製品パッケージを受け取ったときに「これ中身入ってます?」と思わず問い質してしまいそうになる、超軽量のノートPCが発表されました。と言うと仕掛け人は、いま世界最軽量モバイルPCのラインナップがある富士通かNECが最有力なわけですが、今回は前者。13.3型ワイド液晶搭載ノートPCとして世界最軽量ボディを実現した「LIFEBOOK UH-X/C3」が、富士通クライアントコンピューティングから登場です!

  • なんと747g……じゃなくて。余計なものが乗っていますね

  • 50gの分銅(わざわざ取り寄せました)を取り除くと実測697g。これがカタログスペックで世界最軽量約698gの軽量ボディを実現した「LIFEBOOK UH-X/C3」です!

モバイルノートPCは軽さこそ正義!

2018年11月5日までの世界最軽量13.3型ワイド液晶搭載ノートPCがLIFEBOOK UHシリーズで約748g、11月6日からの世界最軽量が「LIFEBOOK UH-X/C3」で約698g。なんとジャスト50g軽量化を果たし、人跡未踏の600g台に突入したのです。イメージ的にはボクサーが1階級落としたようなものです。どうやってこの難行を成し遂げたのでしょうか?

  • 富士通クライアントコンピューティング「LIFEBOOK UH-X/C3」。店頭予想価格は25万円弱

軽量化の秘密は大きくふたつあります。まずひとつ目は基板面積の縮小。2018年モデルの基板は、2017年モデルに比べて面積が15%縮小されています。この削られた基板のぶんだけ軽量化を果たしているわけです。

もうひとつはボディ材質の変更。2017年モデルは天面にのみマグネシウムリチウム合金素材が採用されていましたが、2018年モデルではキーボード面、底面にも同素材を採用しました。このほか、薄型化した最新世代のIGZO液晶を採用したり、キーボード下の金属カバーを肉抜きしたりしつつ、再びネジ1本にいたるまで0.01g単位で調整することで、ジャスト50gの軽量化を実現したわけです。

  • これは2018年版のスケルトンモデル。ファン実装部の切り欠きを広く、基板全体の天地幅を狭くすることで、基板面積の15%縮小が達成されました

極端に軽量化されているとボディが華奢なのではと心配になりますが、むしろ堅牢性はアップしているとのこと。まず天板側面の肉厚を増やして剛性をアップ。さらに開閉時に指がかかる天面上部には金属カバーを入れて補強が図られています。

  • 左が2017年モデル、右が2018年モデルの側面断面図。剛性向上のため側面の肉厚が25%増やされています

  • 天面上部中央に入っているのが補強用の金属カバーです

パフォーマンスは順当に進化!

今回の借用機はベンチマーク不可なので計測していませんが、UH-X/C3はパフォーマンスも順当に進化しているとのこと。CPUはKaby Lake Rの「Core i7-8550U」からWhiskey Lakeの「Core i7-8565U」にグレードアップ。ターボブースト時の最大周波数が4.00GHzから4.60GHzに引き上がるので、限界域でのパフォーマンスアップが期待できます。

  • Whiskey Lakeの「Core i7-8565U」を採用。4コア8スレッド、ベースクロック1.80GHzなどのスペックは「Core i7-8550U」と変わりませんが、ターボブースト時の最大周波数が4.00GHzから4.60GHzに向上します。また最大メモリー帯域幅が34.1GB/sから37.5GB/sに広げられているほか、PCI Expressレーンの最大数も12本から16本に増やされています

USB Type-Cを1つ増やして使い勝手向上

使い勝手にかかわる進化でもうひとつ大きなポイントがUSB 3.1 Gen2 Type-C端子が追加されたこと。2017年モデルはUSB 3.1 Gen1 Type-Cがひとつのみでしたが、新しいUH-X/C3ではType-C端子がふたつに増え、Gen2対応端子ではGen1端子の2倍の最大10Gbpsでデータ通信が可能となりました。USB 3.1 Gen2 Type-C対応のポータブルSSDと組み合わせれば、より高速にデータをやり取りできるようになります。

