スポーツ庁とビル&メリンダ・ゲイツ財団は11月9日、国連が目指す「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、以下SDGs)」達成を目指す「Our Global Goalsプロジェクト」のパートナーシップを結んだと発表した。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催により、世界の注目が集まるこのタイミングを捉えて、世界から貧困を撲滅する活動に注力していきたい考えだ。
社会貢献とマラソンの共通点
スポーツ庁では、スポーツを通じた社会貢献を目指す取り組み「スポーツSDGs」を推し進めている。今回のパートナーシップは、その一環として結ばれたもの。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の機運の高まりに合わせ、SDGsへの関心を集めることで人々の参加を促していく。登壇したビル・ゲイツ氏は、意外にもマラソンの話題から切り出した。
「現在、26.2マイル(42.195km)の世界記録は約2時間2分だそうです。私の生まれた頃は今より10分遅かったし、有森裕子さんの生まれた頃でさえ今より5分遅かった。でも、現代のランナーが過去のランナーより生まれつき優れているからか、というと必ずしもそうではありません。書籍によれば、理由の一つは心理的なものだそうです」とゲイツ氏。
さらに「誰かが新記録を樹立するまでは、誰もが『記録は破れない』と考えてしまう。国連が掲げる野心的な目標も、こうした心理的な壁を乗り越えれば達成できる」と続けた。
国連では、2030年までに「すべての子どもに健康的な生活を送れるチャンスを与え」、かつ「あらゆる場所での貧困を撲滅する」ことを目指している。これに対し、多くの国々は達成に難色を示した。しかし日本をはじめとする国々は、積極的な活動で「決して不可能な目標ではない」ことを証明しつつあると同氏は語る。その具体例として、グローバルファンドの創設やGavi(ワクチンと予防接種のための世界同盟)への貢献などを挙げた。
その上で、日本には「さらなる寛大な投資」と「世界への啓発活動」を求めていきたい考えを明らかにし、「私たちはパートナーシップを通じて、これまで可能とは思えなかった新記録を樹立できると確信しています」と、今後の活動への期待感をにじませていた。
ボールが1個あれば心が元気に
このあと、『東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会』より森喜朗会長が登壇。ゲイツ氏に感謝の言葉を述べるとともに、自身が議長を務めた2000年の沖縄サミットで提唱した「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」の実現に向けて、当時シアトルのオフィスまで同氏を訪ねて寄付金をお願いしたことや、その後にシアトルで一緒に大リーグを観戦したことなど、意外なエピソードを明かした。
また元女子マラソン日本代表の有森裕子氏は、貧困地域におけるスポーツを通じた自立支援活動に意欲を示した。有森氏は「物質的な支援はもちろんですが、人々の心を元気づける支援も大事。例えばボールを1個持っていくことで、現地の子どもたちにエネルギーを与えられます。アスリートだからこそ、伝えられることがあるんです」と話し、多くのアスリートに向けてプロジェクトへの賛同と参加を呼びかけていた。