・坂元裕二

「MIPCOM」期間中、カンヌのマジェスティックホテル・サロンクロワゼットを会場に、今年も日本の放送コンテンツを海外にPRするイベント「Jクリエイティブパーティー」が開催。そこで、世界各国のバイヤーたちが日本のドラマを投票するアウォード「MIPCOM BUYERS' AWARD for Japanese Drama」の授賞式が行われた。

参加した日本の放送局は、いずれもMIPCOMの会場に単独ブースを構え、現在放送中の『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日)や、『下町ロケット』(TBS)など、最新作ドラマを並べる面々。NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ、ABCテレビ、読売テレビ、カンテレの全9局から9本がノミネートされた。

ノミネート作品は、4月クールに放送され、大旋風を巻き起こした田中圭主演・吉田鋼太郎ヒロインの『おっさんずラブ』(テレ朝)、古沢良太脚本で長澤まさみ・東出昌大・小日向文世出演の『コンフィデンスマンJP』(フジ)、永野芽郁がヒロインを務めた朝ドラ『半分、青い。』(NHK)、坂元裕二脚本・広瀬すず主演の『anone』(日テレ)、BSジャパン(当時)でドラマ化された蒼井そら主演『逃亡花』(テレ東)といった記憶に新しい作品たちだ。

また“ブラック”な復しゅう劇シリーズ第1弾の木村多江主演『ブラックリベンジ』(読売テレビ)や、神山由美子脚本・仲間由紀恵&檀れい共演の『美しい隣人』(カンテレ)、WEBマンガ原作の山田杏奈主演『幸福のワンルーム』(ABC)も競うかたちで、海外バイヤーが「今買いたい」ベスト・ドラマが選ばれた。

結果は『anone』がグランプリを受賞。これは、審査員メンバーにトルコ人バイヤーが多く占めていたことも影響したようだ。というのも、トルコでは『anone』と同シリーズである『Mother』『Woman』のリメイクが大ヒットし、脚本を手掛けた坂元裕二の名前は現地で知れ渡っている。“坂元作品”としての評価がグランプリ獲得につながったとも言える。

  • 『anone』『Mother』『Woman』などを並べる日本テレビのブース

  • 『下町ロケット』など主力ドラマを世界に売り出すTBSのブース

イスタンブールから『ヤバ妻』逆輸入へ

実は、いま世界的にもリメイクドラマに注目が集まっている。7月クールに放送された山崎賢人主演の『グッド・ドクター』(フジ)は韓国オリジナルの作品で、ハリウッド版は世界各国でもヒットを飛ばし、リメイクドラマの成功例として知られている。ハリウッドのドラマが日本でリメイクされるケースもあり、現在放送中の『SUITS/スーツ』(同)はそのひとつだ。今回、『電車男』(同)がハリウッドでリメイクされることもカンヌ現地で大きく報じられた。

そんな中、ドラマを世界に流通させる手段として有効なリメイクに日本も力を入れようと、今年の「MIPCOM BUYERS' AWARD for Japanese Drama」では、リメイクが可能な作品をエントリー要件にし、アウォードの審査基準にもリメイク性を加えた。

そこで、特別に設けられた「リメイク賞」は『美しい隣人』に最も多くの票が集まった。授賞式の進行役を務めた、トルコのリメイク専門コンサルタントのニルファー・キュヤル氏も、同作が「海外でリメイクされる可能性は十分にある」と太鼓判を押す。

『僕らは奇跡でできている』脚本・橋部敦子氏、豊福陽子Pら現地発行の対談インタビュー記事

「『My beautiful Neighbor』(『美しい隣人』の英題)というタイトルがいい。登場人物の女性キャラクターにも惹かれます。自国だけでなく、海外でもヒットするドラマは文化や地域性を越えるタイトル、ストーリー、キャラクターが必須条件になるからです」と、その理由を教えてくれた。

『美しい隣人』を担当したプロデューサーは、カンテレの豊福陽子氏。現在放送中の高橋一生主演『僕らは奇跡でできている』も手掛けている。豊福プロデューサーがこれまで担当したドラマがリメイク展開されるケースは多く、伊藤英明主演の『僕のヤバイ妻』もそのひとつ。トルコ版が作られ、今年現地で放送された。そのトルコ版が日本に逆輸入されることも決まったところで、イスタンブールで撮影された異国情緒あふれる『ヤバ妻』が日本に近々届けられることになっている。