  • 左側面には、電源端子、USB 3.1 Gen2 Type-C端子、USB 3.1 Gen1 Type-C端子、HDMI端子、USB 3.0 Type-A端子、ヘッドフォン端子を用意。余談ですが、このUSB Type-Cポート1基の増加でさぞ重さも増えるんだろう……と思いきや、意外や意外、ポート部分のみでは1gしか増加しないそうです

  • 右側面には、SDカードスロット、USB 3.0 Type-A端子、LANポート(引き出し式)、盗難防止用ロック取り付け穴を用意

  • 軽量化を追求するにあたって不利なフルサイズのSDメモリーカードスロットを引き続き搭載。デジタルカメラと手軽にデータをやり取りできます

  • こちらも軽量化には不利なはずの引き出し式有線LAN端子。有線LANアダプターにするだけで軽量化を図れるはずですが、安易な道を選ばないのが実直な富士通らしい物作りです

BOXスピーカーで音質アップ、顔認証カメラも採用

薄型・軽量ノートPCでは早々に割り切られがちなサウンド面も進化。2018年モデルではBOXスピーカーを採用することで音質を向上。実際にYouTubeのミュージックビデオをいくつか視聴してみましたが、最大ボリュームでも音が割れたり、ビビリ音が発生することはなく、ノートPCとしては余裕のあるサウンドです。

  • 2017年モデルの内蔵スピーカー

  • 2018年モデルにはBOXスピーカーが採用されています

また、セキュリティ性も進化。従来シリーズに採用されていたスライド式の指紋認証センサーではなく、Windows Hello対応のIRカメラ(赤外線カメラ)をディスプレイ上部に配置することで、立体的な顔の形状を認識して、OSにログイン可能となりました。スリープ状態のUH-X/C3のディスプレイを開けば、ログイン画面が表示されるとともに顔認証がすぐ始まります。

多少顔の位置を調整する必要があり、また直射日光下では赤外線の影響を受けて正常に動作しないことがありますが、ログイン方法としては指紋認証センサーよりお手軽です。

  • 有効画素数約207万画素のWebカメラの横にWindows Hello対応のIRカメラ(赤外線カメラ)が内蔵されています

世界最軽量にこだわるべきか、それとも動作時間を優先するべきか?

世界最軽量の称号が非常に魅力的なUH-X/C3ですが、UHシリーズのほかのラインナップを見ると悩ましいです。と言うのもUHシリーズにはUH90/C3という兄弟モデルが用意されており、UH-X/C3の2倍の4セルバッテリを搭載しています。仕様上では、UH90/C3のバッテリ駆動時間は約11.5時間。そしてUH90/C3はその倍以上の約24時間となっています(いずれもJEITA 2.0測定値)。

LIFEBOOK UHシリーズのラインナップ
型番 OS CPU メモリ SSD 重量 バッテリ スペック上の駆動時間 カラー 実売価格
UH-X/C3 Windows 10 Pro Core i7 8GB 512GB 約698g 2セル 約11.5時間 ピクトブラック 25万円弱
UH90/C3 Windows 10 Home 256GB 約898g 4セル 約24時間 21万円弱
UH75/C3 Core i5 4GB 約747~758g 2セル 約11.5時間 アーバンホワイト
ガーネットレッド
19万円強
  • UH-X/C3に、計200g(100g、50g、20g×2、10g)の分銅を乗せてUH90/C3と同じ約898gにしてみました……うーん余裕ですねえ。十分軽いです

しかも、UH90/C3のSSDはUH-X/C3の半分の256GBとなりますが、実売価格は4万円も安いんです。色も同じピクトブラックなので、ぱっと見で違いはわかりませんし。

世界最軽量と言う称号は魅力的です。そしてUH-X/C3のバッテリ駆動時間で十分だという方も多いことでしょう。しかしバッテリを使い切ってしまえば、世界最軽量のボディですら疎ましく感じるのが身勝手な人間の性です。

重度のパソコン依存症の筆者は4セルバッテリを搭載するUH90/C3に飛びついちゃいますが、ネットを見たりメモを取ったりするような使い方なら、UH-X/C3も長時間の持ち歩きに十分使えるでしょう。皆様はご自身の用途をイメージしたうえで最適な一台をお選びください。

  • UH75/C3に用意されているガーネットレッドも魅力的。悩みはほかのラインナップにも広がっていきます