フジテレビの“土曜8時”に、お笑い番組が帰ってくる――かつて『オレたちひょうきん族』『めちゃ×2イケてるッ!』などが放送されてきた看板枠で、きょう11月10日にスタートする新バラエティ『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(毎週土曜20:00~ ※初回19:00~2時間SP)は、ゴールデン・プライムタイムで、トークやクイズ、情報を盛り込んだバラエティが全盛の中、貴重な存在となった“ただただ笑える番組”ということで、お笑い志望のスタッフたちが目を輝かせて制作に取り組んでいるという。
「一方的に“ドッキリを仕掛けられる”側だった芸能人が、“ドッキリを考える”側になる」というコンセプトを掲げ、ハイテンポで繰り出されるドッキリの数々に、初回収録のスタジオも大盛り上がり。その裏側を、企画・チーフプロデューサーの蜜谷浩弥氏と、演出の中川将史氏というフジ同期入社コンビに聞いた――。
無理難題を実現してきた“美術番長”
――初回のドッキリの手応えはいかがでしたか?
蜜谷:4回放送した特番時代で良かったものをブラッシュアップしたパターンと、今回初めてやってみたパターンがあったのですが、スタッフを今までの優秀なスタッフに加えてさらに強化しているので、VTRの精度もかなり高いものになったかなと思います。収録後も、MCの東野(幸治)さん、小池(栄子)さん含めて、皆さん「面白かった」と言っていただきました。
中川:VTRをスタジオに出すまではめちゃめちゃ不安なんですけど、出演者の皆さんやお客さんが笑ってくれて、初めてホッとできました。今回の収録は、笑い声も大きかったので、その瞬間に「あぁ、やっと始まったな」という感じがしましたね。
――スタッフさんを強化したということですが、どのように増強されたんですか?
蜜谷:特番時代は、僕が最も信頼する制作会社の1つであるIVSテレビ制作さんとガッツリやっていたんですが、そこにプラスして『トリビアの泉』をやっていた木村剛さん(総合演出)や、前回の特番から参加している自分の同期で『とんねるずのみなさんのおかげでした』をやっていた中川(演出)などで構成するフジテレビ社員の班を作って、2班体制にしたんです。フジテレビでお笑いをやりたい人たちが集結しています。
――そうすると、かつて放送されていた『とんねるずのみなさんのおかげでした』や『めちゃ×2イケてるッ!』などのノウハウが生かされる場面が出てくるのでしょうか?
蜜谷:やっぱり脈々と受け継がれているものがありますね。中川が作ってくるVTRだと「このきめ細かいテロップや意地悪なナレーションは『みなさん』っぽいなぁ」と思いますし、木村さんのVTRも「『トリビア』のような旨い小ネタが詰まってるなぁ」と思います。こちらのリクエストだけでなく、それぞれの持ち味をいっぱい重ねて撮ってきてくれるので、僕もすごく楽しみにしています。
――中川さんは、長年『みなさん』に携われていましたが、なにか意識してそのイズムを盛り込んでいる部分はあるんですか?
中川:意識はしていないので、自然と出てしまっているのかもしれません。自分では分からないですが、14年いた『みなさん』のテンポや発想が染みついてしまっているので、これまでの『ドッキリGP』を踏襲するだけではなく、自分の一番面白いだろうと思う撮り方とすり合わせながら作っている感じです。
――『みなさん』で“美術番長清原”と呼ばれていた内山高太郎さんが、特番から引き続き美術進行として参加されますよね。
中川:内山さんは、長い年月一緒にやってきた仲で、僕らの無理難題を全部実現してきた人なので、ドッキリの美術進行としては一番向いているスタッフの1人だと思います。内山さんだから、僕も「無茶だけどできますよね?」とお願いできるので。
小池栄子の姿勢に感動
――初回収録を終えて、東野幸治さんと小池栄子さんのMCのコンビネーションはいかがでしたか?
