住宅金融支援機構は11月9日、FP(フィナンシャル・プランナー)を対象にした住宅ローンセミナーを開催した。複雑な制度の理解促進を目的にしている。主催者は「住宅ローンでお悩みの顧客の皆さんに確かな知識を提供するため、本セミナーを役立てて欲しい」と来場したFPに説明した。

  • 複雑な制度の理解促進に! 住宅金融支援機構がFP向け住宅ローンセミナー開催

    住宅金融支援機構がFPを対象に住宅ローンセミナーを開催。今回が2度目の開催となる

【フラット35】について説明

その冒頭、団信・個人業務部長の吉永兼一氏は「住宅政策を実施する機関として平成19年度に発足した住宅金融支援機構は、昨年度から独立行政法人第三期に入った。これまで【フラット35】の利用拡大を目指してきたが、昨年度からは「子育て支援型」「地域活性化型」など、お客様が抱える課題の解決により貢献できる制度を用意している」と紹介する。

  • 住宅金融支援機構 団信・個人業務部長の吉永兼一氏

続いて登壇した団信・個人業務部 個人業務グループ調査役の峰村英二氏は、その具体的な内容に踏み込んで説明した。【フラット35】子育て支援型とは、子育て支援に積極的な地方公共団体のマイホーム取得者に対する財政的支援とセットで、【フラット35】の当初5年間の借入金利を年0.25%引き下げる制度。若年子育て世帯の住宅取得や、親との同居・近居のための住宅取得などの条件を満たせばマイホームでの子育てがしやすくなる。なお、ここで述べる子育て支援(および地域活性化)に積極的な地方公共団体とは、住宅金融支援機構と協定を締結した地方公共団体のことを指している。

  • 住宅金融支援機構 団信・個人業務部 個人業務グループ調査役の峰村英二氏

  • 【フラット35】子育て支援型について

【フラット35】地域活性化型とは、地域活性化に積極的な地方公共団体が行うUIJターンなどでマイホーム取得者に対する財政的支援とセットで、【フラット35】の当初5年間の借入金利を年0.25%引き下げる制度。都会を離れて地方に移住したい、故郷に帰りたい、といった人のマイホーム取得を支援する。

  • 【フラット35】地域活性化型について

住宅金融支援機構と協定を締結した地方公共団体は、11月1日時点で367団体・549事業に上った。子育て支援型については272団体が、地域活性化型については283団体が対応している。なお、受付については約8割の事業が「申込み順」のため、年度途中で申込件数が上限に達することもあるとのこと。峰村氏は「検討いただくお客様には、なるべく早めの行動をお勧めしてください」と注意喚起する。

このほか、長期優良住宅への【フラット35】の活用として、【フラット35】Sを紹介した。金利引下げ期間が当初10年間の「金利Aプラン」と、同 当初5年間の「金利Bプラン」があり、金利引下げ幅はともに年0.25%。【フラット35】Sで対象となる住宅性能として「省エネルギー性に優れた住宅」「バリアフリー性に優れた住宅」「耐震性に優れた住宅」「耐久性・可変性に優れた住宅」の4分野を挙げている。

同様に、中古住宅への【フラット35】の活用として、【フラット35】リノベも用意されている。中古住宅に関する【フラット35】の実績として、峰村氏は「平成15年から全国約18万戸の中古住宅の購入の際にお申し込みいただいている」とアピールする。なお住宅金融支援機構のホームページでは【フラット35】S、および【フラット35】リノベが対象となる物件を含む新築マンション、中古マンションの検索に対応している。

  • 中古住宅への【フラット35】の活用として、【フラット35】リノベを紹介。住宅金融支援機構のホームページでは、対象となるマンションが検索できる

災害復興住宅融資とは?

団信・個人業務部 災害融資グループ調査役の藤井秀作氏は「災害復興住宅融資(高齢者向け返済特例)」について説明した。これは地震、台風、大雨といった被災からの復興を支援するもの。家屋が被災し、建て直すにも自己資金が足りない、そんな高齢者(60歳以上が対象)が新築した家と土地を丸ごと担保にして、資金を借り入れることができる制度となっている。毎月の支払いは利息のみだが、申込人(連帯債務者を含む)が亡くなったとき、その融資住宅および土地が売却されて住宅金融支援機構に一括返済される。

  • 団信・個人業務部 災害融資グループ調査役の藤井秀作氏

好事例として熊本地震で被災し、同制度を利用した高齢者夫妻のケースが紹介された。80歳の夫婦が住宅の再建に必要としたのは約1190万円。そのうち自己資金で支払ったのは270万円だけで、残りの920万円を災害復興住宅融資で充当した。毎月の返済は利息の約2万円のみ。

代々、守ってきた土地を手放すことには抵抗を感じたが、親族と相談して利用を決断したという。ちなみに「リフォーム融資(部分的バリアフリー工事・耐震改修工事)」も用意。こちらも満60歳以上を対象に月々の支払いを利息のみとする「高齢者向け返済特例」を利用できるという。

新しい団信制度

団信・火災保険室 保険企画グループ調査役の北村靖子氏は、新しい団信制度について説明した。それによれば、昨年10月1日からスタートした新団信では【フラット35】の融資金利に団信加入に必要な特約料が含まれるとのこと。これにより別途年払いが不要になった。また新機構団信は「死亡保障+高度障害保険」から「死亡保障+身体障害保険」に変更になった。これにより、従来なら対象外だった半身麻痺、緑内障による視力低下、両耳の聴力レベルの低下といった1級または2級の障害が対象に含まれるようになった。

  • 団信・火災保険室 保険企画グループ調査役の北村靖子氏(左)と、住宅融資保険部 融資保険企画グループ推進役の宮地啓司氏(右)

住宅融資保険部 融資保険企画グループ推進役の宮地啓司氏は、高齢化社会に対応する住宅ローン【リ・バース60】の活用事例を紹介。年金収入で暮らしている老夫婦でも、自宅の老朽化にともなう建て替えや、住宅の建設・購入といった住み替え、住宅のリフォーム、住宅ローンの借り換えが行えると説明した。