赤ちゃんを妊娠すると、自分の身体の変化に敏感になる女性は多いはず。微熱や咳、鼻水などの、軽い風邪の症状でも、病院で先生にきちんと診察してもらいたくなりますよね。妊婦さんが病院で診察を受けた場合の医療費が、2018年の春から高くなっているのをご存知でしょうか。妊婦の医療費はどのくらい上がったのか、なぜ値上がりしたのかなど「妊婦加算」についてご紹介します。

妊婦加算とは?

2018年の春に、医療の公定価格が改定されました。その変更点の一つに、「妊婦加算」というものがあります。これは、妊娠している女性が医療機関を受診した場合、通常の初診料や再診料に加えて、医療費が上乗せされるというものです。

妊婦であるかどうかの確認は、医師の判断によって行われ、必ずしも妊娠反応検査の実施や母子健康手帳の確認は必要ありません。

また、妊婦加算はどの診療科でも算定され、妊娠に直接関連しない傷病について診察を行った場合にも算定されます。

どのくらい値上がりしたの?

妊婦加算で気になるのは、やはり、どのくらい負担がアップしたのかという金額ですね。医療費の自己負担が3割の妊婦の場合、外来などで医療機関を受診した際には、初診料は225円、再診料は114円の負担増となりました。

妊婦加算は、「夜間・早朝等加算」と併せて加算されるものなので、休日や夜間に受診した場合は、平日の通常受診よりもさらに負担が増えることになります。

具体的には、自己負担が3割の妊婦の場合、初診で時間外の妊婦加算は600円、休日は1,095円、深夜は2,085円。同じく再診で時間外の妊婦加算は405円、休日は780円、深夜は1,770円となっています。

通常の診察では、なかなか気がつきにくい負担増額ですが、夜間や休日診療の場合は、無視できない金額ですね。妊婦が医療機関を受診する際には、医療費に上乗せされる加算額を認識しておくと良いでしょう。

なぜ妊婦は医療費が上がったの?

では、なぜ妊娠している場合は、医療費がアップしてしまったのでしょうか。理由の1つには、「医師への特別手当」が挙げられます。

妊婦が病院で検査を受けたり、薬を飲んだりする場合、医師はおなかの赤ちゃんの安全性を考慮する必要があります。そのため、妊婦を診察する際は、普通の患者に比べて、処置や薬について特別な知識が必要となります。つまり、この医師の特別な診断に対して、追加して診察料「医師への特別手当」がかかるというのが「妊婦加算」なのです。

さらに、妊婦の診察について、正しい知識を啓蒙するというのも、妊婦加算が始まった理由の1つ。

妊婦の診察に慣れていない医師は、自分では診察せずに、産婦人科に行くよう勧めることがあります。妊婦加算の導入によって、妊婦の診察についてより理解を深め、産婦人科ではない医師にも、積極的に診察に関わってもらおうという目的があるのです。

妊婦加算で起きたトラブル

2018年春から始まった妊婦加算ですが、残念ながら、実はいくつかトラブルも起きています。

妊娠出産は病気ではないので、通常の検診や出産費用はすべて自己負担となります。国の出産育児一時金制度などはありますが、子どもが生まれる家庭において、これからますますお金がかかることは間違いありません。妊婦加算について知らなかった多くの妊婦は、病院を受診して初めて医療費がアップしたことを知り、戸惑った方も少なくないでしょう。

さらには、「妊婦の負担を増やすことで、少子化を加速させる」「これは妊婦だけに課せられた増税ではないか?」など厳しい意見が出ました。

一方で、医療機関側からも戸惑いの声が上がりました。「患者の妊娠をどのように把握するのか」「医療費アップを避けるために、妊娠を申告しない患者が出るのではないか」「流産してしまった場合の把握が難しい」などの疑問を呈した病院もあります。

妊婦加算は、まだまだ周知徹底が不十分であるため、患者や医療機関側で、困惑する場面が見られるようです。

今回の記事を読んで、初めて「妊婦加算」という言葉を知った方も多いのではないでしょうか。医療費の負担が増えることは、家計にとっては打撃となりますね。しかし、大切な赤ちゃんを妊娠している妊婦さんは、体調がすぐれない時は、自己判断や我慢をせずに、きちんと医療機関を受診することが大切です。

妊婦加算は、妊娠という特別なケースでも、きちんとした診察を行うために導入された制度です。特に、現在妊娠している方や、これから妊娠を考えている方は、頭に入れておくようにしましょう。

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著者プロフィール: 下中 英恵

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター/ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)。第一種証券外務員、内部管理責任者。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は東京において、資産運用や税制等多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っている。