資産がいくらあれば、"老後の備え"として充分なのだろうか。そして、それは20~30代といった若いうちから備えておくべきなのだろうか。フィデリティ投信は11月14日、そうした誰もが抱える不安に、明確な回答をもたらす「退職準備の指標」を発表した。まだまだ自分には先のこと、と思っているビジネスパーソンにも参考になる内容となっている。

  • 老後の備えはいくら必要? 「退職準備の指標」でチェック!!

    フィデリティ投信が「退職準備の指標」を発表

年収の7倍の資産形成が必要!?

フィデリティで退職・投資教育研究所の所長を務める野尻哲史氏は「退職準備の見える化を進めるために」と題したプレゼンの中で、退職準備のための資産形成ロードマップを紹介した。それによれば、想定退職年齢に設定した67歳では、年収の7倍の資産形成が必要だという。

  • フィデリティ 退職・投資教育研究所 所長の野尻哲史氏

この「退職準備の指標」は、退職を遠い将来のことと捉えている20代の若年層から、すでに退職の準備を進めている現役世代までを対象にしたもの。それぞれの年代で蓄えているべき理想の資産額を「年収の何倍」という形で数値化している。この『年収倍率』では、30歳では年収の1倍、40歳では年収の2倍の資産形成が必要だとしている。

  • 退職準備の道しるべ - 年齢別「年収倍率」

もちろん、あくまで目安。試算では25歳から継続的に資産形成を行い、67歳で退職し、退職後は現役時代の生活水準を維持することを前提としているが、いつまで働けるか、退職金はあるか、いつから公的年金をもらい始めるか、退職後はどんな生活水準で過ごすか、といったことは人によって異なる。ちなみにフィデリティのWebサイトでは、個々人の都合に応じたシミュレーションを試せるようになっている。

  • 退職までの道のりをシミュレーションできる

この『年収倍率』のほかにも、気になる指標が3つある。そのひとつ、『資産形成比率』は16%と割り出された。これは「年収の16%を資産形成に回せ」という意味だ。例えば年収300万円の人の場合、年間の積立総額は48万円、月額で4万円となる。

  • 退職後に備える相互に関連する4つの指標

『持続可能な引出率』は3.9%。つまり年間の引出額が3.9%なら、資産残高が枯渇しないまま老後を過ごせる。例えば67歳で退職した人の資産が5,000万円の場合、1年目に引き出せる上限は195万円となる。

  • 『持続可能な引出率』は3.9%

また公的年金のほかに個人資産から充当すべき生活費『個人資産代替率』は(退職直前の年収の)36%となっている。例えば退職直前の年収が500万円だった場合、(生活水準を変えないならば)個人資産から180万円を生活費に充てることになる。

  • 退職直前の年収と退職後の年収の関係

なお、今回の指標を海外と比較した野尻氏は「日本は公的年金が手厚い。このため個人資産代替率が30%台と低く、個人の資産に依存していない。また低金利が足かせになり、投資収益率が低い」といった日本ならではの特徴を指摘する。

  • 「退職準備の指標」の国際比較

ここで野尻氏は、ビジネスパーソン1万人を対象にしたアンケート調査の結果(2018年実施)を公表した。年代別の『年収倍率』の到達具合を示したもので、それによれば若い人たちは概ね目標金額に達している。しかし、問題はその上の世代だ。

  • 年代別の『年収倍率』の分布

分布表からも、30代後半以降の世代で達成率が下がっているのが分かる。子育てなどにより支出が増えることで、資産形成の道すじからドロップアウトする傾向があるのだ。野尻氏は、そうした人たちに向けて「この目標水準に達しないからダメだ、と諦めるのではなくて、キャッチアップを考えていくことが大事です。目標を少しだけ落とせばまだやれる、と思って資産形成をしていって欲しい」と説く。例えば、予定より生活費を20%コストダウンする。そして、目標としていた老後の資産額を算出し直す。そうした具合に、その時々で最適なゴールを見据えることが重要となる。

人生100年時代のソリューション

このあと、フィデリティ シニア プロダクト ストラテジストの青木康氏は、同社が展開する2つの商品について紹介した。ひとつは値上がり益で長期資産形成を目指す「フィデリティ・ターゲット・デート・ファンド」で、もうひとつはインカム投資で着実に積み上げていく「フィデリティ・コア・インカム・ファンド」。

  • フィデリティ シニア プロダクト ストラテジストの青木康氏

フィデリティ・ターゲット・デート・ファンドについては「株式など高成長投資を、自動的なリスク低減と時間分散でより身近に提供しています」と説明。一方の、フィデリティ・コア・インカム・ファンドについては「利子配当などマイナスにならないインカム投資。着実で安心な資産形成を提供できる」と説明した。

  • 人生100年時代のソリューション、として「フィデリティ・ターゲット・デート・ファンド」と「フィデリティ・コア・インカム・ファンド」を紹介した