創立100年目を迎えるパナソニックが開催したイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」から、とても興味深かったセッションをご紹介しましょう。パナソニック アプライアンス社の社長、本間哲朗氏による『「家電」から「KURASHI」へ。~アプライアンス社の挑戦~』です。パナソニックが考える「未来の家電」について、ヒントを感じられました。
家電やサービスで「暮らし」をアップデート
冒頭では、本間氏がパナソニックの今後の方向性について提言。今までのパナソニック家電は、面倒な家事を「家電でサポート」きましたが、現在は人や家族の暮らしが多様化し、「人」や「家族」ごとに必要とするものが異なります。このため、今後は「一人ひとりの暮らし」や「個人的な体験」を重視した、「暮らしをアップデート」する家電やサービスを目指すと語りました。
本間氏はこれからのパナソニックが目指す「3つの挑戦」についても語り、それらの挑戦に合わせた取り組みも紹介しました。
開発期間はたったの3カ月! 次世代ロボット掃除機
最初の挑戦は「お客様一人ひとりの暮らしに寄り添い続ける挑戦」です。
本間氏は、多様化する暮らしや生活スタイルに合わせるには、ライフスタイルに合わせた製品やサービスの提供が重要だといいます。このため、今後はさらに家電のIoT(モノのインターネット)化やAI(人工知能)の搭載、そして消費者の生活をより高い次元でサポートするための自動操縦……といった最新技術が必要となるといいます。具体例として紹介されたのが、ロボット掃除機のコンセプトモデルです。
このコンセプトモデルは本間氏が指揮をとり、パナソニックと千葉工業大学 未来ロボット技術研究センターのfuRoが共同開発したもの。会場にはfuRo所長の古田貴之氏も登壇し、コンセプトモデルの有用性について説明しました。
最大の特長ともいえるのが、開発期間の短さ。既存の技術を応用し、さらにソフトウェアとハードウェアを同時進行で開発することで、なんと開発期間は3カ月しかかからなかったといいます。
このコンセプトモデルには、2017年にロボット学会で発表されたという超最先端の「自動操縦技術」を採用。開発期間が短ければ「最新技術」が新しいうちに製品化できるというわけです。
開発の陣頭指揮をとった本間氏は「ロボット掃除機は動き回る家電なので、ほかの家電と比較しても知能化が難しい製品。それが成功したということは家電メーカーとして大きな前進」だと語りました。
今までにない「サービス」が家電になる―― チョコレートメーカー
次は「お客様の暮らしに新たな文化を提供し続ける挑戦」。
これは、消費者が気づいていないニーズを掘り起こして、サービスを提供するということ。たとえば、パナソニックが2017年に発売したコーヒーの生豆と焙煎機をセットにしたサービス「The Roast」などが、この挑戦にあたります。The Roastは、ボタン一つで豆が焙煎できるサービスによって、家庭で手軽にコーヒー焙煎するという文化を作りました。
本間氏は、こういった新規事業の創出で重要となるのがスタートアップ時のスピード感だといいます。超巨大企業となったパナソニックでは、社員の小さな発想を拾い上げ、スピーディーに事業化することは困難。そこで、パナソニックは新規事業のスタートアップを目的とした合弁企業、BeeEdgeを設立しました。その第一号案件となるのが、チョコレートドリンク事業です。
水素エネルギー
最後は「お客様一人ひとりの暮らしから社会を変える挑戦」です。
わかりやすい例のひとつが、環境に影響を与えにくい水素発電技術の推進。パナソニックはもともと、ガスから水素を取り出して燃料電池発電を行う「エネファーム」製品を手がけていますが、今後はさらに水素エネルギー活用の取り組みを加速させます。
計画の手始めとして、パナソニックは2021年をめどに「純水素燃料電池」の製品化を計画。この製品は、東京都が主体で推進している、晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業「HARUMI FLAG」に納入される予定といいます。さらに、2022年には水素純度が99.97%という水素製造装置も発売予定です。
現在は山梨県や静岡県で実証実験をしているほか、直近の計画では2019年春の完成を目指して、滋賀県草津に水素ファクトリーを建設。ここでは太陽光パネルで作られた電気などで水素を作り、フォークリフトを水素燃料で動かすそうです。