岳南電車(静岡県富士市)は17日、新たに導入する車両の運行開始にあたり、運行記念イベントとして撮影会・試乗会を開催した。富士急行1000形1編成(2両編成)を譲り受け、岳南電車の仕様に改造し、車両形式名を9000形(モハ9001・モハ9101)とした。
9000形は岳南電車の創業70周年を記念した事業の一環で導入される。京王(初代)5000系としてデビューし、富士急行1000形へと受け継がれた外観デザインはほぼそのままに、車体カラーは岳南電車の代表色「インターナショナルオレンジ」を基調に、昭和の後半から長きにわたり運行された元東急電鉄の車両5000形を思わせる復刻デザインとなった。
車内の座席はクロスシートを主体としており、一部座席を転換クロスシートとすることで2人掛け・4人掛けの変更が可能。ロングシートも配置している。定員はモハ9001が115名(座席定員40名)、モハ9101が114名(座席定員44名)。1両あたりの車両長は18,000mm、車体幅は2,874mm、車重は35.0トン。主電動機は「直流直巻電動機 75KW 4個」、台車形式は「上揺れ枕式空気ばね」とのこと。連結部の貫通扉付近に防犯カメラも設置された。
運行記念イベントでは、9000形が吉原~岳南江尾間を2往復し、乗降は吉原駅のみ、入替制でA列車(吉原駅10時8分発・11時12分着)・B列車(吉原駅11時30分発・12時39分着)それぞれ先着80名に座席整理券を配布することになっていた。吉原駅では受付が始まる前から鉄道ファンらが並び、A列車は受付開始後すぐに定員に達した様子だった。
9時50分頃に9000形が吉原駅2番線ホームへ入線した後、岳南電車代表取締役社長の雨宮正雄氏らがテープカットなどを行い、10時8分に試乗会のA列車が吉原駅を発車した。雨宮氏による車内アナウンスが行われ、9000形について「当社16年ぶりの新車」と紹介した上で、「新車といっても、京王帝都電鉄の時代から49年が経過している車両。昭和44(1969)年8月に製造され、京王5000系、富士急行1000系を経て我々のところへ来ました。当社の規模に見合った車両ということで導入することになりました」と説明した。
雨宮氏は9000系で採用された同社の代表色「インターナショナルオレンジ」についても紹介し、「高い建物に使用する色は航空法で決められており、そのひとつが赤・黄の混合色であるインターナショナルオレンジ。富士市内の煙突群もこの色を用いたものが多く、インターナショナルオレンジは富士市を象徴する色でもあります」と話した。富士市内を走る岳南電車においても、岳南鉄道時代に活躍した旧5000形をはじめ、既存車両7000形などで「インターナショナルオレンジ」の車体カラーが採用されている。
吉原駅を発車した9000形は途中、クリスマス仕様の装飾を施した7000形7001号車の定期列車と待ち合わせを行い、岳南富士岡駅では廃車となった7000形7002号車をはじめ、かつて貨物列車を牽引した複数の電気機関車の姿も。東海道新幹線の高架下を走行し、10時29分に岳南江尾駅に到着した後、10時51分の発車まで撮影時間となった。
その間、隣のホームに8000形(2両編成)の定期列車も到着。岳南電車の既存車両は7000形・8000形ともに京王3000系の改造車であり、京王をルーツとする9000形・8000形が並んだ姿を撮影しようと、多くの鉄道ファンらが集まった。駅構内には7000形7003号車も留置されていた。
運行開始日の9000形は試乗会のA列車・B列車のみの運行。今後は平日朝夕を中心に運用されるほか、貸切列車での使用も予定しているという。一方、クロスシート主体で「観光需要」を推し進める車両とも位置づけられているだけに、イベント参加者からは土日祝日の運用を望む声も多かったようだった。