蜜谷:いやぁ、すごかったです! こちらもスタジオの進行台本を作るんですけど、全然その通りいかなかったですから(笑)。これまで見たことのないコンビで面白い流れになったなと思ったんですけど、小池さんと本番後にお話をしたら、「どうやったらもっとゲストをオイシくできるのか。出て良かったと思われるために私はどういう風にしたら良いのか」ということをおっしゃっていて、「あぁ、そこまで考えて臨んでいるんだ」と感動しました。
中川:2人とも、とにかくドッキリが好きなんだなというのを、見てて思いましたね。もうゲラゲラ笑ってて、コメントを聞いてても2人のちょっと“S”な感じの性格が番組に合ってるなと思いました。誰かがドッキリにかかってるのを、大喜びしてる感じがピッタリなんですよ(笑)
――特に東野さんって、ああいうVTRを見て本当に幸せそうに笑いますよね(笑)
蜜谷:東野さんはMCをオファーするときに、「ウソ臭いドッキリはやりたくない」とおっしゃっていたんですね。何かと規制が多い今の時代にドッキリをやるのは難しいんですけど、そんな中でもやるからには、『ダウンタウンのごっつええ感じ』で歴史に残るようなドッキリを目の当たりにして、自分もかかってきた東野さんが腹を抱えて笑ってくれるものにしたいというのが、ベースとしてあります。だからスタジオ収録でも、東野さんが笑ってるのかをよく確認してますね。
精度を上げてドッキリのプロ集団に
――『金曜★ロンドンハーツ』(テレビ朝日)や、『水曜日のダウンダウン』(TBS)、特番でも『うわっ!ダマされた大賞』(日本テレビ)といったドッキリを放送する番組がある中、『ドッキリGP』の新しさというのはどんなところでしょうか?
蜜谷:やはり、「芸能人が仕掛けを考える」というのが、番組のアイデンティティになります。僕ら制作スタッフの経験上、「こんなの成立しないよ」となってしまうものをなんとか実現することで、見たことのないものが生まれるし、引っ掛けられ慣れた人だからこそ分かるようなきめ細かいものを考えられるという狙いがあります。それともう1つ、これによって責任の所在がはっきりするんですよ。だから、ドッキリが全然うまくいかなかったとしても、仕掛け人が責められて、それがまた面白いシーンになればいいなと思っています。
――なるほど。仕掛け人にもスポットライトが当たりますからね。
蜜谷:他にも、僕は子供が生まれて自分が父親になったり、親が高齢になって親孝行したいなという気持ちが出てきて共感するようになったんですけど、タレントさんによっては、ドッキリで相手を喜ばせたいと考える人もいるんです。特番のときに、阿部祐二・桃子さん親子が考えた「大好きなスターが突然家に来たら!?」という芸能人のお母さんに仕掛けるほっこりしたドッキリというのもあるので、そうしたものも織り交ぜて、土曜8時に家族みんなで見てもらえればと思います。
中川:僕は、番組タイトルで「ドッキリ」と銘打って、レギュラーで毎週放送していくので、今後我々はドッキリのプロ集団になってしまうと思うんです(笑)。その精度は、放送するたびにどんどん上がっていくはずなので、それによってまた見たことのないドッキリが増えていくというところも新しいところだと思いますね。
――そうすると、今は四六時中ドッキリのことを考える生活になってるんですか?
中川:常に「ここで今何が起こったら面白いかな」とか「あの人が言ってたことは、ここだったら実現できるかな」とか考えるようになりましたね。あと最近、ドッキリを考える夢を見るようになりました。「あ!いいの思いついた!」って思った瞬間に起きたりする(笑)
蜜谷:分かる! 俺もあるよ。夢の中でメモってるのに起きたら覚えてない(笑)
――「秒でドッキリ」という企画は、短い時間に何連発も放送されますから、本当にロケの数が多いですよね。
蜜谷:普通、ドッキリを芸能人に仕掛けるとなったら、1つのネタで短くても5~6分、長くて20分くらい放送すると思うんですけど、本当に20秒とかでやりますからね。それによって何が生まれるかというと、大赤字です(笑)。初回は2時間スペシャルで総勢70人くらいに仕掛けていますが、放送尺が短ろうが長かろうが、キャスティング費もロケ隊の費用も一緒ですから、ものすごい効率の悪い番組ですよ(笑)。でも、その分楽しんでもらえるように、面白いところをギュッと恐縮しているので。
中川:先々週なんて、週6日ロケやってましたからね(笑)
――これだけドッキリを仕掛けると、芸能人の方もフジテレビで聞いたことのない番組の仕事が入ると、警戒しだすんじゃないですか?(笑)
蜜谷:そうですね(笑)。そうなったら他局の近くで仕掛けるとか、それを逆手に取ってやるかもしれません。で、それが定着したら、またフジテレビに戻ってくるみたいな(笑)