大河ドラマ『西郷どん』(毎週日曜 NHK総合20:00~20:45 BSプレミアム18:00~18:45/再放送 土曜13:05~)で、鈴木亮平演じる西郷吉之助(隆盛)の妹・琴役を演じた桜庭ななみ。鹿児島出身の桜庭にとって、西郷隆盛は地元の英雄であり、彼を支える琴役を1年間演じ切れたことで、感動もひとしおだったよう。取材日はクランクアップ当日ということで、その表情からは琴役を精一杯全うしたという充実感と達成感がにじみ出ていた。
極貧の下級武士から、勝海舟、坂本龍馬ら盟友との出会いを経て革命家となり、明治維新を成し遂げた西郷吉之助。西郷隆盛と改名し、新政府に復職後は大久保たちと対立していき、やがて西南戦争の指導者となる。琴は西郷家のしっかり者の長女として、市来家に嫁いでからも両家を支えてきた強い女性だ。
娘から母へ。琴役と共に成長した日々
――本日、西郷家のシーンでクランクアップされたそうですが、今の率直な感想を聞かせてください。
私は鹿児島出身なので、『西郷どん』という鹿児島のヒーローの物語で、1年間、琴という1人の女性を演じ切ることができて良かったという清々しい気持ちと、琴と離れてしまう寂しい気持ちの両方を感じています。これまで同じ役を1年以上演じることがなかったので。
――娘から母になり、人間としても成長していく琴を演じるにあたり、気持ちの変化などはありましたか?
琴というよりは私自身の気持ちですが、結婚して市来家に嫁いだ時から、西郷家と離れる期間が長くなっていき、その間、また新しい西郷家ができていくことが寂しかったです。私は西郷家が大好きだから、もっと西郷家でお芝居したいなと思っていました。
吉之助さんが江戸や京都に行く間も同じように感じていて、そこでまた吉之助さんにとっての新しい場所ができていくことに、ちょっと嫉妬を覚えました(笑)。ただ、再び西郷家の撮影に呼ばれると、そこは最初の頃と全く変わってなくて、クランクインした当初の西郷家の温かい雰囲気がそのまま残っていました。
――西郷家の長女・琴の役割をどういうふうに受け止めて演じましたか?
吉之助さんは、自分よりも弱い人を助けるという性格で、家族よりもとにかく困っている人がいると放っておけないところがあったので、最初は妹として兄を叱るというキャラクターでしたが、年を重ねていくうちに、家族全体を引き締める役柄になっていった気がします。
最初の頃は、母の満佐さん(松坂慶子)や祖母のきみさん(水野久美)という西郷家を支える柱の女性たちがいらしたので、おふたりを近くで見ながら、琴として年を重ねた時に、西郷家の女性達の面影を出せたらいいなと思いながら、こ演技を勉強させてもらっていました。
――回を重ねていくごとに、琴がたくましくなっていきました。
どんどん吉之助さんに喝を入れるところが増えていって、琴のキャラクターもより一層立っていったので、演じるのもすごく楽しかったです。常にお兄さんに怒れるのは琴しかいなかったから。
脚本の中園(ミホ)さんともお会いする機会がたまにありましたが、琴がズバッと言う台詞を足してくださったみたいで「こんなに強いキャラクターになるとは思ってなかったです」と言われました(笑)。
座長・鈴木亮平から学んだ芝居への探究心
――先輩俳優として座長として、鈴木亮平さんを1年間見てきていかがでしたか?
西郷さんの人生をすごく素敵に演じられて、私も勉強になりましたし、まるで本物の西郷さんを見れた気持ちになれました。
佇まいや役に対する思いがとても強くて、お芝居はどこまで追求しても終わりがない、ということを教えてもらいました。最初と最後の変化がすごかったです。西郷さんは、兄弟を目の前で亡くしても、国を変えたいという思いがぶれなかった。鈴木さんも西郷さんも妥協しない人だなと思いました。
――ただ、琴は吉之助さんの家族だから、演じていて複雑な思いもあったのでは?
西郷さんに「もっと家族のことを考えてよ」という台詞を言うんですが、それは琴以外に誰も言えない台詞だったかなと。ただ、西郷さんも鈴木さんも心が優しいのがわかっているので、心の中で「ああ、ごめんなさい」と思いながら言いました。家族としてはすごく切なかったです。
また、信吾(錦戸亮)に対して「戦争をやめてよ」と強く言うシーンでは、琴としても辛かったです。男性の強さだけではなく、女性としての覚悟も感じました。自分の兄弟が対立したり、息子や家族を危険なところに送り出して、失ったりするなんて、私だったら耐えられません。でも、琴としては、家族が帰ってくる場所を作ろうと、常に思っていた気がします。
――女優デビューされて10年目に入りましたが、桜庭ななみさんにとって本作は、どういう位置づけの作品になりましたか?
大河ドラマは今回初めてで、こんなに長い間、同じ作品に携わらせてもらったのも初めてだったので、鈴木さんをはじめ、キャストやスタッフのみなさんから知らないことをたくさん学びました。自分にとって本当にステップアップできた作品になったと思います。
本作に携われたことは私にとって幸せなことでしたし、また、大河というステージでお芝居できるように、これからも頑張っていきたいです。
■桜庭ななみ
1992年10月17日、鹿児島出身。『天国のバス』(08)で女優デビュー。2010年『最後の忠臣蔵』(10)で各映画賞新人賞を多数受賞。主な映画出演作は『書道ガールズ!! -わたしたちの甲子園-』(10)、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(15)、『マンハント』(18)。『焼肉ドラゴン』Blue-ray & DVDが12月7日発売。『かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-』が11月30日公開。